軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1181話 ユグドラエルの奮闘

ライトが鋼鉄竜と、ラウルが氷牙竜とともにシュマルリから天空島に移動した。

そしてライト達は、天空島に到着後すぐに中位ドラゴン達の一団を転移門の魔法陣の外に誘導する。いつ誰が転移門を使ってここに移動してきてもいいよう、魔法陣をなるべく空けておかねばならないからだ。

ラウルが隙をみて上空に飛んでみると、はるか遠くに光っている場所がある。

よく見ると多数の雷が発していることから、どうやらそこでは雷の女王と雷光神殿守護神のヴィゾーヴニルが邪竜相手に戦闘中のようだ。

その後程なくして白銀の君が転移してきて、ライト達と合流した。

そしてユグドラエルの前に立ち、改めてユグドラエルの姿を見る。

ユグドラエルの幹、そのあちこちに多数のドライアド達が震えながら必死にしがみついている。

もともとドライアド達はユグドラエルのいる島に住んでいたが、今回の邪竜の群れの襲撃が余程恐ろしいようだ。

いつもの平時なら、ドライアド達はラウルを見ただけで『あッ、ラウルだー!』『マカロンのお兄さんー!』『キャー、遊ぼ遊ぼーーー!』とか言いながら、ラウルのあちこちにくっついてくるのに。

ラウルが竜族達とともに援軍に駆けつけたことにも、気づく余裕すら全くないのだ。

そんなドライアド達の様子を心配しつつ、ライト達は顔を真上に上げてユグドラエルに声をかけた。

「エルちゃん、来るのが遅くなってごめんなさい」

『ライト、ラウル、白銀……よく来てくれましたね。こんな時でもてなしもできず、すみません……』

「エルちゃん、何言ってんだ!俺達はエルちゃんや天空島の皆の力になりたくてここに来たんだ!」

『ありがとう、ラウル……』

『エルちゃん様、私達にできることがあったら何なりとお申し付けください……遠いシュマルリの地で、エルちゃん様の無事を願う我が君に代わり、私共が不埒な邪竜どもを成敗してご覧に入れましょう!』

『白銀もありがとう……』

ライト達の励ましの言葉に、ユグドラエルも言葉少なに礼を言う。

しかしその声音は、いつものような元気さや張りがない。それはライト達の励ましに感激して言葉が詰まっている訳でもないようだ。

覇気のないユグドラエルに、ライトが心配そうに話しかける。

「エルちゃん、どこか具合が悪いんですか? 邪竜に枝を折られたり傷つけられたりしたんですか?」

『いいえ、それはありません。神殿がある島以外の天空島は、全て私が結界を張って守っていますから』

「そうなんですね……って、え? 神殿の島以外の全部の島に結界を張ってるんですか!?」

ユグドラエルが事も無げに話したことに、ライトだけでなくラウルや白銀の君も目を丸くして驚いている。

この天空島における主な島は三つ、ユグドラエルのいる島と二人の属性の女王が住む神殿がある島と、天使達が住む旧鍛錬島(現:畑の島)。

だが、この三つ以外にも周辺にいくつかの島がある。

これらを邪竜に占領されないよう、ユグドラエルは他の無人の島にも全て結界を張っていたのだ。

「エルちゃん……そんなにたくさんの結界を張っていたら、いくらエルちゃんでもかなり疲れてきているのでは?」

『全く疲れていない、と言えば嘘になりますが……まだ大丈夫ですよ。こうして皆も駆けつけてきてくれましたし……』

心配そうに尋ねるライトの問いかけに、嘘がつけないユグドラエルは正直な所感を漏らす。

しかし、いくらユグドラエル自身が大丈夫だと言っていても、ライト達にしてみたらかなり心配だ。

如何にユグドラエルが原初の神樹にして高魔力持ちであろうとも、大小複数の島全てに結界を張るなど無謀としか思えない。

ユグドラエルも相当魔力を消費しているのは事実で、その疲れが先程の声音にも表れていたのだ。

「エルちゃん、そしたら魔力補給をしましょう!」

『魔力、補給……ですか?』

「ラウル、ぼくがここにバケツを出すから、ツェリザークの雪解け水があったらバケツに入れて。そこにアークエーテルとかの魔力回復剤を混ぜて、エルちゃんに飲んでもらおう」

「おお、そりゃいいな!俺も手持ちのバケツを出そう」

ライトの提案に、ラウルが大いに頷きながら早速空間魔法陣を開く。

そしてライトは間髪を置かずに白銀の君にも話しかけた。

「白銀さん、一つお願いがあるんですが、いいですか?」

『何ですか?』

「天空島の守備に回っているドラゴンさん達……鋼鉄さんより氷牙さんの方がいいかな。氷牙さん達に、アクアの泉の水を運んでもらいたいんです」

『アクアの泉、ですか……?』

ライトが竜族達に頼みたいのは『畑の島にあるアクアの泉の水をユグドラエルに飲ませたいから、アクアの泉の水をこの島までバケツで運んでほしい』ということだった。

確かにツェリザークの雪解け水も高魔力をたっぷりと含んでいるので、ユグドラエルの魔力補給に適しているのは間違いない。

だが、この天空島にはツェリザークの雪解け水に匹敵するくらいの高魔力で良質な水がある。そう、畑の島にあるアクアの泉の水だ。

このアクアの泉も天空島にあるのだ、折角ならば今この時にも活用させてもらおう!という訳である。

「アクアの泉というのは、水神であるアクアと水の女王が共同でこの島に作った新たな水場なんです。そのアクアの泉は、この島のすぐ横の別の島に作られているので、もし皆さんが良ければその泉の水をエルちゃんのために運んでほしいなぁ……という訳でなんですが」

『なるほど、分かりました。いいでしょう。今から氷牙竜達に下知しておきます』

「ありがとうございます!」

白銀の君から快諾を得られたことに、ライトが思わず満面の笑みで喜ぶ。

ライトが氷牙竜達に直接頼んでみてもいいが、ここは彼らの直属上司である白銀の君から言い渡してもらえれば、竜族達も即時承諾するはずだ。

そして白銀の君がふわりと宙に浮き、改めてユグドラエルに声をかけた。

『エルちゃん様、私がここに留まっていても何の役にも立ちません……ですので、私は私の成すべきことをしてまいります』

『白銀も、本当にありがとう……この恩は、いつか必ず返します』

『恩などと!我が君が慕う姉君様をお助けするのは当然のことでございます故!では、いってまいります!』

『邪竜達は狡猾です。どうか気をつけて……』

白銀の君はユグドラエルに挨拶すると、バッサバッサと翼をはためかせながら敵地に向かっていった。