軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1211話 カタポレンの森の案内

ラーデと初めてカタポレンの森で過ごした翌日の日曜日。

この日ライトとレオニスは、二人でホドに行く予定が入っていた。

それは、ホドにあるヴァイキング道場第一支部長で、バッカニアの兄であるアマロの結婚式に出るためである。

そのためレオニスは夜明け直後に起きて、まだベッドで寝ているライトやラーデを起こさないようそっとベッドを抜け出し、森の警邏に出かけた。

それから遅れること一時間後にはライトも目を覚まし、日課である魔石回収ルーティンワークに出かける準備を始めた。

その時にラーデももそもそと起きてきたので、ライトはラーデを連れて魔石回収に出かけていった。

ライトの背中にくっつき、おんぶ状態で乗っかっているラーデ。

まずライトはカタポレンの家の近辺にある結界代わりの魔石生成箇所を回る。

「これがレオ兄ちゃんの言っていた、魔石生成装置だよ。水晶なんかの石にカタポレンの魔力を吸い取らせて、石に溜め込む魔法陣が用いられているんだ」

『ほう、それが其方らの言う『魔石』なるものか』

「そうそう。こうやって石に魔力を溜め込むことで、魔力の補充やいろんな道具の動力に使えるんだ。そのおかげで、魔力が少ない人達でも魔導具が使えるようになるんだよ」

『魔力に乏しい人族ならではの、工夫と知恵という訳か……なかなかに素晴らしきことよの』

ライトの手のひらの上に乗せられた、キラキラと輝く魔石。

ラーデがライトの肩越しに覗き込みながら、感心している。

ちなみに今のラーデに魔石を触らせてはいけない。

一番最初に収穫した魔石を、ライトが「試しに持ってみる?」と言ってラーデに渡したら、あっという間に充填した魔力が全てラーデに吸収されてしまったのだ。

ラーデの手のひらの上で、魔石の輝きがみるみるうちに消えていく様を見て、ライトが「え? あッ、あッ、やばッ……」と慌てるも時既にお寿司。

ほんの数秒のうちに、魔石はただの水晶に戻ってしまった。

今のラーデは魔力が全く足りない状態なので、ラーデの意思に関係なく魔石の魔力を吸い取ってしまったらしい。

「これじゃラーデには当分魔石を持たせてあげられないな……」

『ぁー、すまんな……何かやらかしてしまったようだな』

「あ、ううん、ラーデが悪い訳じゃないから謝らなくていいよ!そもそもぼくの方から、ラーデに魔石を持たせてあげたんだし」

『そうか。しかし、確かにその石からそこそこの魔力が得られたのは間違いない。これを体験できたことは、我にとっては貴重であった』

「そっか、ラーデがそう感じてくれたなら良かった!」

ラーデが水晶をライトに返し、ライトはその水晶を再び魔石生成魔法陣の上に置く。

二個目以降はすぐに回収用鞄に仕舞い込むことにして、家の周辺の魔石を全て回収し終えたライト。

次は家から離れた場所にある魔石の回収を始めた。

肩と背にラーデを乗せたライト、木々の間をヒョイヒョイと器用かつ素早く飛んでいく。

そんなライトの優れた飛行能力を見て、ラーデが感心している。

『其方、人族の身でありながら実に身軽に飛ぶのだな。いつの間に人族も普通に飛べるようになったのだ?』

「あ、今でも普通の人族は飛べないよ? でもぼくは普通の人族だけどね!」

『…………』

ライトの実に矛盾に満ち満ちた答えに、ラーデがスーン……とした顔になっている。

普通の人族は飛べないものと言っている傍から、当のライトはシレッとした顔で森の中をずっと飛んでいる。

この時点でライトは『普通の人族ではない』ということになるはずなのだが、本人に言わせれば『ぼくは普通の人族!』らしい。

ジト目で聞き入るラーデを他所に、ライトは自分が飛べる秘訣を語り続ける。

「ぼくの場合、友達になった青龍からもらった鱗をほんの数欠片飲み込むことで、一人でも飛べるようになったんだ!ちなみにレオ兄ちゃんは、あの赤いジャケットやベルト、パンツなんかにいろんな魔法が付与されていてね。その中に飛行魔法もついてて飛べるんだよ」

『魔法付与か、なるほどな……というか、青龍というと四神のあれか?』

「うん、そうだよ!青龍は風の女王様がいる辻風神殿の守護神なんだ!」

ライトの話に、ラーデがますます首を傾げる。

ラーデも四神という存在を知っているようで、それと友達とは一体何事ぞ?と訝しがっているようだ。

しかし、その訝しさは瞬時に霧散する。何故ならライトはこの自分―――皇竜メシェ・イラーデとも知己を得ている、ということに気づいたからだ。

ライトの肩に乗りながら、ラーデはフフフ、と小さく笑う。

この皇竜たる我とも知己を得る程の者ならば、四神の青龍とも友誼を結べて当然であろうな。

いやはや全く、あのレオニスという者もそうだが、このライトという幼子にも驚かされてばかりだ。

我が邪皇竜に封じられている間に、世界は随分と様変わりしたものだな……

ラーデはそんなことを考えながら、カタポレンの森の魔力を呼吸とともに吸い込む。

別名『魔の森』とも呼ばれるカタポレンの森の空気は、実に濃密な魔力に満ちていて心地良い。

それこそ呼吸をするだけで、他に何をせずとも身体の中に魔力が溜まり身体の隅々にまで行き渡っていくのが分かる。

『……確かにあの家から離れると、魔力の濃さが格段に上がるな』

「でしょ? ぼく達の家の周りの倍くらいは濃く感じるよねー」

『其方はこの魔力を重たく感じはしないのか? それこそ普通の人族の身には、耐え難き重苦しさになるであろうに』

「あ、ぼくは全然平気ー。赤ん坊の時から、レオ兄ちゃんといっしょにずっとあの家に住んでるからね」

『そうか……赤子の頃からあの空気の中にいれば、この森の魔力とも馴染んで当然か……』

ライトの人外ぶりの秘訣?を垣間見たラーデ、得心しつつ頷く。

このカタポレンの森の濃密な魔力は、かつてラーデが望んでいた龍脈に勝るとも劣らない。これ程のものとは、ラーデ自身思いもよらなかった。

ラーデの想像や期待を良い意味で裏切ると同時に、闇の女王達がこの森での静養を強く勧めたことにも納得できた。

そしてこのような森で、赤子の頃からずっと過ごしてきたとなれば、ライトが普通の人族ではないことにも頷ける。

当人にはその自覚がかなり薄いようだが、あの兄にしてこの弟あり、と思えばそれも妥当か。

するとここで、ライトがラーデに向かって問いかけた。

「ねぇ、ラーデはこのカタポレンの森をどう思う? 魔力たっぷりで、ラーデが大きくなるにはもってこいの場所だと思うんだけど」

『ああ、確かにこれ程我の静養に適した場所はないな。強大な魔力に満ち満ちていて、とても気に入った』

「そっか、それなら良かった!」

カタポレンの森を気に入った、というラーデに、ライトが破顔しつつ喜ぶ。

このカタポレンの森は、ライトにとって故郷も同然の場所。ラーデにも気に入ってもらえて嬉しいようだ。

そうこうしているうちに、全ての魔石を回収し終えたライト。

ラーデに向かって、改めて声をかけた。

「よし、魔石回収はこれで終わり!家に帰るよー」

『承知した』

朝の仕事を無事終えたライトは、ラーデとともにカタポレンの家に帰っていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ライトとラーデ、二人してカタポレンの家に帰ると、外の畑でラウルが巨大林檎の収穫をしていた。

林檎の木の前で林檎を収穫しているラウルのもとに、ライトが駆け寄っていく。

「あ、ラウル、おはよう!」

「おう、おはよう、ライト。いつもの魔石集めをしてきたのか?」

「うん!ラーデといっしょに回ってきたんだ!」

「そりゃいい。ラーデはカタポレンの森に来たばかりだもんな」

「うん!」

ライトの肩に乗っかっていたラーデを、ライトが胸の前に抱っこし直す。

そして高所で巨大な林檎を一つ一つ丁寧にもぎ取るラウルに、ライトが声をかけた。

「ラウル、今日はぼくとレオ兄ちゃんがお出かけしている間、ラーデのことをよろしくね!」

「おう、任せとけ。ラーデ、俺といっしょにお留守番しような」

『承知した』

林檎の収穫を一通り終えたラウルが、そのままスーッ、と下に降りてきた。

そしてライトが両手でラーデを持ち、ラウルに向けてズイッ!と前に差し出す。

ライトからラーデを受け取ったラウルは、ラーデを左腕に抱き抱えてから今収穫した林檎の木の横に移動していく。

「それじゃ、ぼくは朝ご飯食べて出かける支度してくるね!」

「おう、気をつけてお出かけしてきな」

「ありがとう!ラウルも畑仕事頑張ってね!」

「はいよー」

「ラーデもラウルといっしょに、お利口さんでお留守番しててね!」

『うむ、承知した』

ラウルにラーデを託したライトは、安心してカタポレンの家の中に入っていった。