軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1208話 人族の帰郷と八咫烏の帰郷

晴れ渡る天空島の空の下で、思う存分野菜バーベキューを楽しんだライト達。

百人以上の天使達はもとより、二人の女王や二羽の神鶏達もお腹いっぱい食べてとても満足していた。

「さて、ぼちぼち帰り支度を始めるか」

「そうだね!これからカタポレンの家の近くに、メシェ・イラーデが住む場所を整えたりしなきゃだもんね!」

「日が明るいうちに帰らなきゃな」

ライト達はそう言うと、早速後片付けを始めた。

ライトとマキシ達八咫烏は使用済みの取皿やボウル、ザルなどの調理器具の回収と洗浄、レオニスはバーベキュー台の回収、ラウルはログハウス二階のベッドや毛布の整理整頓をしている。

ちなみにメシェ・イラーデの方はというと、光の女王に抱っこされながらライト達の後片付けが終わるのをのんびりと待っている。

そして神鶏達に出した野菜から出たゴミ、トウモロコシの皮や白菜の芯などはパラス達天使が総出で裁断及び乾燥に勤しんでいる。

パラス曰く「ラウルの特製野菜から出たこれらを緑肥にすれば、天空島の野菜はもっともっと美味しくなるはず!」とのこと。

パラスの野菜栽培への情熱は、もはやラウルのそれと並ぶくらいのものとなっているようだ。

ライト達にとっても、野菜ゴミを回収して再利用する手間が省けて楽ちんになり、パラス達は最上級の緑肥を手に入れられて大喜び。完璧なるWin-Win関係である。

そうして一通りの後片付けを終えたライト達。

皆でログハウス横の転移門前まで歩いていった。

『皆、昨日は本当にありがとう。皆のおかげで、この天空島は滅ぶことなく無事生き残ることができたわ』

『本当に、本当にありがとう!皆で今日という日を迎えることができたのも、全て貴方達のおかげよ!貴方達は、天空島に生きる者達全ての大恩人よ!』

「このような大恩、返したくとも返しきれる気がしないが……それでもこの先、お前達に何か困ったことが起きたらいつでも言ってくれ。我ら天使達一同、必ずやお前達の力となることを約束しよう」

光の女王、雷の女王、そして天使達の代表パラスが、改めてライト達に向けて心から感謝の言葉を述べる。

そして光の女王が、その胸に抱いていたメシェ・イラーデに声をかけた。

『皇竜メシェ・イラーデ様……しばしのお別れですが、お身体の具合が良くなってきましたら、いつでも天空島にお越しくださいませ』

『私達一同、メシェ・イラーデ様の天空のご帰還を心よりお待ち申し上げておりますわ!』

『うむ。其方らの忠義、我も決して忘れはせぬ。また近いうちに会おうぞ』

光の女王の腕の中からするり、と抜け出したメシェ・イラーデ。

六枚の羽根をパタパタと動かしながらふわふわと飛び、二人の女王にそっと頬ずりをしている。

そして別れの挨拶が済んだメシェ・イラーデが、今度はレオニスの方に向かって飛んでいった。

『では、レオニスよ。これからしばしの間、よろしく頼むぞ』

「ああ。俺も男だ、約束したことは必ず守る。あんたが本来の力と姿を取り戻すまで、俺を含めてここにいる全員であんたを守り支えると誓おう」

メシェ・イラーデからの挨拶に、レオニスが力強く頷きつつ返事をする。

その頼もしい言葉に、メシェ・イラーデも満足そうに頷きながらレオニスの胸にぽすん、と飛び込んだ。

レオニスの腕の中にすっぽりと収まったメシェ・イラーデに、周りで見ていたライト達も笑顔になる。

そしてライト達は転移門の中に入り、手を振りながら見送る二人の女王とパラス達に見守られながら地上に帰っていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

天空島からカタポレンの森の家に無事帰還したライト達。

時刻は午後の三時を少し回った頃。

ちょうどおやつの時間なので、まずは一休みしがてら台所でおやつタイムにしよう!ということになった。

畑の一角にある転移門から、カタポレンの家にぞろぞろと入っていくライト達。

台所にある四人座りのテーブルにとりあえず着くも、ライト、レオニス、ラウル、マキシの四人に加えて八咫烏のウルス、アラエル、フギン、ムニンの四羽、そして皇竜メシェ・イラーデまでいるのだからさあ大変だ。

マキシ以外の八咫烏達は文鳥サイズに変身し、テーブルの端にちょこなんと横一列になって留まり、メシェ・イラーデはレオニスの膝の上に座らせることにした。

スペース的にギュウギュウのギッチギチな中で、ラウルがアップルパイやカスタードクリームパイ、一口ドーナツ、たまごボーロ、ぬるぬるドリンク等を出してはテーブルの上に置いていく。

そしてメシェ・イラーデ以外の全員で「いッただッきまーーーす!」の唱和をきちんとしてからおやつにありついた。

「はーーー……たくさん動いた後の甘いものって、本当に身に染みるよねぇー」

「全くだ。ラウル、ブラックコーヒーのおかわり頼めるか?」

「了解ー。マキシはカフェオレにするか?」

「あ、うん、僕もカフェオレもらえたら嬉しいな。ラウル、ありがとうね!」

「どういたしまして」

ライト達四人が美味しいおやつを堪能している横で、ウルス達八咫烏もたまごボーロの山盛りピラミッドを前にヒョイ、パク、ヒョイ、パクパクとものすごい勢いで食べている。

「このたまごボーロというものは、いつ食べても美味だな!」

「私は初めて食べますが、あなたの言う通りとても美味しいですねぇ♪」

「おお、これがムニンがいつも言っていたたまごボーロなるものか!どれどれ……(もくもく)……おお、確かにサクサクしてて美味いな!」

「でしょう? 私も人里でこれを食べた時、あまりの美味しさに衝撃を受けたもの!」

文鳥サイズに変身したウルス達、それはもう全員ご機嫌な様子でたまごボーロを頬張る。

このヴァイキング道場直伝のたまごボーロは、もともと道場飼育している六羽のカラス達のおやつとして作られたもの。ウルス達八咫烏の口にもガッツリ合うのである。

そしてレオニスの膝にいるメシェ・イラーデには、レオニスや横に座っているライトが時折一口ドーナツや小さく千切ったアップルパイなどを与えている。

それをもくもくと無言で食べるメシェ・イラーデだが、嫌がる素振りなど全くない。

それどころか、口の中のものを飲み込んだ後すぐにレオニスの袖を突ついておかわりを要求してくるあたり、かなりお気に召しているようだ。

そんな和やかなおやつタイムの中、レオニスがぽそりと呟いた。

「つーか、さすがにこれは手狭だよなぁ……」

「まぁねー。もともとこの家は、レオ兄ちゃんが森の警邏のために一人暮らし用に建てたものだし。できてもせいぜい、ぼくと二人暮らしするくらいまでだもんねぇ」

「そろそろ改築しなきゃならんかな?」

「えー、でも改築したところで、滅多にお客さん来なくない? てゆか、この家を壊しちゃうのは……ぼくは嫌だな」

おやつをもっしゃもっしゃと食べながら、カタポレンの家の改築について話し合うライト達。

確かに今のこの状況では、この家はかなり手狭だろう。そもそもこの家は、レオニスがカタポレンの森の警邏を任された時に建てた一人暮らし用の家なのだから。

そんな小さな家の小さな台所に、人の姿をした四人と四羽の八咫烏と小さな神竜が一頭も入ったら狭いどころの話ではない。

しかし、ここでこの家をすぐに改築するというのも性急な話ではある。

それにライトの言うことも尤もで、この家を改築したところで今日以降客が来るのか?と問われれば甚だ疑問である。

せめて月一くらいで、ちょくちょく来客が見込めるなら改築もアリだとは思うのだが。月一どころか年一の来客があるのかも怪しい現状では、二人が改築に悩むのも無理はない。

それに、ライトが最後の方でボソボソと呟いたように、ここはライトが生まれた時からレオニスと暮らし続けてきた家でもある。

ライトとレオニス、二人とも天涯孤独で血の繋がった家族はこの世に一人もいない。そんな血の繋がらない二人が、まるで本当の家族のようにこの家で長年過ごしてきた。

ライトにとって大事な思い出がたくさん詰まった家を、改築のために取り壊すことはしたくなかったのだ。

そんなことをライトとレオニスが話していると、そこにラウルが入ってきた。

「そしたら外にもう一つ、ログハウスを作るか?」

「……ああ、それいいね!畑の横に、別荘みたいな感じでログハウスを新しく建てておけば、こうしてたくさんのお客さんが来た時におもてなししたり、泊まっていってもらえるもんね!」

ラウルが出してくれた斬新な案に、ライトが破顔しつつ大賛成している。

ラウルが言うように、カタポレンの家の別荘としてログハウスを新築すれば、この家を改築する必要は全くなくなる。

ライトも大賛成なこの案に、レオニスも顎に手を当てながらラウルに問うた。

「ラウルが持っているログハウスキット、だっけ? あと一組あるってのは覚えているが、最後の一つをここに使ってもらってもいいのか?」

「もちろん。というか、どの道メシェ・イラーデの寝床確保のために、また新しく木を切って土地を切り拓かなきゃならんだろう? そこでまたログハウスキット一棟分以上の丸太が出るだろうから、俺としては全く問題ない」

「ぉ、ぉぅ、そうか……ま、確かにそうだな」

レオニスの確認に、ラウルは涼しい顔で事も無げに答える。

実際レオニス達は、今日新たに迎え入れた皇竜メシェ・イラーデのためにこれから畑の横の森林を開拓しなければならない。

皇竜の本来の姿がどれ程の大きさか、数字的なデータが全くないしぶっちゃけライト達には想像もつかないのだが。

それでも邪皇竜メシェ・イラーザと同等の大きさと仮定して考えると、あの巨躯がゆったりと過ごせる広さとなると、天空島丸々一つ分くらいは開拓しなければならないだろう。

そうなった時に、また切り倒した木を丸太にすれば、ラウルが言うようにログハウスキットを作ることができる。

いや、ログハウスの一つどころか二つか三つ分くらいは新たに作れてしまうかもしれない。

ラウルのそうした損得勘定の素早さに、レオニスは内心で舌を巻きながらも頷いていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうして皆でゆったりとしたひと時を過ごした後。

レオニスがウルスに向かって話しかけた。

「……さて、おやつもたらふく食ったことだし。ウルス、日が暮れる前に八咫烏の里に帰るか?」

「ンキョ? あ、ああ、そうですな。邪竜の島の討滅戦にも参加できたことですし、私もアラエル達とともに我が里に戻ることにしましょう」

レオニスの問いかけに、たまごボーロをたらふく食べてテーブルの上で寛いでいたウルスが途端にしゃんと姿勢を正して答える。

もともとウルスはケリオンとともに人里見学に来ていて、その最後に邪竜の島討滅戦に参戦することを望んでいた。

その念願が全て叶った今、ウルスが人里に留まる理由はない。

昨夜の邪竜の島討滅戦のことを大神樹ユグドラシアにも報告したいし、ここは妻アラエル達とともに八咫烏の里に帰宅するのが最善である。

そしてレオニスは、ウルスに続きマキシにも声をかける。

「そしたらマキシ、お前も八咫烏の里に里帰りするか? アイギスは日曜日まで休みなんだろう?」

「え? あ、はい、確かにアイギスは日曜日までお休みですが……」

レオニスの突然の問いかけに、マキシは戸惑いながらも肯定する。

マキシが勤めるアイギスは、アクシーディア公国生誕祭中は休業するのが常だ。

しかも今年の公国生誕祭は、水曜日から金曜日の開催。それに続く土日も休む店は結構多い。

そしてアイギスもその例に漏れず、水曜日から日曜日までの五連休となっているのだ。

その話を聞いたウルス達が、明るい顔でマキシに話しかける。

「おお、マキシの仕事も休みなのか?」

「それはいいわね!マキシ、せっかくだから私達といっしょに帰郷しましょう!」

「もちろんずっと帰って来いなんてことは言わないわ。一日だけでもいいから、久しぶりに家族皆で過ごしましょう?」

「そうだぞ、マキシ。今日帰ってまた明日人里に戻ってもいいんだ。それに、シア様もお前の帰りを心から待っておられる」

マキシの帰郷を心から望むウルス達。

それはまるで、失われた家族の絆を少しでも取り戻そうとしているかのようだ。

マキシとしても、家族を憎んで出奔した訳ではないし、むしろ今でも家族皆のことは大好きだ。

大好きな家族達の願いに、マキシはずっと心が揺れていた。

そんなマキシの背中を押すように、ラウルが話に入ってきた。

「よし、そしたらウルス達にたまごボーロや唐揚げを土産に持たせてやろう。少し待ってな」

「……ありがとう、ラウル!父様、母様、お土産も持たせてもらえるなんて、良かったですね!」

ラウルのさり気ない後押しに、マキシが破顔しつつウルス達の顔を見た。

そんなマキシに、ウルス達が嬉しそうに話す。

「ああ。ラウル殿の土産ももちろんありがたいが……マキシがラウル殿やレオニス殿、そしてライト殿のような素晴らしい友人達に恵まれたことが、一番ありがたいと思う」

「ええ、父さんの言う通りね。マキシ、私も貴方が素晴らしい友人達と出会えたことに、本当に心から感謝しているわ」

「良き友は一生の宝。この得難き縁を大事にな」

「マキシ、里に帰ったらたくさんの土産話を期待してるわね!」

マキシの帰郷を望む以上に、マキシのこれからの人生ならぬ烏生を祝福してくれる家族達。

いつの間にかマキシの肩に留まったりテーブルの真ん前に来たりして、四羽でマキシを取り囲んでいる。

そんな家族達に、マキシも自然と頬が緩むのだった。