作品タイトル不明
第128話 飛び入り参加宣言
クレアとの詳細な打ち合わせを済ませたライトは、カタポレンの森の家に戻る。
そこから間を置かずに、すぐにラグナロッツァの屋敷に移動してラウル特製晩御飯をいつものようにワゴンごと受け取る。そして再びカタポレンの森の家に帰宅した。
打ち合わせした話の内容等を伝えよう!とライトがレオニスの書斎に入るも、珍しいことにレオニスがいない。
ここ最近寝食以外はずっと机にかじりついていたのに、レオ兄ってばどこいったんだろ?と疑問に思っていると、程なくしてレオニスが部屋に戻ってきた。
「お、ライト、おかえりー」
「あっ、レオ兄ちゃん、ただいまー」
「クレアとの打ち合わせは済んだか?」
「うん、ばっちり済ませてきたよ!」
「そっか、お疲れさん」
「ン?何ナニ、ライトきゅん、クレアどんと会ってたの?」
「うひゃぁッ」
レオニスの背後から、ピョイ、とフェネセンが顔を出した。
そこにフェネセンがいるとは露ほども思っていなかったライト、思わず声を上げてびっくりしてしまった。
「フェネぴょん、いたの!?んもー、脅かさないでよー」
「おおぅ、ごめんゴメンゴ、脅かすつもりはなかったんだけど……」
確かにフェネセン本人には脅かす意図は全くなかったようで、ただ単に小柄なフェネセンがレオニスの背後にいて見えなかっただけのようだ。
「二人してどこか行ってたの?」
「ん?ああ、この家にある魔石や魔導具類のある倉庫にちょっと行ってた」
「相変わらずレオぽんとこにはたくさんの魔石や魔導具があって、羨ま楽しいねぇ!吾輩、あれら見てるだけでも超絶面白楽しーぃ♪」
何とも大魔導師フェネセンらしい感想?である。
だが、フェネセン節はこの程度では止まらない。
「ンで?ライトきゅん、クレアどんとこで何を打ち合わせしてきたのん?」
目をキラーン!と輝かせ、口元に笑みを浮かべてライトに迫るフェネセンと、それとは対象的にギクッ!とした表情を浮かべるライト。
まさかここで、フェネぴょんのために御守作りたいから素材採取のためにお出かけするんです!なんて言えないライト。
空前絶後の完璧サプラーイズ!とまでは言わないが、それでもやはり御守の現物を渡すまでは内緒で進めておいて、御守を渡す時にびっくりさせたかったからだ。
フェネセンにはいつもびっくりさせられる側のライト、せめて一矢報いたいところでもある。
「ん、あー、えっとね……今度の土曜日に、氷の洞窟の近くに行くための話し合いをしてきたんだ」
「氷の洞窟?なーんでまたそんなところに?」
「氷の洞窟周辺にね、ぼくの友達母子が住んでいるんだ。だから、友達に会いに行きたいんだけど……さすがにぼく一人で行くのは無理なようでさ」
「うんうん、そりゃライトきゅん一人で氷の洞窟行くのはその周辺と言えど厳ちいよねぇ」
「でもレオ兄ちゃんは今アイテムバッグ作りの大詰めで、どうしても手が離せないでしょ?だから、レオ兄ちゃんの代わりにクレアさんに護衛を依頼することになったの」
ライトは『御守作りに必要な素材の確保』という本来の目的は明かさずに、概要だけをフェネセンに話す。
真の目的は明かさずとも『友達のアルに会いに行く』というのも本当のことなので、嘘をついている訳ではないのがミソだ。
「そうなんだー。ライトきゅんてば水臭いなぁ、護衛が要るなら吾輩に言ってくれれば良かったのにぃー」
「えー、でもフェネぴょんだって魔導具作りとかレオ兄ちゃんとの共同研究とか、ものすごーく忙しいでしょ?」
「むーん、そりゃまぁそうなんだけどね?」
フェネセンが口を尖らせながら、ぷくーと頬を膨らませて微妙に拗ねている。
と思ったら、再び目をキラーン!と輝かせた。
「ところで、ライトきゅんが会いに行きたい友達って、誰?氷の洞窟周辺に住んでるってくらいだから、普通の人間とかではないんでしょ?」
「あ、うん、銀碧狼なんだ」
「おお、銀碧狼とな!あれはイイよねぇ、もふもふは究極の癒やしにして大正義ですしおすし」
目を閉じてうっとりしながら頬に手を当て、高速クネクネするフェネセン。
この奇っ怪な行動は、もはやフェネセン定番の喜びの舞的な歓喜の表現である。
「……よし!決めた!吾輩も土曜日に、ライトきゅんの護衛する!」
「「えッ!?」」
魔杖を高く掲げ、フェネセンは鼻息荒く決意表明する。
その即決ぶりに、ライトとレオニスは慌てる他ない。
「ちょちょ、ちょっと、フェネぴょん、魔導具作りの方はいいの?」
「そうだぞフェネセン、お前の作る連絡用魔導具が完成しなきゃ、俺達から連絡することができんままだろうが」
「えー、いいじゃーん。そこは吾輩天才大魔導師だから、やると言ったことは必ずやるし納期もきっちり守るよ?」
「だが……もう日数もないし……」
「それにさぁ……」
言い募るレオニス達に、フェネセンが目を伏せながら呟く。
「よくよく考えたら、吾輩ここに来てまだ一度もクレアどんに会ってないんだもん……」
「お出かけする前に、クレアどんにも会っておきたい……ダメ?」
上目遣いでレオニスを見つめるフェネセン。
その反則的なまでに愛らしい仕草に、思いっきり胸を射抜かれるのはレオニス……ではなく、その横にいたライト。
仰け反るライトの、クァッ!という小さな呻き声とともに、ギュイーーーン!という効果音がどこからともなく聞こえてきた、気がする。
その横でレオニスは、何事も動じることなく平然とした顔で突っ立っている。
フェネセンの視線はレオニスに向けられていたというのに、肝心のレオニスには効かず、その横にいたライトに流れ弾が当たった格好である。
「ハァ、ハァ……何かぼく、今、一瞬だけ心臓が、止まりかけた、気が、する……」
「お、おい、ライト、どうした、大丈夫か?」
「ンー、何でそこでライトきゅんが仰け反るん?」
意図せず流れ弾を食らってしまったライトは、息も絶え絶えである。
「ま、それはともかくだね。吾輩、土曜日はクレアどんといっしょにライトきゅんの護衛に行くからね!これはもう決定事項なの!」
「お、おう……」
「それに吾輩、ここ最近ずーっと魔導具作りや研究詰めだったんだから!たまには気分転換でお出かけするの!おぉーでぇーかぁーけぇぇぇぇ!ッキエエェェィ!」
「ちょ、フェネぴょん、分かったから落ち着いて……」
フェネセンは突如としてぴょんぴょん飛び跳ねながら、地団駄を踏むかの如く騒ぐ。
確かに本人が言っている通り、フェネセンはここ最近ずっと働き詰めだった。そのストレスも、大なり小なり溜まっているのかもしれない。
「ンじゃ、ライトきゅん、クレアどんにもそう伝えといてねッ!」
「そうと決まれば吾輩、氷の洞窟に行く支度してくるねーぃ!あすこら辺、もうすんげー寒いはずだしー」
「あッ、そしたらついでにライトきゅんも吾輩といっしょに用意しようよ!」
「ライトきゅん、氷の洞窟に行けるような装備ないでしょ?あすこはもう秋口からキンッキンに寒いからね、今ここでしているような服装のままだとマジ 死(チ) ぬよ?」
「さぁ、いざ出陣ーーーッ!……あ、レオぽん、晩御飯ちょーっと遅くなるかもだけど、早めに帰ってくるからよろぴくねッ♪」
「……お、おう、気をつけていってこいよ……」
フェネセンはものすごーく機嫌良さそうに、フフフフーン♪と鼻歌を歌いながらライトを引き摺るように連れて、意気揚々と部屋を出ていった。
突風のようにライトを連れ去るフェネセンに、レオニスはただただ呆気に取られつつ小声で見送るしかなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ライトがフェネセンに引き摺られるようにして連れて行かれた先は、服飾関連でお馴染みのアイギスである。
もうだいぶ日も暮れてるし、終業時間間際じゃないの?とライトは思うが、もちろんフェネセンはそんなことお構いなしである。
フェネセンはカタポレンの家から出た時と変わらず、意気揚々ご機嫌モードでアイギスの扉を開く。
「やっほーい!メイにゃん、いるー?」
「いらっしゃいませー……って、フェネセンじゃない。……あら?ライト君も連れてきてるの?」
「うん!今日は吾輩とライト君に、冬用の暖かい装備が欲しいの!」
「冬用の暖かい装備?普通の冬物の服じゃなくて、装備?」
「そ、吾輩ライトきゅんの護衛で氷の洞窟近くに行くことになったのだ!」
フェネセンはワクテカ顔で、今から楽しみでしょうがない!といった様子だ。
「あー、氷の洞窟ね……確かにそれは、普通の冬服では追いつかないわねぇ……」
「でしょでしょー?こっちはまだ秋の陽気だけど、あっちはもうかなり寒いはずだからねー。でも、アイギスなら氷の洞窟行きにも適応する装備があるかと思ってさ!」
「んー、そうねぇ……氷の洞窟に行くのはいつ?日にちは決まってるの?」
「えーっとねぇ、今度の土曜日だったよね、ライトきゅん?」
「あっ、はい、そうです。今度の土曜日に行く予定です」
メイに聞かれた予定日を、フェネセンから唐突にパスを受けて慌ててライトが肯定の答えを返す。
「今日は水曜日よね、ちょっと姉さん達と相談してくるから待っててね」
「「はぁーい」」
メイはそう言うと、店の奥の方に消えていった。