軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1245話 援軍の出動

レオニスは竜騎士団専用飼育場を出て、来た時と同じように外壁に沿ってラグナ宮殿を迂回するように飛行する。

そうして鷲獅子騎士団専用飼育場に戻ると、正門前にラウルが待っていた。

二人の門番と雑談している様子のラウルの横に、レオニスが空からスタッ、と降り立った。

「おう、ラウル、待たせたな」

「いや、俺もさっきここに到着したばかりだから問題ない。それよりこれ、ご主人様に頼まれたやつな」

「ありがとう」

レオニスと無事合流できたラウル、早速空間魔法陣を開いて魔術師ギルドでの買い出し品である呪符類を取り出す。

ラウルから呪符を受け取ったレオニスは、受け取ったばかりの品々をざっと数えつつ目を通す。

「魔物除けが特級二十二枚、上級四十三枚、中級三十五枚か……あの売場には、普段はもうちょい量があった気がするが」

「他の冒険者達や魔物除けの呪符を必要とする人達のためにも、一気に全部売り切って在庫を空にする訳にはいかない、と言われてな。それもそうだと思ったんで、売ってもらう量を向こうの判断に任せたんだ」

「そりゃそうか。他の奴らだって魔除けの呪符は必要だからな」

思った以上に魔物除けの呪符の数が少ないことにレオニスは疑問を持つも、ラウルから返ってきた答えに得心する。

魔術師ギルド売店側の主張は尤もなもので、いくらレオニスの金払いが良くて全部買い占めることができようとも、レオニス一人だけに商品を独占させる訳にはいかない。

魔物除けの呪符は、凶暴な魔物から身を守るための重要なアイテム。これを必要とする人はたくさんいるのだ。

それに、ありったけ買うことはできなくても合計百枚もあれば十分御の字だ。

レオニス以外の鷲獅子騎士団員十人前後に配ったとして、一人当たり九枚か十枚は持たせられる計算になる。

そして魔物除けの呪符の効力は、一枚につき三十分間。十枚あれば、最長で五時間は魔物除けが可能となるのだ。

もうすぐ昼になるし、今から五時間も経てば夕暮れ時に差し掛かる。

今日一日分の探索の安全性が確保できただけでも、良しとしなければならない。

ちなみに魔物除けの呪符のお値段は、特級1500G、上級800G、中級500Gとなっている。

これを購入枚数と照らし合わせると、特級33000G、上級34400G、中級17500G、計84900Gのお買い上げである。

これが全部レオニスのツケとなっている訳だが、魔術師ギルドの中でも屈指の常連かつ太客であるレオニスならば全然問題はない。

「さて、では俺は今から鷲獅子騎士団の奴らと合流してコルルカ高原に向かう。ラウルもさっきの打ち合わせ通りにな」

「ああ、ご主人様達も気をつけてな」

呪符の受け渡しを無事終えたレオニスとラウル。

二人だけに分かるように要点をぼかしつつ、この先の行動の確認をしあう。

そうしてレオニスは鷲獅子騎士団専用飼育場内に、ラウルはカタポレンの家に戻るべくラグナロッツァの屋敷に分かれていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

レオニスが専用飼育場内に入ると、バタバタと慌ただしく動く騎士団員達がいた。

そんな中でも、レオニスの赤い出で立ちはかなり目立つ。

レオニスの姿を目に留めた一人の騎士団員が、慌てたように走るのを止めて方向を変えてレオニスに向かってきた。

「レオニス卿!コルルカに行く十人が先程決まりました!今現在、各自支度を整えているところです!」

「おお、そうか。俺も呪符の支度ができたところだ」

「でしたらお手数ですが、会議室に向かっていただけますか。会議室で副団長が仕事をしつつ、レオニス卿をお待ちですので」

「分かった。お前らの支度もまだもうちょいかかりそうだし、先にエドガーと話をしてくるわ」

「よろしくお願いいたします!」

会議室でエドガーが待っていると聞き、レオニスは早速宿舎内にある会議室に向かう。

中に入ると、そこには書類作成をしているエドガーがいた。

「よう、エドガー。コルルカ高原に行く十人が決まったんだって?」

「あ、レオニス卿!はい、先程ようやく決まりまして」

「エドガーも行くのか?」

「いいえ、残念ながら私は待機組です。私としても、本当は何をさて置いてもコルルカ高原に行きたいところなのですが……今は団長不在ですので、留守を預かる副団長までラグナロッツァを離れる訳にはいかないんですよね」

「ああ、そういやそうだな……」

エドガーもコルルカ高原に向かうのか、何の気なしに尋ねたレオニスだったが、留守番だと言うエドガーの話を聞いて納得する。

確かに鷲獅子騎士団団長であるアルフォンソは、今まさにコルルカ高原奥地に遠征中。彼が不在の間、鷲獅子騎士団を指揮するのは副団長であるエドガーの役目である。

その役目を放棄してエドガーまでコルルカ高原に向かう訳にはいかないし、そんなことをしたら後で鷲獅子騎士団全体が糾弾されかねない。

とはいえ、エドガーも本音のところではコルルカ高原に行きたくて仕方がないらしく、その表情は実に苦悶に満ちている。

右の拳をギュッ!と握りしめながら、目を閉じ眉間に皺寄せながらクーッ……と呻くエドガー。

実に悔しそうに歯を食いしばる様子に、レオニスは苦笑するしかない。

するとここで、我に返ったエドガーがレオニスにはたとした顔で話しかけた。

「ああ、そういえばレオニス卿、回復剤や食糧などの準備は大丈夫ですか? もし補充したいものがあれば、ここでお渡しできると思いますが」

「いや、今のところ大丈夫だ。むしろお前らの団員十人分の荷物とかの方が心配だろ」

「いえ、そこは当騎士団にも空間魔法陣持ちがいますので。主な物資はその者に持たせております」

「そっか、なら安心だな」

遠征中の物資を互いに心配し合うレオニスとエドガー。

レオニスは自分一人の分を賄えばいいだけだが、鷲獅子騎士団の方は違う。

騎乗する騎士団員のこともだが、鷲獅子の食糧やら何やらの方が重要になってくるのだ。

しかしそれも対応済みとのことなので、レオニスとしてはエドガーの言葉を信じる他ない。

「レオニス卿、こちらをお持ちください」

「これは何だ? ……って、鷲獅子騎士団の徽章か?」

「はい。鷲獅子騎士団の転移門には、その使用条件に『鷲獅子騎士団の徽章を身に着けた者』という規定がございまして」

「なるほど、承知した」

エドガーがレオニスに差し出したのは、鷲獅子騎士団の徽章だった。

それは竜騎士団同様、特定の騎士団員の徽章を身に着けた者でないと、宿舎横にある転移門は利用できないのだ。

レオニス自身も竜騎士団で経験済みなので、エドガーから受け取った徽章を早速襟元に着けた。

徽章を無事着け終えたレオニスに、アルフォンソがなおも伝言を伝える。

「あとですね、アルフォンソ団長にお伝えしていただきたいことがあるのですが」

「何だ?」

「もし金鷲獅子の捜索が今日の日中に終わらなかった場合、一旦全騎士団員とともにラグナロッツァご帰還ください、と」

「……分かった。さすがにコルルカ高原奥地で、十何人もの大所帯で野営する訳にもいかんもんな」

「そういうことです」

エドガーの伝言内容に、レオニスも納得しつつ頷く。

コルルカ高原奥地の異変の件が今日中に片が付けばいいが、そう上手くいかない可能性だって十分にある。

もし日が落ちるまでに金鷲獅子の所在を突き止められなかったら、一度撤退して体制を整えてからまた出直すべきだ、とエドガーは考えたのだ。

そしてその一時撤退を可能にしたのが、レオニスが急遽作ったコルルカ高原奥地手前の転移門だ。

この転移門がある限り、レオニス達は何度でもコルルカ高原奥地に出向くことができる。

もとはレオニスがラグナロッツァ帰還のための時間惜しさに作った代物だが、今後もきっと様々な場面で役に立つことだろう。

エドガーからアルフォンソへの伝言も引き受けたレオニス。

するとそこに、一人の騎士団員が会議室に飛び込んできた。

「エドガー副団長!十人の支度が整いました!全員相棒の鷲獅子とともに、転移門の前で待機しています!」

「ご苦労。私達も今から転移門に向かう。レオニス卿、行きましょう」

「ああ」

鷲獅子騎士団出動の支度が整ったと聞き、レオニスとエドガーがともに会議室から出て外に向かう。

宿舎横にある転移門のところでは、先程の騎士団員が言っていた通りに十組の鷲獅子騎士団団員と相棒の鷲獅子達が整列していた。

「エドガー、転移門の行き先の指定はもうしてあるのか?」

「あ、それは私が今からするところです。レオニス卿、転移門の行き先の名称をお教えください」

「行き先は『コルルカ高原奥地』だ」

「承知しました」

意外なことに、転移門の管理担当者はエドガーだという。

エドガーはこの手のシステム運用にも長けていて、言うなれば鷲獅子騎士団のシステムエンジニアといったところか。

本当はレオニスが行き先操作をしてもいいのだが、ここは鷲獅子騎士団。

国家の安全と治安を担う主要機関だけに、一介の冒険者であるレオニスが手出ししていいものではない。

故にここは、鷲獅子騎士団副団長のエドガーに任せるのが一番いいのだ。

エドガーが転移門のパネルを操作し、行き先に『コルルカ高原奥地』を新規に追加した。

これで準備は万端に整った。

転移門の外に出たエドガーが、整列して並んでいる団員達に向かって改めて声をかけた。

「これから諸君には、コルルカ高原奥地に出向いてもらう。向こうにはアルフォンソ団長もおられるから、団長の指示に従い任務を果たしてきてくれ」

「「「はいッ!」」」

「では今から二組づつ、転移門を利用し向こうに送る。右から二組づつ、順番に転移門の中に入るように」

「「「はいッ!」」」

「レオニス卿は一番最初にお送りするので、レオニス卿も転移門の中にお入りください」

「分かった」

レオニス他十組の鷲獅子騎士達がエドガーの指示に従い、順番に転移門に入っていく。

ちなみに転移門のパネルを操作するのはエドガーだ。

鷲獅子騎士達は既に騎乗しているので、転移門の操作パネルを触れないからである。

そのため鷲獅子騎士団や竜騎士団にある転移門は、操作パネルのもとである石柱が魔法陣の内側ではなく外側に向けて作られているのだ。

まず最初の第一陣が転移門の中に入り、レオニスもその横に並び立つ。

そして転移門の操作パネル前にいるエドガーが、改めて声をかけた。

「レオニス卿と皆の武運を、このラグナロッツァより祈る。レオニス卿、どうかアルフォンソ団長ともどもお力添えをよろしくお願いいたします」

「承知した」

見送りの言葉をかけるエドガーに、レオニスも力強く答える。

そうしてレオニス他十組の鷲獅子騎士達は、コルルカ高原奥地に向かって転移していった。