作品タイトル不明
第1254話 アルフォンソの猛抗議と願望
金鷲獅子アウルムの 塒(ねぐら) を後にしたレオニス達は、臨時で設置した転移門を作った場所に戻った。
ここには目安となるようなものは一切ないが、周辺に比べて一際高い位置にある高台に設置したので、それを頼りに戻ったのだ。
レオニスとラウル、そして鷲獅子騎士十一組が転移門の周辺に着陸し集まる。
そしてレオニスの方からアルフォンソに声をかけた。
「皆、お疲れさん。とりあえず、金鷲獅子と友達になろう!って作戦は大成功したな」
「ああ、これも全てレオニス卿のおかげだ。心から感謝する、本当にありがとう」
「「「ありがとうございました!!」」」
レオニスの労いに、アルフォンソが礼を述べつつ頭を下げ、それに倣い他の鷲獅子騎士達も一斉に頭を下げた。
まさか金鷲獅子が穢れに侵されていたとは予想外だったが、それを助け乗り越えて無事友誼を結ぶことができた。
鷲獅子騎士団の念願が見事叶えられたことに、冒険者ギルドを通して正式に依頼を受けたレオニスも安堵している。
「さて、そしたらアルフォンソ達はこのままラグナロッツァの専用飼育場に戻るよな?」
「もちろん。レオニス卿はどうするのだ? そこのラウル殿とともにカタポレンの家とやらに戻るのか?」
「ああ。そこが俺の本来の居場所であり職場だしな」
「そうか……」
これからどうするかを尋ね合うレオニスとアルフォンソ。
アルフォンソ達は当然ラグナロッツァの専用飼育場に戻るが、レオニス達まで彼らとともに専用飼育場に行く必要はない。
レオニス達はここで分かれることになった。
「ではここで我らとは一旦分かれるが、後日また改めてお礼に伺いたい。冒険者ギルドを訪ねるよりも、そちらのカタポレンの家に行くべきだろうか?」
「いや、あの森は魔力が濃過ぎて人族が長居するのはキツい場所だからな。そんな場所にわざわざ来てもらうよりは、俺が専用飼育場に出向く方が早い。一週間後くらいにそっちに行くわ」
「我らが礼を言うべき方なのに、レオニス卿の方から出向いてもらうとは申し訳ないが……私もこれから報告書を書いたり忙しくなると思うので、そうしていただけるとありがたい」
改めて礼をしたいというアルフォンソに、レオニスが適宜答える。
一週間後に改めて専用飼育場を訪ねるというレオニスに、アルフォンソが恐縮している。
しかしレオニスとしては、冒険者ギルドに呼び出されたりカタポレンの家に来られるよりは、自分から出向いた方が余程気楽でいいのだ。
アルフォンソとの話がまとまったレオニス、今度はラウルに話しかける。
「そしたらラウル、お前は先にカタポレンの家に帰ってくれ」
「ン? ご主人様は俺といっしょに帰らないのか?」
「ああ。俺はお前と鷲獅子騎士達が帰った後に、この転移門を撤去しなきゃならん」
「「「え"ッ!?!?!?」」」
ラウルと会話していたレオニスの言葉に、何故かアルフォンソ他鷲獅子騎士達が仰天顔で叫んでいる。
そしてその筆頭であるアルフォンソが、慌ててレオニスに声をかけた。
「ちょちょちょ、レオニス卿、待ってくれ!この転移門を撤去するのか!?」
「え? そりゃ当然だろ? だって金鷲獅子のアウルムは無事助け出せたし、そもそもこの転移門はそのためだけに臨時で設置したもんだしよ」
「いやいやいやいや、それはちょっと、ちょーっとだけ待っていただきたい!」
泡を食ったようにレオニスに待ったをかけるアルフォンソ。
レオニスにしてみれば当然のことなのに、一体アルフォンソが何をそんなに焦っているのかが分からない。
その理由は、すぐにアルフォンソの口から語られた。
「レオニス卿、この転移門は是非ともこのままここに残しておいていただきたいのだが!」
「え、何で? 転移門の無断設置がご法度なのは、アルフォンソも知ってるだろ? 今回は緊急事態だったから、俺の責任において転移門を急遽設置したが……あんた達との任務を無事遂行できた今、もうこの転移門は御役御免だろ? だから俺が責任を持って、この手で撤去しようとだな……」
「だが!竜騎士団はシュマルリでの研修が終わった後も、転移門を利用してシュマルリに通い続けているのだろう!? 首都防衛の定例会議でディランがそう言ってたぞ!?」
「……ぁー……」
アルフォンソの必死の抗議に、レオニスはようやくその意図を理解した。
確かにアルフォンソの言う通りで、ディラン達竜騎士団はシュマルリでの研修の後も修行と称して今でも足繁く通っている。
どうやらアルフォンソもそのことを知っているようで、しかもそれがものすごく羨ましかったらしい。
要は『あいつら竜騎士団がシュマルリに通い続けてるなら、俺達鷲獅子騎士団だってコルルカ高原に修行しに来たい!』という願望があり、そのためにはこの転移門を撤去されたら困る!ということのようだ。
そのことに気づいたレオニス、はぁー……とため息をつきながら思案する。
実際竜騎士団のそうした実例を引き合いに出されれば、レオニスとしても考慮せざるを得ない。
鷲獅子騎士団と竜騎士団は、アクシーディア公国を代表する双璧の騎士団。片方だけに認められた権益があれば、自分達も同等の権益が欲しい!と思うのは当然だし、レオニスにもその気持ちは分かるからだ。
悩ましげに唸るレオニスに、アルフォンソはなおも説得を試みる。
「この転移門に関する手続き、登録申請やその後の運用管理も全て我らが責任を持って行う!レオニス卿には一切迷惑をかけぬと誓う!だから、どうか……どうか頼む!!」
レオニスの両肩をガシッ!と鷲掴みにしながら、眼前10cm前まで迫り必死に頼み込むアルフォンソ。
その必死の形相のド迫力に、さしものレオニスもタジタジとなりながらアルフォンソを宥めにかかる。
「ぁー、分かった分かった……俺もそれでいいから、とりあえず落ち着け、な?」
「では!この転移門を残しておいていただけるか!?」
「あんた達の方で新たに登録申請の手続きやら何やらするってんなら、これ以上俺が口出しをすることはない。今後も鷲獅子騎士団で活用できるなら、それに越したこたないしな」
「ありがとう!ありがとう、レオニス卿!!」
レオニスが転移門を残すことに同意し、アルフォンソはそれまで鷲掴みにしていたレオニスの肩から手を離して今度はレオニスの両手を握ってブンブンブブブン!と縦に振り続ける。
普段は騎士団長然としたアルフォンソが、ここまで感情を顕わにするのは珍しい。
コルルカ高原への足がかりを残せることが、余程嬉しいとみえる。
アルフォンソの暑苦しい抗議と礼からようやく解放されたレオニス。
ふぅー……と一息ついた後、改めてアルフォンソに話しかけた。
「じゃ、この転移門はこのままここに置いておくということで、あとはあんた達の好きなようにしてくれ」
「恩に着る。これで我ら鷲獅子騎士団も、さらなる修行をつけて人々を守るためのより強い力を得ることができる」
「修行、か……それもいいが、当面はビッグワームの素の大量生産に励めよ? アウルムは大食いのようだし、あの手の大物相手に手土産は欠かせんだろ」
「あ、ああ、それもそうだな!」
レオニスの忠告に、アルフォンソ他鷲獅子騎士達全員がはたとした顔になる。
その忠告は尤もなもので、鷲獅子の王であるアウルムとより親交を深めるには彼の好む手土産が欠かせない。
そしてレオニスのこの忠告は、シュマルリの竜達との交流で得た教訓である。
レオニスや竜騎士団の団員達がシュマルリに行く際には、必ず大量のエクスポーションを持参しなければならない。
いや、それなりに親しくなった今では手ぶらで訪ねたってそのことを表立って責められることはないだろうが、それでも気持ち的な問題もある。
訪問先の相手が喜んでくれるような手土産を用意する、円満な付き合いに必要な潤滑油となるのだ。
「……さて、だいたいの話もついたことだし。そろそろ帰るとするか」
「ああ。では我らはお先に失礼する。レオニス卿、ラウル殿、そしてラーデ殿。此度は真に世話になった。鷲獅子騎士団一同、心より感謝している。願わくば、お三方とは今後も善き付き合いを続けていきたい」
「おう、あんた達も本当にご苦労さんだった。またラグナロッツァで会おう」
「承知した」
レオニスとアルフォンソ、どちらからともなく手を差し出し固い握手を交わす。
その後鷲獅子騎士達は四回に分けて転移門で移動し、最後にレオニスとラウル、そしてラウルに抱っこされたラーデがカタポレンの森に移動していった。