軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1207話 慰労会 in 畑の島

天空樹の島で、のんびりとしたひと時を過ごしたライト達。

時刻もちょうど正午を過ぎたあたりで、畑の島に移動することにした。

「エルちゃん、ドライアド達、またな」

『『『まッたねーーー!』』』

『皆も地上に戻ったら、ゆっくり身体を休めてくださいね』

「また皆で遊びに来ますね!」

それぞれに挨拶をした後、三人はユグドラエルの真上に飛んだ。

そして、ユグドラエルの豊かな緑の茂みでうたた寝している二羽の神鶏にそっと声をかけた。

「ヴィーちゃん、グリンちゃん、ぼく達今から畑の島で野菜焼きのバーベキューをするんだけど。ヴィーちゃん達もお野菜食べに来る?」

『『コケッ!?』』

ライトの甘い囁きに、それまで目を閉じてうつらうつらしていた神鶏達の目がクワッ!と大きく開かれる。

そして二羽はライトを見つめてコクコクコクコク、と激しく頷く。

美味しい野菜が食べられるお誘いであることを、二羽ともきちんと理解しているようだ。

うたた寝から一点、シャキッ!と目を覚ましたヴィゾーヴニルとグリンカムビ。

そんな二羽に、レオニスが声をかける。

「そしたら、せっかくだからヴィーちゃん達の背中に乗せてもらってもいいか?」

『クエッ!』

『クアッ!』

「おう、ありがとうな!」

レオニスの問いかけに、威勢よく返事をする神鶏達。

その表情はとても明るく否定的な様子は一切ないことから、レオニスは二羽とも承諾してくれたと判断した。

そしてヴィゾーヴニルにライトとレオニス、グリンカムビにラウルがそれぞれ乗り込み、人族二人と妖精一人を背に乗せた神鶏達がふわり、とユグドラエルの樹上から飛び立つ。

『クエエエエッ!』

『コケケココッ!』

ヴィゾーヴニルとグリンカムビは高らかな鳴き声を発しながら、畑の島に向かって飛んでいった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

それから程なくして、ライト達は畑の島に着いた。

畑では相変わらずパラスが水遣りをしていたが、パラス以外にも何人かの天使達が加わっていた。草臥れ果てて泥のように寝ていた天使達も、次第に起きてきているらしい。

二羽の神鶏が飛来したことに、パラスがいち早く駆けつけてきて声をかけた。

「ヴィー様、グリン様、もうお目覚めになられましたか!」

『クルクアッ!』

『コケッケコ!』

「ほほう、レオニス達から野菜をご馳走してもらうのですか!それは良うございましたな!」

神鶏達と普通に会話をするパラス。

どうやらパラスは、神鶏達の言葉が全て理解できるようだ。

そして神鶏達の背中から下りてきたライト達に、早速パラスが話しかけてきた。

「レオニス、今からヴィー様達に地上の野菜を振る舞うのか?」

「ああ、ちょうど昼飯時だしな。パラス達も野菜焼きのバーベキューするか?」

「もちろん!」

レオニスの魅惑的な誘いに、パラスは躊躇うことなく即答する。

そして畑の水遣りをしていた他の天使達達に向かって、大きな声で呼びかけた。

「お前達!今からレオニス達が我らに、野菜焼きのバーベキューをご馳走してくれるとのことだ!今すぐ女王様方をこちらにお連れしろ!そしてまだ宿舎で寝ている者達にも、このことを伝えるんだ!」

「「「はいッ!」」」

パラスの号令に他の天使達が即座に反応し、一斉に動き始めた。

ある者は神殿の島に、ある者は畑の島内にある宿舎に、それぞれ飛んでいく。

キビキビと動く天使達の姿に、ライト達は感嘆を禁じ得ない。さすがは日々鍛錬に励む天空島警備隊、その精鋭達である。

パラス達が人集めに勤しんでいる間に、ライト達も手分けして各自準備を始める。

ライトはログハウス二階でまだ寝ているマキシ達八咫烏を起こしに行き、レオニスはラウルから預かったバーベキュー道具を組み立てたり、殻用焼却炉で炭に着火したりしている。

ラウルは空間魔法陣から大きな調理台を出し、包丁やまな板、ボウルやザル、取皿などを用意していた。

そうこうしているうちに、ライトがマキシ達八咫烏を連れてきた。

マキシのみ人化の姿で出てきて、他の八咫烏達はそのままの黒いカラスの姿である。

「レオニスさん、こんにちは!ラウルももうお仕事してるんだね!」

「おお、マキシ、ゆっくり眠れたか?」

「たくさん寝たおかげで、疲れもありません!」

「そっか、そりゃ良かった」

レオニスやラウルに元気よく挨拶をするマキシ。

その後ろで、ウルス達が恥ずかしそうに飛んできた。

「いやはや、ライト殿に起こされるまで寝てしまうとは……全く以ってお恥ずかしい限りで」

「ンなこたぁねぇさ、ウルス達だって昨日頑張ってくれたし」

「もうお昼になってたなんて……フギン、ムニン、私達も皆さんのお手伝いをするわよ!」

「「はい!」」

アラエルの鶴の一声に、フギンとムニンも人化の術で人の姿になっていく。

そうしてアラエルはクレア似の美魔女風淑女、フギンは細めのミニチュアラキ、ムニンはコルセア似の麗人になった。

そう、素の八咫烏の姿のままでは何も手伝いができないため、手足がある人の姿を取ったのだ。

いや、それを言ったら未だ人化の術を会得しきれていないウルスの立場がないのだが。とりあえずウルスには神鶏達のもとにいてもらって、鳥類同士?で話し相手として仲を深めてもらうことにする。

「おお、皆人化の術がだいぶ上達したようだな」

「ええ、皆暇を見ては人化の術の鍛錬に勤しんでましたからね」

「努力の甲斐あって、今では朝から晩まで人の姿を維持できるようになりました」

「そりゃすげーな!」

「これならまたいつでもうちに遊びに来てもらえるね!マキシ君、良かったね!」

「はい、ありがとうございます!」

アラエル達の人化の術を見たライト達が、心から感心している。

アラエルは人里見学の際に体験したスタンプラリー、その時に見た行き交う人々の中で女性達が着ていた普段着的な上着やスカートを再現している。

フギンやムニンも、各自人里で見た『華美ではない、動きやすそうな服』を模した格好に変身していた。

そして人化したアラエル、フギン、ムニン達は、ラウルが出した神鶏達用の野菜の下準備を担当することになった。

レオニスやラウルの背丈を上回る巨大なトウモロコシや、そのトウモロコシをはるかに凌ぐ巨大なサツマイモ、白菜、トマトなどが山とあり、その全てが神鶏達へのご褒美としてラウルの空間魔法陣から次々と出てくる。

「マキシ達は、これをヴィーちゃん達用に食べやすくしてやってくれ」

「分かった!母様、フギン兄様、ムニン姉様、まずは僕が手本をお見せしますので、それを見て同じようにしてください」

「分かったわ!」

ラウルからの指示にマキシが快く応じ、マキシがアラエル達に巨大野菜の下拵えを伝授していく。

トウモロコシは皮やヒゲを丁寧に取り除き、四つ切りにカット。サツマイモは細かい髭根を丁寧に抜き取り、こちらも五つか六つくらいの一口サイズにカット。

白菜は葉を一枚一枚剥ぎ取り、トマトはヘタをくり抜いておく。

それらの作業を、マキシとともにアラエル達三羽は慣れない手つきながらも懸命にこなしていた。

神鶏二羽の前に、ラウルが丹精込めて作ったカタポレン産野菜がどんどん山積みになっていく。

ご馳走を目の前にしながら、じっと我慢するヴィゾーヴニルとグリンカムビ。その目はキラッキラに輝きながら極限まで開き、嘴の端からはヨダレがダラダラと垂れている。

何故神鶏達がこんなにも我慢しているかというと、二人の女王達がまだ来ていないからだ。

ヴィゾーヴニルもグリンカムビも、曲がりなりにも神殿守護神。天空神殿と雷光神殿をともに守護する相棒の女王達抜きに、自分達だけが先にご馳走を食べることなどできないのである。

するとそこに、神鶏達が待ち望んだ二人の女王がようやく到着した。

二人の天使に連れられて、空中をゆったりと飛んでくる二人の女王。昼の明るい日差しに照らされて、いつにも増して輝きに満ちている。

ちなみに光の女王の腕には、皇竜メシェ・イラーデが抱っこされている。

これは、レオニスがピースをラグナロッツァに送り届ける際に、光の女王に一旦預かってもらっていたためだ。

光の女王の腕の中にいるメシェ・イラーデは起きていて、畑の島にたくさんの者達がいるのを物珍しそうに眺めていた。

『皆、こんにちは』

『今から皆で昨日の慰労会をするって聞いたわ!レオニス達もパラス達も、本当にご苦労さま!』

嫋かな光の女王に、快活な雷の女王。

二人とも挨拶をしながら周囲を労う。

そして女王達は、神鶏達の横に降り立った。

『まぁ、グリンちゃん、私達の到着を待っていてくれたの?』

『コケッ!』

『ヴィーちゃんの大好きなお野菜、こんなにたくさんもらえて良かったわね!』

『ケコッ!』

神鶏達の横に立ち、その羽根を優しく撫でる女王達。

その様子を見たラウルが、神鶏達に向かって声をかけた。

「ヴィーちゃん、グリンちゃん、先に食べててくれていいぞー」

『『コケァッ!』』

ラウルの言葉をきっかけに、神鶏達が一斉にカタポレン産巨大野菜を啄んだ。

ヴィゾーヴニルとグリンカムビが巨大野菜を美味しそうに食べる様子を、二人の女王だけでなくマキシ達八咫烏もまた微笑みつつ見守っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうこうしているうちに、十台に増設したバーベキュー台の準備が完了し、天使達があちこちで野菜を焼き始めた。

トウモロコシ、じゃがいも、ピーマン、キャベツ、アスパラガス、ニンジンやパプリカ、様々な野菜が焼ける炭火の香ばしい匂いが辺り一面に漂う。

そして箸休め用の生野菜としてトマトとキュウリのサラダもあり、皆思い思いの楽しみ方で野菜オンリーのバーベキュー楽しんでいた。

「ラウル先生のお野菜は、相変わらず美味しいですね!」

「パラス隊長、今度はこのトマトを宿舎横に植えましょう!」

「いやいや、このアスパラガスが先では!?」

「ならば、全ての野菜を植えられるよう宿舎横の畑をもう少し広くしましょう!」

色とりどりの野菜を焼いては、美味しそうに食べる天使達。

基本仲睦まじく、時には植える野菜の種類で喧々諤々議論を交わしたり。姦しくも楽しそうにお喋りする彼女達の笑顔は、実に明るく眩しい。

彼女達も昨晩は満身創痍だったが、決戦直前まで光の女王やアラエル達にちゃんと治癒してもらえたおかげで、一晩経った今ではすっかり元気を取り戻していた。

ライト達も二人の女王を呼び寄せ、皆で野菜焼きのバーベキューを楽しんでいる。

光の女王が抱っこしていたメシェ・イラーデは、ひとまずバーベキュー台の横に出した椅子の上に座らせた。

そしてライトやマキシが、焼き上がった野菜を皿に取っては風魔法で覚まし、それをメシェ・イラーデに食べさせるなど甲斐甲斐しく世話をしている。

『これは……何ぞ?』

「これはですね、じゃがいもという野菜です!」

『……(もくもく)……おお、何かよく分からぬが……極上の魔力にも似た美味さを感じる』

「こちらのニンジンも美味しいですよ!」

『どれどれ……(もくもく)……確かにこれも美味しいの』

「野菜はたくさんあるので、お腹いっぱいになるまで食べてくださいね!」

メシェ・イラーデが身体を取り戻してから初めて食べる食事、ラウル謹製カタポレン産野菜に舌鼓を打つ。

皇竜にとっても、カタポレン産野菜は美味しく感じるらしい。

この朗報に機嫌を良くしたライトとマキシ、さらに張り切って一生懸命野菜を焼いてはメシェ・イラーデに与え続けている。

一方でラウルは、その輪から抜け出してはちょくちょくカット野菜入りのボウルを補充していた。

だがそれも、天使達の「ラウル先生もゆっくり食べてください!」「野菜は私達の方でも切り分けられますから!」というありがたい言葉により、ライト達とゆっくり食べられるようになった。

「おおー……ラウルが作る野菜、前から美味かったが今日のは何だかさらに美味いな!」

「お褒めに与り光栄だ。前にイアのところで魚の骨をもらってきたんだが、これを肥料に使い始めてから野菜の味がさらに良くなった気がする」

「そうなの!? もしかしたら、魚の骨から良いお出汁でも出てるのかな!?」

「そうかもしれんな」

ライト達のバーベキュー台でも、賑やかで楽しい会話が繰り広げられている。

以前海樹ユグドライアのところで、ユグドラツィを救った褒美としてラウルが巨大な魚の骨をもらってきたことがあった。

ラウルが言うには、その魚の骨を肥料に混ぜてからさらに野菜の味が向上したという。

確かにライトが言うように、魚の骨から美味しい出汁が取れるというのは料理の常識である。

だがしかし、果たして魚の骨の出汁が農産物の味にまで影響を与えるものなのだろうか?

そこら辺全く分からないが、野菜栽培を担当するラウルがそう言うのだから、それは間違いなく真実なのだろう。

「そしたらまたイアさんのところで、魚の骨をたくさんもらえたらいいね!」

「だな。今度また皆でイアのところに遊びに行きがてら、魚の骨ももらってくるか」

「賛成ー!」

嬉しそうに話すライトの言葉に、レオニスも頷きながら同意する。

ラギロア島界隈の男人魚達が拾ってきて、特に使い道もないまま長らく放置されていた魚の骨が、こんなところで役に立つとは。思いもよらぬ効果に、ラウル他皆ホクホク顔である。

ユグドライアや男人魚達がその話を聞けば、きっと喜ぶことだろう。

いや、もしかしたら今この瞬間も、ライト達が身に着けているユグドライアの分体入り装飾品を通じてこの光景を見聞きしているかもしれない。

きっと今頃ラギロア島の向こうで、ユグドライアが『おい、マシュー!今から近くの海に転がってる魚の骨を全部掻き集めてこい!』とか、周りの男人魚達に命令しているような気がする。

今この瞬間だけ見ていたら、昨日の激闘が嘘のような平和な光景。

一足先に真の平和を享受したユグドラエルやドライアド達に続き、二人の女王や天使達、そして二羽の神鶏達もこの穏やかな時の流れを喜びとともに噛みしめていた。