軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1275話 迫りくる期日

ルティエンス商会でガンメタルソードを手に入れた翌日。

ライトは朝のルーティンワーク後、いつものようにラウルの畑の野菜や林檎の収穫をこなしていた。

ラーデも変わらず収穫の手伝いをしてくれたが、収穫を一通り終えた直後にラーデがライトに話しかけた。

『ライト……其方、ここ最近ずっと疲れているだろう』

「ッ!!」

『其方が一人で何をしているか、そこまで深く聞くつもりはないが……あまり無理はするなよ』

「うん、ありがとう……ラーデにまで心配かけちゃってごめんね」

ラーデの心配に、ライトがハッ!とした顔になる。

ラーデとはつい最近同居し始めたばかりだが、毎日顔を合わせていれば自然と互いのことも分かってくる。

そしてラーデもラグナロッツァの異変の話を聞いているので、そのことできっとライトも無理をしているに違いない、と察したのだ。

ラーデが自分のことを心配してくれるなんて、とてもありがたいな……とライトは内心思う。

だが、ラグナロッツァでのビースリーが開始されるまで、残された猶予はあと一日しかない。

ここで迷い立ち止まったり臆病風に吹かれる訳にはいかない。

ライトは努めて笑顔を作りながら、心配してくれるラーデに答えを返す。

「でも、レオ兄ちゃんやラウル、マキシ君だってずっと危険な場所で頑張ってるんだ。ぼくだって頑張らなきゃだし、今の自分にできることは何でもしないとね!」

『そうか……今の我は本当に非力で、何の力にもなれぬのがもどかしいが……もし僅かながらでも力になれることあらば、何なりと申せよ。我も其方らに日頃から世話になってる故、いつでも助力しよう』

「ありがとうね!ラーデにそう言ってもらえるだけで心強いよ!」

相変わらず50cm弱のミニドラゴンにしか見えないラーデを、ライトがギュッ!と抱きしめる。

それは一見したら、大きなドラゴンのぬいぐるみを抱きしめているかのような平和な光景。

だがこの仮初めの平和も、もうすぐ消え去ってしまうことをライトは知っていた。

「……ぼく、ちょっと出かけてくるね。夕方には帰ってくるから、ラーデはここでのんびりしててね!」

『承知した。我はここで其方の帰りを待っている故に、気をつけてな』

「うん!いってきまーす!」

ライトは抱きしめていたラーデの身体からそっと離れ、今から出かける旨を伝える。

そしてライトは出かける支度をすべく、ラーデと分かれてカタポレンの家に入っていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

支度を整えたライトは、カタポレンの家からマッピングスキルで北レンドルー地方に移動した。

実際の魔物狩りで、ガンメタルソードの切れ味や使い勝手を確かめるためだ。

北レンドルー地方では、グランドポーションの材料としてディソレトホークを狩っているライト。

今日もところどころに木が生い茂る荒野の中を、ライトは適当にぶらつく。

そうしていると、木の陰や岩陰からライト目がけて魔物が襲いかかってくるからだ。

ディソレトホーク以外にも、ロックワームやストーンツリーなどの北レンドルー地方固有の魔物達が次々と涌いてきてはライトに襲いかかる。

もちろんそれらは今のライトの敵ではない。

前日ルティエンス商会で入手したばかりのガンメタルソード片手に、ライトは次々と雑魚魔物達を屠り続けていく。

そうしてしばらく魔物狩りをしていたライト。

一旦休憩兼魔物の死骸回収のために、アイテムリュックから魔物除けの呪符を取り出して使用した。

これで呪符使用後三十分間は、魔物の襲撃に邪魔されずにゆっくりと動ける。

ライトはガンメタルソードの刃を柔らかいタオルで拭いてから、きちんと鞘に仕舞ってアイテムリュックとともに地面に置く。

そして一人でせっせと魔物の死骸を運び掻き集めては、アイテムリュックにどんどん仕舞い込んでいった。

その作業時間約十分、残り二十分の間に濃縮エクスポーションを飲みながら休憩するライト。

休憩ついでにマイページを開いて、各種データを眺めながら独りごちる。

「はぁー、やっぱガンメタの切れ味すげーわ!カイザースラッシュ一つで、一気に三体の魔物を仕留められるとか半端ねぇな!これ、ここの魔物の密度が少ないから三体だけだったけど、ビースリーの前座の雑魚魔物なら一回のカイザースラッシュで十体以上狩れるかも!」

「しかも、もともとの切れ味が鋭いから、攻撃スキルを使わずに普通に斬りつけるだけでもイケるし……これって何気にすごくね?」

「でも、攻撃の威力はただ振り回すだけよりも、攻撃スキルを使った方が高いんだよなぁ……斬撃で複数を一気に仕留めたい時には、なおのこと攻撃スキルを使った方が間違いないし」

「うーーーん……ここら辺は、戦況や自分のHPMP、APの残り具合なんかで都度切り替えて動くべきだろうな」

ライトはマイページを眺めつつ、初めて使ったガンメタルソードの威力に感嘆する。

ゴツい見た目に反して、重さは箸かペーパーナイフかと思うくらいに軽いガンメタルソード。

こんなにも軽いと、敵に対してもあまりダメージを与えられないのでは?と思いきや。そんなことは全くなく、軽く一振りするだけでこの辺りの雑魚魔物をどんどん仕留めることができた。

しかも重量が軽い分、どれだけ振り回しても疲れを感じることがほとんどない。

これは、特にビースリーイベントのような大量の魔物を相手にしなければならない場合には非常に有利だ。

そして、攻撃スキルの使用の有無で威力が若干左右されることも見逃せない。

ちなみにライトが独り言で呟いていた『カイザースラッシュ』とは、戦士職の光系三次職【近衛騎士】の★8で習得できるスキルだ。

無属性の物理攻撃スキルで、消費HP40、同SP1、その威力は通常攻撃の140%となっている。

手裏剣のように必中スキルではないので、極稀に魔物に躱されることもあるが、横に大きく薙ぎ払えばどこかしらにヒットするので問題ない。

ただし、横一閃に薙ぎ払えるのは拓けた荒野や砂漠などに適していて、間違っても森林の中で使ってはいけない。

もし森林でそんなことをすれば、魔物以外の樹木まで斬り倒してしまう。

このことをライトが知るのは、もう少し後のこと。

この後北レンドルー地方の次に行った転職神殿東のマッピングポイント、つまり咆哮樹狩りで判明する。

また、BCOの職業システムで習得できる攻撃スキルは、物理攻撃だけでなく魔法攻撃スキルもある。

しかも物理魔法両方ともに、無属性以外の属性が付与された攻撃も可能だ。

例えば【近衛騎士】の★4で習得できる攻撃スキル『グランドブレイカー』は地属性魔法攻撃で、消費MP30、同AP1。

大地を砕く勢いを持つこのスキル攻撃力は、通常攻撃の120%となっている。

これらの攻撃が物理系か魔法系かの見分け方は、消費するステータスによって分かる。

HPを消費するのが物理系、MPを消費するのが魔法系だ。

ライトの場合、前世ではゴリゴリの腕力至上主義で物理系脳筋族だったのだが、今世は魔力に満ちたカタポレンの森で育ったためHPよりもMPの方が断トツで多い。

なので、攻撃スキルはなるべく魔法系のものを使用する方が良いだろう。

こうしてガンメタルソードの切れ味や使い勝手を、己の目と身体で直に体感したライト。

やっぱり買って良かった!これなら万が一コヨルシャウキと直接ビースリー対決することになったとしても、それなりに戦えるはずだ、と内心で思う。

もともとガンメタルソードは、BCOにおいてゲーム内通貨では購入できない課金武器であった。

このサイサクス世界でも、その価格は2000CP。Gに換算して200億Gというとんでもないお値段だけあって、その威力と使いやすさは抜群という言葉すら生ぬるい。

そう、課金武器という位置づけは伊達ではないのだ。

ガンメタルソードの使い勝手の良さに満足したライトは、休憩終了後もしばらく北レンドルー地方での魔物狩りを継続していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ライトがガンメタルソードを手に入れてから二日目。

この日もライトは朝から夕方になるまで、ずっと各地で魔物狩りをし続けた。

【神聖騎士】の習熟度上げはもはや諦めたが、それとは別に入手したばかりの武器を己の手と身体に馴染ませるための実戦が必要だ、とライトは考えたのだ。

その甲斐あって、ガンメタルソードを入手してからまだたったの二日しか経っていないというのに、それはまるで何年も連れ添った相棒のようにライトの手にしっくりと馴染んでいく。

ライトはまだ剣術一つ習っていないが、雑魚魔物をバッサバッサと斬り伏せていく様は、さながら歴戦の強者のようだ。

そうして空が茜色に染まる頃、ライトはマッピングスキルでカタポレンの家に戻り、着替えてから風呂に入り汗を流す。

この日は謎の亀裂出現から十日目。コヨルシャウキが待つと言った期限の最終日である。

風呂から上がり、さっぱりとしたライト。

風魔法を用いてセルフドライヤーで髪を乾かしてから、外にいるラーデのもとに行き声をかけた。

「ラーデ、ちょっといい?」

『ン? 何ぞ?』

「今日は皆でこっちで晩御飯を食べようね。レオ兄ちゃんは帰ってこれるかどうか分かんないけど、ラウルやマキシ君はきっと来てくれると思うから」

『……そうだな。久しぶりに賑やかな晩餐もいいな』

「もちろんお風呂も皆でいっしょに入ろうね!ラーデの背中はぼくが洗ってあげるから!」

『うむ、よろしく頼む』

地面に伏せて魔力吸収に努めていたラーデ。ライトの提案に、微笑みながら頷く。

ラーデがこのカタポレンの家に来たばかりの頃は、入浴という習慣にびっくりして暴れていたものだった。

そんなラーデも、ここ最近はお風呂の気持ち良さにすっかり目覚めて、ライト達との入浴は楽しみの一つとなっている。

そしてラーデの快諾を得られたライトは、嬉しそうな顔でラーデを抱っこした。

「そしたらラーデは、家の中で待っててくれる? ぼくは向こうに行って、ラウルとマキシ君を呼んでくるから」

『承知した』

腕の中にラーデを抱えながら、カタポレンの家に入るライト。

ラーデを台所のテーブルの席に座らせてから、自室に戻りラグナロッツァの屋敷に移動していった。