軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1223話 玄武の成長

氷の洞窟に入り、洞窟内を歩くラウル。

最奥の間より手前にある祭壇の間が見えてきたところで、氷の女王が飛び出してきた。

『ラウル!よう来たの!』

「おっと!氷の女王か。何だ、祭壇の間にいたのか?」

『ああ、今玄武様があちらでお食事をなさっておるのだ』

「おお、そうか。なら祭壇の間の方にお邪魔するか」

祭壇の間から飛び出た氷の女王が、ラウルの胸に一直線にバフッ!と飛び込んだ。

相変わらずラウルのことが大好きな氷の女王。そのダイレクトアタックを、ラウルは余裕で受け止めている。

二人で祭壇の間に入ると、氷の女王の言う通り食事中の玄武がいた。

ラウルが以前持ち込んだ巨大白菜を、もっしゃもっしゃと美味しそうに食べる玄武。

氷の女王とともにラウルが入ってきたことに気づき、のっしのっしとラウルの前に移動してきた。

その大きさたるや、甲羅の一番高いところはもはやラウルの身長の倍以上に大きくなっていた。

「よう、玄武。元気にしてたか?」

「クルァ!」

「そりゃ良かった。俺が作った白菜は美味いか?」

「モキュ!」

目の前に来た玄武の頬を、ラウルがそっと優しく撫でる。

そんなラウルに、玄武は実に嬉しそうに頬を寄せる。

ラウルは玄武の誕生の瞬間に立ち会っているので、玄武はラウルのことを生みの親の一人だと思っている。

そして『美味しいお野菜をたくさんくれる、とっても優しい素敵なパパ!』と認識しているので、玄武はラウルのことがとても大好きなのだ。

ちなみにラウルに頬を寄せているのは頭だけではなく、玄武の尻尾の大蛇までラウルの身体に寄ってきて頬ずりしている。

なのでラウルは右手で玄武の頭部の頬を、左手で尻尾の大蛇の頭を撫でるという、実に器用な対応をしている。

一ヶ月程前に、ラウルはレオニスとともに氷の洞窟を訪れ、祭壇の間の入口の拡張工事を行った。

その時に、入口の高さを5メートル以上に拡げたのだが。玄武の成長具合を見るに、そう遠くないうちにこの祭壇の間も手狭になるかもしれない。

こりゃご主人様とまた拡張工事に来なきゃいけないかもな……とラウルは玄武を撫でながら考えている。

「少し見ないうちに、玄武も大きくなったなぁ」

『ああ。其方が置いていってくれた、たくさんの食べ物のおかげで玄武様も日々大きく成長しておられる。玄武様は特に白菜やキャベツがお気に入りでな。実に美味しそうに食べておられる姿を見て、我もとても癒やされておる』

「そっか、そりゃ良かった」

玄武の成長を嬉しそうに語る氷の女王に、ラウルも笑顔で喜ぶ。

ほんの少し前までの玄武は、ライトでも抱っこできる程の大きさしかなかったのに。今ではラウルがその甲羅に乗っかっても大丈夫なくらいに大きくなった。

その成長に大きく寄与したのは、言うまでもなくラウルが丹精込めて作ったカタポレン産の巨大野菜や、ジャイアントホタテ等の巨大海産物である。

「そしたら今日もたくさんの野菜やジャイアントホタテなんかを追加で置いておくから、是非とも食べてくれ」

『おお、それはありがたい!玄武様、ようございましたねぇ♪』

「マキュモキュ!」

ラウルは祭壇の間の隅に移動し、空間魔法陣を開いて巨大野菜やジャイアントホタテの刺身などをドサドサと出していく。

白菜にキャベツだけでなく、寒さに強いニンジンや大根なども山積みしていくラウルを、氷の女王はうっとりとした眼差しで見つめている。

それらはこの氷の洞窟内では決して得ることのできない、貴重な食材。そんな貴重な食材を、ラウルは惜しげもなく提供してくれる。

そんな気風のいいラウルに、氷の女王の心はますます鷲掴みにされていくのである。

『そしたらラウル、その礼に今日も我の氷の槍を持ち帰るか? もちろん壁の氷も好きなだけ採っていってよいぞ』

「おお、そりゃありがたい!氷の女王がくれる氷は貴重で使い勝手がいいからな、俺としてもとても助かっているし」

『我の氷が其方の役に立つなら、我としても本望だ』

氷の女王の返礼の申し出に、ラウルが実に嬉しそうに破顔する。

ラウルの輝かんばかりの笑顔を受けた氷の女王。彼女の白く滑らかな頬が、蒸気するようにますます白さを増して煌めき輝く。

もちろんラウルには『氷の女王をより惚れさせてやろう!』などという下心や他意など微塵もない。氷の女王からもらう氷や洞窟の壁の氷の有用性に感謝し、心から称賛しているだけである。

なのにラウルの言葉は毎回毎度氷の女王にクリーンヒットし、その胸を貫いてはますます惚れさせていくというのだから大したものだ。

ラウルが開いていた空間魔法陣に、氷の女王が早速両手を翳して氷の槍を生み出しては収納させていく。

その量たるや凄まじいもので、長さ1メートルくらいの氷の槍が一秒間に二十本以上は生み出されている。

この約1メートルという氷槍のサイズは、ラウルが「このくらいの大きさで頼む」とリクエストしてわざわざ調整してもらっている。

ラウルはこの氷を、様々な場面で用いている。

例えば食材を冷やしたり、細かく砕いて氷の代わりに飲み物に入れたり、馴染みのラグナロッツァ孤児院でも食糧庫の冷蔵用として定期的に届けている。

今は冬なのでそこまで消費しないが、夏になればもっと大量に使うだろう。部屋の冷房やユグドラツィ達神樹族への差し入れ等々、使い道はさらに広がる。

そうやって普段使い用として使い分けるには、1メートルくらいの大きさの方が何かと都合がいいのである。

もちろん氷の女王にとっては、氷のサイズ調整など朝飯前のお茶の子さいさい。50cmより小さくもできるし、何なら10メートル以上の巨大な氷だって生み出すことが可能だ。

しかし、もしこれらを攻撃として食らったら―――普通の冒険者なら、回避すらできずに即死していることだろう。

いや、もちろんレオニスやラウル程の実力者であれば回避は可能だろう。だがそれでも、この大量の氷槍を涼しい顔で何分でも続けて繰り出せる氷の女王の力は底知れない。

そうして一頻り氷の槍をもらったラウル。

まだまだ頑張って氷槍を生み出し続ける氷の女王に声をかけた。

「ありがとう、これくらいもらえればいいから、氷の女王もあまり無理しないでくれ」

『そうか? 我はそんなに無理をしていないが、其方がそういうならここまでにしよう』

「ああ、これだけもらえれば十分だ。そしたらここでお疲れさまのおやつタイムにするか」

『おやつ!其方がいつも出してくれるスイーツか!?』

「ああ。俺の方も氷の女王に話しておきたいことがあるし、ゆっくりお茶でもしよう」

ラウルが放った『おやつタイム』という魅惑の誘いに、氷の女王は氷槍を生み出す手を止めてラウルの方を見る。

その目はキラッキラに輝いていて、ラウルへの恋心とはまた違う『スイーツへの期待感』に満ち満ちている。

ラウルはその場にテーブルと椅子を出し、おやつタイムの準備を始める。

テーブルの上にはいくつかのスイーツの他に、自分用のホットコーヒーなどを並べていく。

もちろん玄武用のスイーツもちゃんと用意されていて、テーブル横で待機する玄武の顔の前にはホールのアップルパイがデデーン!と鎮座ましましている。

全部の支度が終わり、席につくラウルと氷の女王。

二人は両手を合わせていつもの挨拶を唱和する。

「『いっただっきまーす!』」

ラウルと氷の女王、そして玄武のお茶会が始まっていった。