軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1252話 金鷲獅子の名

その後金鷲獅子は、アルフォンソ達が用意した柔らかビッグワームをペロリ☆と平らげた。

鷲獅子騎士達全員が、各相棒の分も含めてビッグワームの素を一人十個は水で戻していたはずなのだが。

計八十個以上もの柔らかビッグワームを全部食べきるとは、余程そのお味がお気に召したようだ。

ケプー☆と軽いゲップを吐きつつ、満足げな顔で改めてアルフォンソを労う。

『アルフォンソとやら、このように美味なる品を心ゆくまで食べられて吾は満足だ。礼を言う』

「どういたしまして。金鷲獅子殿の空腹を満たせたのであれば、我らにとっても喜ばしきこと。次回またここを訪ねる時には、手土産にこのビッグワームの素をたくさん持ってこよう」

『おお、それは嬉しいぞ!この地の虫どもは、高原でろくな餌もないせいか痩せて筋張っていての、あまり美味しくないのだ』

アルフォンソの返事に、金鷲獅子が相好を崩しながら喜んでいる。

金鷲獅子が言う『この地の虫ども』とは、人族の呼び方でいうところの『バレンワーム』。ビッグワームの近縁種とされている。

ちなみにこの近縁種という言葉は、ぶっちゃけBCOにおける色違いコピペであることが多い。

もしここにライトがいたら『色違いコピペなのに、味の違いとかあんの?』と不思議がるところだろう。

昼食を摂り終えて、片付けを始めるレオニス達。

その間ラーデと金鷲獅子は、レオニス達の片付け作業を眺めながらのんびりと会話をしている。

『金の、本当にもう体調は良いのか?』

『ああ、おかげさまでな。これこの通り、己の足で歩き翼を動かして飛べるようになった。これも全て其の方達のおかげぞ!』

『なら良かった。其方がいなくなってしまっては、この地の鷲獅子達はもちろんのこと我も寂しいからな』

『皇竜……』

金鷲獅子の体調を問うラーデに、金鷲獅子は二対の大小四枚の翼をパタパタと動かしながらふわり、と浮いて見せる。

先程までぐったりとした様子で地に臥せっていた姿を思うと、本当にもう大丈夫そうだ、とラーデは心の中で歓喜していた。

そして金鷲獅子は金鷲獅子で、ラーデの心遣いにまたも黄金色の瞳が潤んでいる。

その様子に、ラーデは咄嗟に横に移動して金鷲獅子から離れて距離を取った。

『こら、金の、再び我をびしょ濡れにさせる気か?』

『ぅぅぅ……皇竜の方から、吾が死んだら寂しいなどと言うからだぞ!』

『仕方なかろう、それが我の嘘偽らざる本音なのだからして』

先程金鷲獅子の滝涙を浴びたラーデが警戒しながら文句をつける。

そんなラーデに、金鷲獅子も鼻をズビズビと啜りながら文句を言っている。

何だかんだ言いつつも、互いのことを思い遣る仲良しである。

そんな話をしているうちに、片付けを終えたレオニスがラーデ達のもとに寄ってきた。

「ラーデ、お待たせ。そしたらそろそろ帰るか」

『ああ、日が暮れる前に帰らないとな』

ラーデは自身を迎えに来たレオニスの前に飛んでいき、そのままレオニスに抱っこされる。

ラーデだってもう自分の翼で飛べるだろうに、帰りも抱っこしてもらうとか甘えん坊さんなの?と思うことなかれ。

今日のラーデは旧友である金鷲獅子を救うために、それまで貯めてきた魔力を再び手放してしまったのだ。

それなりに疲れているであろう小さな身体を、レオニスの抱っこで運んでもらっても罰は当たるまい。

そして、金鷲獅子はラーデが帰ると聞き寂しそうに話しかける。

『何だ、もう帰ってしまうのか?』

『ああ、今日のところはもう帰らねばならん。我の役目は無事果たしたしな』

『そうか……』

寂しそうにしながらも、ラーデが去ることを無理には止めない金鷲獅子。

ラーデが相当無理をして魔力を譲渡してくれたことは、金鷲獅子にも分かっている。なので、ラーデも再び長期間の休養が必要であることを金鷲獅子は理解していた。

しょんぼりとしている金鷲獅子に、ラーデが努めて明るい声で話しかける。

『金の、そんな顔をするな。我も当分は地上で暮らす故、これからは会おうと思えばいくらでも会えようぞ』

『そ、そうか。ならば吾は、その日を楽しみに、この地でずっと……ずっと待っておるぞ!約束だぞ!』

『ああ、我は決して約束は違えぬ』

ラーデの気遣いに、金鷲獅子もまた元気を振り絞るように答える。

そして金鷲獅子は、レオニスに向かって声をかけた。

『レオニス、と言ったか。吾が友皇竜を……くれぐれもよろしく頼む』

「ああ、任せとけ。ラーデのことなら俺やラウルがついているからな、心配は要らん」

『………………』

レオニスと話をしていた金鷲獅子、今度は不思議そうな顔でラーデに問いかけた。

『そういえば皇竜よ、其の方、いつから『ラーデ』などという名で呼ばれるようになったのだ?』

『ぬ? そのラーデという名は、レオニスがつけてくれたのだ。メシェ・イラーデという名では長くて仰々しい、と言ってな』

『そうか……羨ましいのぅ』

「「「羨ましい???」」」

ぽそりと本音を呟いた金鷲獅子の言葉に、今度はレオニス達が不思議そうな顔をしている。

ラーデと金鷲獅子は、互いに『金の』『皇竜の』と呼び合う仲ではあるが、それ以外の呼び名は持っていなかった。

しかし、今の皇竜メシェ・イラーデには『ラーデ』という愛称的な呼び名がつけられているのを知り、それが存外似合っていて金鷲獅子は羨ましく感じたのだ。

そして金鷲獅子は、今度はアルフォンソに向かって声をかけた。

『のう、吾が友アルフォンソよ。吾にも愛称をつけてはくれまいか』

「え? 金鷲獅子殿の愛称?」

『そう、愛称。吾も皇竜のように、友から親しみを持って呼ばれたいのだ』

「金鷲獅子殿に、愛称をつける? 私が?」

金鷲獅子からの突然の指名に、アルフォンソが半ば呆然としつつ呟く。

確かにアルフォンソは先程金鷲獅子と友達になったばかりだが、まさかこの場で名付け親にまで指名されるとは思っていなかった。

名付け親などという責任重大な任務の発生に、アルフォンソはオロオロしながら答える。

「ぇー、ぁー、えーと……金鷲獅子殿に相応しい名を皆と考える故、しばし待たれよ」

『おお、引き受けてくれるか!いくらでも待とうぞ!』

しどろもどろになりながら答えるアルフォンソに、金鷲獅子野顔がパァッ!と明るくなる。

そしてアルフォンソは鷲獅子騎士達に向けて「全員集合!」と招集をかけて、その場で会議?を始めた。

アルフォンソ以下総勢十一名の鷲獅子騎士達が、一つの輪になってあーでもないこーでもない、と議論を交わす。

小声でモニョモニョと議論しているため、どんな名が候補に挙がっているかまでは聞こえてこないが、かなり白熱した議論がしばし交わされていた。

そして何度か挙手による多数決を繰り返し、ようやくアルフォンソが金鷲獅子の前に戻ってきた。

「金鷲獅子殿、我ら人族の間で『金』を意味する『アウルム』という名は如何かな?」

『アウルム……うむ、善き響きだな!』

「おお、気に入ってもらえたなら良かった」

『吾は今日から『アウルム』と名乗ることにするぞ!』

アルフォンソが伝えた、金鷲獅子に相応しい名『アウルム』。

鷲獅子騎士達は正直あまり自信がなかったのだが、金鷲獅子は思いの外アウルムという名を気に入ったようだ。

喜色満面の笑みで大喜びする金鷲獅子に、アルフォンソ達鷲獅子騎士一同は全員ホッ……と安堵していた。

そんな金鷲獅子達のやり取りに、レオニスに抱っこされているラーデもまた嬉しそうに金鷲獅子に声をかける。

『アウルム、か。善き名をもらえて良かったの』

『ああ!皇竜もこれからは吾のことを『アウルム』と呼ぶがよい!』

『そうだな。アウルムよ、ならば我のこともこれから『ラーデ』と呼ぶがよい』

『おお!ラーデとまた会える日を、心から楽しみにしておるぞ!』

お互いに新しい名を呼び合い再会を誓う 皇竜(ラーデ) と 金鷲獅子(アウルム) に、レオニス達もまた笑顔になっていた。