軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1183話 レオニス達の到着

ライトとラウルがユグドラエルへの水遣りを再開してしばらくした頃。

ドライアド達約五十人が美女モードになって手を繋ぎ、輪になってユグドラエルを取り囲んだ。

さすがに本体の幼女モード、体長約15cmの本体のままではユグドラエルを取り囲むのは到底無理だということにドライアド達も気づいたらしい。

祈るように目を閉じながら、ユグドラエルを囲む第一陣のドライアド達。

彼女達の身体から、ほんのりとした淡い光が発している。

その光はユグドラエルの幹を優しく包み込んでいく。

第一陣以外の残りの約百人は、第二陣、第三陣として五十人づつに分かれてユグドラエルの根元で待機している。

ライトのアドバイス通り、三交代制で挑むようだ。

ドライアド達の優しい光、その心地良い温かさにしばしうっとりとしていたユグドラエル。

しかし、ハッ!としたようにユグドラエルの枝葉がザワッ、と揺れ動いた。

『ライト、ラウル!今シアから伝言が来ました、マキシ他総勢五羽の八咫烏がここに来るそうです!』

「マキシ君達が来てくれるんですか!?」

ユグドラエルの言葉に驚く間もなく、転移門からマキシ達が現れた。

八咫烏の里から移動してきたのは、ユグドラエルの言っていたように五羽。マキシ、ウルス、アラエル、フギン、ムニンである。

マキシ達は転移門からすぐに飛び出し、空を飛んだままの姿勢でユグドラエルに向かって声をかけた。

「ユグドラエル様、お初にお目にかかります。我が名はウルス、シア様のもとにてシア様をお守りする八咫烏が一族の族長にて、以後お見知りおきを」

『ウルス、よく来てくれました。私は天空樹ユグドラエル、我が妹シアの愛し子達に会うことができて、とても嬉しいです』

「光栄至極に存じます」

空を飛びながら頭を垂れ、八咫烏一族を代表してユグドラエルに挨拶をするウルス。

互いに名乗り、一通り挨拶を終えるとウルスが頭を上げて話し始めた。

「本当なら、我が妻や我が子達の紹介をしがてら、もっとゆっくりお話ししたいところですが……今はそんな猶予もございません。また後ほど、事が無事終わりましたら改めてご挨拶させていただきたく」

『そうですね……今も光の女王や雷の女王、神鶏に天使達が頑張ってくれています。どうかウルス達の力を、私達に貸してください』

「もちろんですとも!我らはそのためにここに馳せ参じたのですから!」

『ありがとう……恩に着ます』

ウルスとユグドラエルが話していると、ここで再びユグドラエルの枝葉がざわついた。

『!!今、ラグスからも伝言が来ました!レオニスとピース、そして竜騎士なる者達が三十騎、ここに来るそうです!』

「「「!!!」」」

ユグドラエルのもとに届いた、竜王樹ユグドラグスからの伝言。

それをユグドラエルが皆に伝えたその瞬間、三体の飛竜が現れた。

その飛竜は人を乗せる鞍を着けていて、一体につき一人の人族が乗っている。

竜騎士達は周囲に目もくれず、即時上空に飛び出していく。

そして上空で最も明るく光っている場所、雷の女王やヴィゾーヴニル、天使達が戦っている場所に飛んでいった。

その後息つく間もなく、飛竜に乗った竜騎士が続々と現れては次々と空に飛び立っていく。

九組の竜騎士達が飛び立った後、最後の十組目の中にレオニスとピースもいた。

ディランの飛竜から飛び降りたレオニス、すぐにユグドラエルに声をかけた。

「エルちゃん!来るのが遅くなってすまん!ライトやラウルはもうこっちに来てるか!?」

『ええ、そこにいますよ。ずっと私に美味しいお水を飲ませてくれて、とても助かっています』

ユグドラエルの答えに、キョロキョロと周囲を見回すレオニス。

そこにすかさずライト達が駆け寄ってきた。

「レオ兄ちゃん、ピィちゃん!竜騎士さん達も連れてきたんだね!」

「ご主人様、遅かったじゃねーか」

「すまん、ピースだけでなく竜騎士達も戦力に加えるために寄り道したら、結構時間食っちまった」

「より多くの戦力が集められたなら、それに越したこたないさ」

一番遅れて到着したレオニスとライト達が話している間に、竜騎士団団長のディランが竜騎士を代表してユグドラエルに声をかける。

「原初の神樹、天空樹ユグドラエル殿とお見受けいたす。私はディラン・チェステ、アクシーディア公国竜騎士団団長を務めております」

『ディラン、ですね。貴方の察する通り、私は天空樹ユグドラエル。此度は私達のために、こんな真夜中に駆けつけて来てくれて本当にありがとう』

「何の、お気になさらず。もとより我らも邪竜の島の討滅戦に参戦する予定でしたし」

『そう言ってもらえると助かります』

ディランとユグドラエルが挨拶を終えると、レオニスが改めてユグドラエルに声をかけた。

「とりあえず、俺達人族が掻き集められる戦力はこんなところだ。全員揃ったところで、まずは現状を確認したい。エルちゃん、今天空島がどういう状況になっているか、聞かせてもらえるか?」

『もちろんです』

レオニスの要請に、ユグドラエルが状況説明をし始めた。

『今邪竜の群れと戦っているのは、雷の女王とヴィゾーヴニル、パラス達天使、そしてラグスが遣わしてくれた白銀や竜族達も加勢してくれています。光の女王は天空神殿のある島で、グリンカムビとともに結界を張りながら天使達の浄化に務めています』

「邪竜相手だから、定期的な浄化が必要ってことなのか?」

『ええ……邪竜の群れが発する瘴気の濃さが尋常ではなく、天使達も迂闊に近寄ればあっという間に瘴気に冒されて体調を崩してしまうのです』

「そんなにか……」

邪竜の瘴気が尋常ではない濃さと聞き、レオニスの顔が曇る。

瘴気による体調不良は、エクスポーションなどの体力回復アイテムだけでは治しきれない。浄化の効果を持つ治癒魔法などが必要になってくるのだ。

するとここで、ウルスがレオニスに声をかける。

「レオニス殿、邪竜と相対するということで我が妻アラエルも連れてきました。我が妻アラエルは、何より浄化が得意でしてな。浄化が必要な場所で、必ずやお役に立てましょう」

「おお、そうか、そりゃありがたい!そしたらアラエルには神殿の島に行ってもらって、光の女王の浄化作業を手伝ってやってくれ」

「分かりました!」

ウルスの申し出をありがたく受けるレオニス。

しかし、アラエル一羽だけで神殿の島に行かせるのは、若干不安が残る。彼女一人だけでは、彼女自身の回復が望めないからだ。

そのことに真っ先に思い至ったレオニスが、マキシに声をかける。

「そしたらマキシ、お前も母ちゃんについていってやってくれるか?」

「もちろんです!僕は母様のもとで、何をすればいいですか?」

「お前には、浄化魔法をかけまくる母ちゃんを支えてもらいたい。今からエクスポーションやアークエーテルを渡しておくから、母ちゃんに適宜飲ませてやってくれ」

「分かりました!母様、僕もお供しますからご安心ください!」

「ありがとう、マキシが傍にいてくれたらとても心強いわ!」

レオニスの案に、一も二もなく承諾するマキシとアラエル。

そしてレオニスとマキシが同時に空間魔法陣を開き、レオニスが回復剤を取り出してはマキシの空間魔法陣にポイポイ、ポイー、と無造作に放り込み続ける。

その間二人は「回復剤が足りなくなったら、ライトかラウルに譲ってもらえ」「分かりました!」などと会話をしている。

エクスポーションとアークエーテル、各百本づつくらいをレオニスから譲渡されたマキシ。

二羽は早速転移門で神殿の島に移動していった。

そしてレオニスが改めてユグドラエルに話しかける。

「神殿の島は光の女王が防衛してるのは分かった。他の島の防衛はどうなってる?」

『神殿の島以外は全て私が結界を張っています』

「え、この島だけじゃなくてか? 他の島も、エルちゃんが全部結界を張ってんのか?」

『ええ』

「そりゃさすがにキツくねぇか?」

ユグドラエルの話を聞いたレオニスが、かなり心配そうに尋ねる。

先程のライトと全く同じ反応に、ユグドラエルが小さく笑いながら答える。

『ライトも先程そう言って、私にツェリザークの雪解け水のブレンド水やアクアの泉の水を飲ませてくれていたんですよ。おかげで私の疲労はほとんどなくなりました』

「そ、そうか、ならいいが……そしたらこの先も、天空島の防衛結界はエルちゃんに任せていいか?」

『もちろんです。今の私には、ライトやラウルだけでなくドライアド達の応援もありますからね。今の私は無敵ですよ?』

「そりゃ頼もしい。エルちゃんに任せておけば安心だな!」

ユグドラエルの実に頼もしい言葉に、レオニスも思わず破顔する。

天空島の防衛をユグドラエルに任せておけるなら、レオニスを始めとして他の者達は戦闘や負傷者の回復に専念できる。

これ程心強いことはない。

これに気を良くしたレオニス、今度はウルス達に声をかける。

「そしたらウルスとフギン、ムニンはこのエルちゃんのいる島と神殿の島を中心に巡回して見張っててくれ。雷の女王達が撃ち漏らした小さめの邪竜なら、あんた達の雷魔法だけでも撃ち落とせると思う。ただし、もし万が一大きな邪竜が近づいてきたら、その時は無理せず結界内に避難してやり過ごせ」

「「「分かりました!」」」

レオニスの指示に、ウルス達も即時承諾する。

レオニスが彼らに頼んだのは、邪竜の群れからはぐれた邪竜の始末。ただし、小さめの邪竜ならウルス達でも対処できるだろうが、白銀の君や神鶏並みの体格を誇る巨大な邪竜相手には通じないだろう。

そのことをウルス達も理解しているので、レオニスの指示に素直に従うのだ。

ウルスとフギン、ムニンが使命を果たすべく、上空に向かって飛んでいく。

そしてレオニスは、次にラウルに向かって話しかけた。

「そしたらラウル、お前はどうする?」

「とりあえずは、まだここでエルちゃんに水遣りしたり天使達の治療の手助けをしたい。もしご主人様達の方で、どうしてももっと戦力が要るとなったら、その時は遠慮なく呼んでくれ。俺も戦いに出る」

「分かった。ラウルは引き続きここで、ライトといっしょに防衛維持に務めてくれ」

「了解」

ラウルの今後の行動も決まり、後はレオニスも戦いに出るだけだ。

するとここで、レオニスがライトの前に立ち、その手をライトの両肩に置いた。

「ライト、お前にまでこんな危険な場所に付き合わせてしまってすまん」

「そんなことないよ!エルちゃんや天空島の皆は、ぼくの友達だもん!」

「……そうだな。友達を助けるためだもんな」

「うん!ここはぼくとラウルに任せて、レオ兄ちゃんは邪竜を一匹残らず退治してね!」

「おう、任せとけ」

子供であるライトを戦場に連れてきてしまったことに、レオニスの中で全く罪悪感や後悔の類いがないと言えば大嘘になる。

だからこそライトにも謝ったのだが、当のライトは全く意に介すことなく受け入れている。

そんな頼もしいライトの言葉に、レオニスも微笑みながら安堵する。

友や仲間のために惜しみなく尽力するライトは、レオニスが尊敬して止まないグランの姿そのものだった。

そしてレオニスは、ピースとディランに向かって声をかけた。

「よし、そしたら俺達も邪竜どもをブッ潰しに行くか」

「うん!まずは敵陣にどれ程の邪竜がいるかを見ないとね、作戦の立てようがないからね!」

「では私はひとまず他の竜騎士達と合流します。竜騎士達の休憩場所や負傷者の治療場所も確保したいのですが、私はどこを拠点にすればいいですかね?」

「おお、そういやそうだな。そこら辺も決めとかなきゃならんか」

ディランの質問に、レオニスもはたとした顔で考え込む。

するとそこに、ユグドラエルが会話に入ってきた。

『ディラン、竜騎士達もここで休ませなさい。飛竜が休む場所くらいいくらでもありますし、怪我をした者達の治療も天使達やライト、ラウルが治してくれますよ』

「おお、それはありがたい!ここは天空樹のお言葉に甘えさせていただきましょう」

『でしたら、白銀達にも伝えていただけますか? 戦いに疲れて休みを取ったり、怪我をした竜族達もユグドラエルのもとに来るよう私が言っていた、と』

「承知いたしました。白銀殿にも確とお伝えいたしましょう」

ユグドラエルの提案に、ディランがパァッ!と明るい顔で頷きながら頭を下げる。

実際ユグドラエルの周囲は、その枝葉が伸びている範囲の下は平地でかなり広大な面積だ。

この広さなら、飛竜や竜族の百や二百押し寄せても余裕で受け入れられるだろう。

これで今決めるべき方針は固まった。以後は臨機応変に対応していけばよい。

レオニスがふわり……と宙に浮き、ライト達に声をかけた。

「じゃ、俺もいってくるわ」

「レオ兄ちゃん、気をつけてね!ピィちゃんも頑張ってね!」

「ご主人様も頑張れよ、俺達もこっちで頑張るから」

『レオニス、貴方も疲れたらここに休みに来てくださいね』

ライト達の励ましの言葉に、レオニスが右手を上げながら応える。箒に乗ったピースも「ライっち、ありがとね!」と言いながら右手を大きく振る。

そして、レオニスやピースとほぼ同時に宙に浮き始めたディラン達三人の竜騎士とともに、戦場に向かって一直線に飛んでいった。