軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1299話 朝イチの謝罪と皆でお出かけ

ライトが無事サイサクス世界に帰還した翌日。

ライトとレオニス、ラウルは朝イチでユグドラツィのもとに向かっていた。

この後ライトとレオニスは二人で地底世界に行く予定だが、その前にラウルに「二人とも、ツィちゃんにもものすごく心配をかけたからな。出かける前に、先に三人で詫びの挨拶とライトの帰還を報告しに行くぞ」と言われたのだ。

ライトが亀裂の向こう側に渡って心配かけたのは本当のことだし、レオニスもカタポレンの森の警邏と称して三日以上も帰宅しなかったのだから、ラウルの言い分に反論の余地は全くない。

ラウルは静かに微笑み、その有無を言わさぬ圧に二人してしおらしく「はい……」と答える他なかった。

そうしてユグドラツィのもとに向かって飛んでいくライト達。

カタポレンの家からものの数分で、ユグドラツィの前に到着した。

ライトが開口一番、レオニスもライトに続き速攻でユグドラツィに向かって謝罪した。

「ツィちゃん、おはようございます!そして、たくさん心配かけてごめんなさい!」

「ツィちゃん、おはよう!俺もツィちゃんにはすごく心配かけてしまった、本当に申し訳ない!」

『………………』

ユグドラツィの前に降り立って早々に、ガバッ!と深く頭を下げて神樹に謝る人外ブラザーズ。

顔の表情こそ見えないが、その声音と態度は心から謝っていることが分かる。

『……二人とも、頭を上げてください』

「「……はい……」」

ユグドラツィのいつにも増して冷静沈着な声に、ライトとレオニスはおずおずと頭を上げて上を見遣る。

ユグドラツィには人間のような顔と呼べる部分がないので、今どのような感情を抱いているか、傍目からでは全く分からない。

だがしかし、こういう時に聞こえる枝葉のざわめきは、何故か静かな怒りに満ちているように聞こえてくるから不思議なものだ。

そうしてしばしの沈黙の後、ユグドラツィの声が再び聞こえてきた。

『本当に……二人とも、よくぞ無事に帰ってきてくれました』

「「ツィちゃん……!」」

『ライト、貴方の勇敢さにより、多くの人々が救われたことでしょう。貴方は幼くても立派な勇者です』

「え"ッ、そそそそんな、ぼくは勇者になる気は……」

まず真っ先にライトのことを勇者と讃えるユグドラツィ。

彼女もレオニスやラウルの様々な活動を通して、ラグナロッツァで起きた重大事件のことをずっと見守り続けてきた。

人里で起きた危機にユグドラツィも心を痛めていたし、それが誰一人犠牲になることなく無事に解決できたことを本当に喜んでいた。

しかし、ライトにとっては勇者扱いされても非常に困る。故にライトは慌てて否定しにかかる。

そんなライトの慌てぶりを他所に、ユグドラツィは今度はレオニスにも声をかけた。

『レオニス、貴方の苦しみや悲しみも私にはよく分かります。私とて、もし他の兄姉や弟の身が危うくなれば―――とても冷静ではいられないでしょう。先日の天空島襲撃事件の時だって、長姉エル姉様にもしものことがあったらと思うと……』

「ツィちゃん……」

ライトがいなくなった後のレオニスの行動や心情にも理解を示すユグドラツィ。

彼女にも大事な家族がいて、その家族達がもし危険な目に遭ったらレオニスと同じように嘆き悲しむことだろう。

『ですが……貴方達は私の大事な友。あまり無理をしないでください……貴方達にもしものことがあったら……今度こそ私は、神樹という己自身を憎み呪う他なくなるでしょう』

「「ツィちゃん……」」

『そして……貴方達のことを大切に思っているのは、私だけではありません。少なくとも神樹族は全員、貴方達を生涯忘れ得ぬ友と思っているのです』

「「………………」」

震える声で訴えるユグドラツィに、ライトもレオニスも申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

血の繋がった家族でなくても、こんなに心配してくれる者達がいる。それは天涯孤独な二人にとって望外の喜びであり、同時にそうした者達を悲しませてしまったことへの罪悪感が募る。

そんな中、まずレオニスがユグドラツィに声をかけた。

「ツィちゃん、本当にすまなかった。ただ、俺は冒険者という稼業を続けている以上、これからもこうして度々心配をかけると思うが……それでも必ず生きて皆のもとに帰ってくるから、ずっと見守り続けてくれると嬉しい」

「ぼくも将来、レオ兄ちゃんやぼくの父さんのような立派な冒険者になるのが夢なんです!だから、レオ兄ちゃんが言うように、危険な旅に出ることもあるかもしれないけど……絶対にぼくは、ヨボヨボのおじいちゃんになるまで長生きします!ツィちゃんも、ぼくがおじいちゃんになるまで見守っててください!」

『二人とも……あと百年くらいは長生きして、天寿を全うしてくださいね? 約束ですよ?』

「はい!」「おう」

レオニスに続き、ライトも絶対に長生きする!とユグドラツィに誓いを立てる。

そしてユグドラツィの方も、短命な人族相手に今から百年は生きろ!とは何とも欲張りなお願いだ。まだ九歳のライトはともかく、レオニスには無理難題である。

しかし、それくらい長生きしてほしい、と願うユグドラツィの気持ちも分かる。

人族と神樹では生きる時間の長さが全然違うが、それでも一日でも長くともにいてほしい。そう願うユグドラツィの健気さを、ライト達も痛い程感じ取っていた。

「……さて、では俺達はそろそろ地底世界に出かけてくるとするか」

『ランガ兄様のところに行くのですね。ランガ兄様に、ツィがよろしく言っていたとお伝えください』

「ああ、必ずランガに伝えよう」

ユグドラツィの伝言を預かったレオニスがふわり、と宙に浮き、ライトもそれに続き浮いた。

そしてライトがラウルとユグドラツィに向かってお出かけの挨拶をする。

ラウルはこのまましばしユグドラツィのもとに留まるつもりのようだ。

「じゃ、いってきます!」

『どうぞ気をつけていってらっしゃい』

「いってらー」

いってきますの挨拶の後、目覚めの湖のある方向にギュン!の勢いよく飛んでいくライトとレオニス。

その後ろ姿を、ラウルとユグドラツィは空を見上げつつ見送っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ユグドラツィのところから目覚めの湖に移動したライトとレオニス。

二人は湖中央の小島に降り立ち、ライトが湖に向かって呼びかけた。

「ウィカ、いるー?」

『はーい☆』

ライトの呼びかけに、ウィカが応じてすぐに湖から出てきた。

湖面の上を、トトト……と優雅に歩き、ライトの胸にピョン☆と飛び込むウィカ。

ライトはそんな愛らしいウィカを抱っこしつつ、早速本題に入る。

「ウィカ、今日はぼく達、地底世界に行きたいんだ。地底の池に連れてってくれる?」

『もちろんいいよー♪』

ライトの願いを快諾するウィカ。

するとそこに、湖から水の女王がピョコン!と飛び出してきた。

『ウィカちー、地底世界に行くの? いいなー、私も連れてって!』

「え? 水の女王様も地底世界に行きたいんですか?」

『うん!だって、地底世界には地のお姉ちゃんがいるんでしょ? 私も地のお姉ちゃんに会いたいの!』

「ぁー、そうですねぇ……」

突然現れた水の女王、その願いにライトが頷きながら納得している。

属性の女王の中でも、水の女王は比較的他の属性の姉妹達と会える方だ。

さすがに火の姉妹と会うのは少々厳しいし、五行で言えば『土剋水』で地の女王と水の女王は相性が悪いはずだが、水の女王は無限に水を生み出せるので、土=地の女王に全部水を吸い取られるというような危険性はまずない。

というか、雷の女王と会って感電の抱擁まで経験した彼女にとって、地の女王もまた決して怖い者ではない。

属性の姉妹として純粋に会いたい、ただそれだけなのだ。

そんな水の女王の気持ちを察してか、ライトの横にいたレオニスが軽い口調で賛同する。

「水の女王を連れていってやってもいいんじゃね? ただし、地の女王との相性のこともあるし、アクアのお許しが出たらってことで」

『アクア様のお許しね!アクア様は、湖底の貝を食べておられる最中なの。今すぐ聞いてくるわね!』

レオニスの口添えに、水の女王がパァッ!と花咲く笑顔で早速水の中に溶けていった。

どうやら水の中でお食事中のアクアに、外へのお出かけの可否を問いにいったようだ。

そしてしばし待つこと数十秒。水の女王が再びライト達の前に現れた。

『アクア様が、お食事が終わったらいっしょにお出かけしてくださるって!だから、もう少し待っててくれる?』

「分かりました!」

「水の女王、そんなに急がなくていいからゆっくり飯を食うように、アクアに言っといてやってくれ。慌てて飯を食わせるのも可哀想だしな」

『分かったわ!』

水の女王のお出かけは、アクアが同行することを条件にして許可が得られたらしい。

ご飯を急がせるのも可哀想だから、というレオニスの言葉に、水の女王も頷きながら再び水の中に溶けた。

それから約十分後に、アクアと水の女王が小島に現れた。

『ライト君、レオニス君、お待たせー』

「アクア、こんにちは!今日は地底世界に行くんだけど、いっしょについてきてくれるんだね、ありがとう!」

『どういたしまして。僕としても、地の女王や地底神殿の守護神の白虎にいつか会いたいと思っていたからね。渡りに船ってやつさ』

アクアの同行に礼を言うライトに、アクアもにこやかに応える。

実際水の女王だけでなく、アクアもまた他の神殿守護神に会いたいと思っている。

水の女王が地の女王に会いたいと出かけるならば、自分も神殿守護神仲間である白虎のシロに会いたいとアクアが思うのは、当然のことであった。

地底世界に行きたい面々が揃ったところで、レオニスが皆に向かって声をかける。

「じゃ、皆で地底の池に出かけるか。ウィカ、案内よろしくな」

『任せてー☆ アクア君、ボクについてきてね!』

『うん、水の女王とライト君とレオニス君は、僕の背中に乗ってねー』

「『はーい』」「おう」

ウィカは地底の池の位置を覚えているため、レオニスがウィカに水先案内を頼む。

そしてアクアはウィカ以外の者、ライトやレオニス、水の女王に自分の背中に乗るように指示を出す。

ライト達がアクアの背中に次々と乗り込み、準備万端整った。

『皆、準備できたね、行ッくよー!』

「「『『おーーーッ!』』」」

地底の池への案内を頼まれたウィカが、張り切りながら出発の声を上げる。

ウィカの元気なかけ声にライト達が全員で応え、一行は目覚めの湖の中にとぷん……と消えていった。