軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1159話 公国生誕祭の予定

ライトの三学期初の土日が無事終わり、週明けの月曜日。

この日のラグーン学園は、いつにもましてどこも賑やかだった。

それもそのはず、二日後の水曜日からアクシーディア公国生誕祭が始まるのだから。

公国生誕祭は、文字通りアクシーディアという大陸一の国家の誕生を祝う大行事。国を挙げての超盛大なお祝いなので、それに合わせて子供達の通学も公国生誕祭期間中は公休扱いとなって休みになる。

つまり今週のラグーン学園登校は月曜日と火曜日だけで、水曜日から次の日曜日まで何と五連休になるのだ。

これには子供達も大いに浮かれまくるというものである。

そしてライトのクラス、二年A組の教室も朝から公国生誕祭の話題で持ちきりだ。

もちろんライトもその例に漏れず、仲良しのイヴリンやリリィ達と公国生誕祭の話をしていた。

「あー、明後日からの公国生誕祭、ホント楽しみー!」

「うん!リリィもまた皆といっしょに、今年もレインボースライムショーを観に行けるもんね!」

「リリィちゃん、本当に良かったですわ!」

「「「ねーーー♪」」」

キャッキャウフフなガールズトークを繰り広げる、イヴリンとリリィとハリエット。

三人の女の子達の花咲くような笑顔に、傍で聞いているライトとジョゼも自然と笑みが溢れる。

リリィはラグナロッツァきっての人気宿屋、向日葵亭の一人娘。公国生誕祭という国を挙げてのビッグイベント時ほど稼ぎ時なので、他の子供達のように祭りで遊んだり休んで楽しむことなど絶対にできない。

それは接客業やサービス業の宿命であり、繁盛すればするほど逃れられない運命。

だが、まだ幼いリリィに今から家業の全てを担わせるのは酷というもの。

父母のビリーとシルビィもそれは理解していて、ほんの数時間ではあるが公国生誕祭を友達とともに過ごす時間を設けてくれたのだ。

そしてその貴重な時間を、リリィは何をして過ごすのかと言えば。

去年の公国生誕祭の時と同じく『レインボースライムショー』を皆で観に行くことが、既に先週早々にライト達の間で決まっていた。

その日程は一月十七日の木曜日、建国記念日当日の午後となっている。

これはひとえにライトの都合によるもので、今年のレオニスの生誕祭の休みが三日目になっているためだ。

「去年のレインボースライムショーもすっごく楽しかったけど、今年はどんなショーになるのかな? チラシには『ますますパワーアップしたスライム達の活躍を、どうぞお楽しみに!』とか書いてあったけど……」

「何かチラシの絵には、レインボーの七匹どころか十色以上のスライムが描かれてたよね?」

「去年より、もっともっとカラフルなショーになるってことなのかな?」

「想像するだけで楽しそうだよね!」

三日後に控えた皆とのスライムショー鑑賞に、早くも全員が思いを馳せる。

去年皆で観に行ったレインボースライムショーも、それはもうとても楽しいひと時だった。

ライト達の目の前で繰り広げられるめくるめく展開に、ショーを見ている子供達全員が目も心も奪われた。あの時のワクワクした気持ちや思い出は、今でも鮮明に思い出せる。

その楽しいひと時が再びやってくるのだ、これはリリィでなくとも全員が心待ちにするのも当然である。

しかし、イヴリンとリリィの楽しみはそれだけではなかった。

「てゆか、レインボースライムショーもすっごく楽しみなんだけど。それ以上にラウルさんとマキシ君といっしょにお出かけできるってのが、もう今から楽しみで楽しみで!」

「ホントホント!あのアイドル二人とショーを観に行けるなんて……夢みたーい!」

イヴリンとリリィ、二人してキャーキャー☆とはしゃぐ様子に、ライトはただただ苦笑いするしかない。

実は今年のレインボースライムショーの引率者は、何とラウルとマキシの二人と決まっていた。

去年のレインボースライムショーは、ハリエットの兄ウィルフレッドがついてきてくれていた。

だが、今年はウィルフレッドの都合がどうしてもつかず、どうしたもんか……と悩んでいたところ、その話を聞いたラウルとマキシが保護者として同行を申し出てくれたのだ。

もともと二日目の午前中は、ラグナロッツァの屋敷で竜騎士団と鷲獅子騎士団の飛行ショーを見た後、そのまま三人で翼竜牧場のふれあい広場に行くことが決まっていた。

午前中もライトといっしょに出かけるんだし、ならば午後もまとめて面倒を見てやろうじゃないか!というラウル達の申し出に、ライトも子供達も一も二もなくありがたく受けた次第である。

幸いにもラウルは去年の秋の大運動会で、ライトの友人達全員と一日をともに過ごして既に顔見知りだ。

そしてマキシの方も、勤め先のアイギスは公国生誕祭の三日間は店休日となっているので、ライト達と過ごすことができる。

そうした諸々の事情により、今年のリリィへのご褒美タイムは『レインボースライムショーの鑑賞』と『ラウル&マキシと過ごす甘い時間』という、ダブルの贅沢なひと時となる予定である。

そんな話で朝から盛り上がっていると、担任のフレデリクが教室に入ってきた。

子供達は慌てて各々の席に着き、その日の授業が始まっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうして月曜日と火曜日の授業が瞬く間に過ぎていき、火曜日の放課後。

二年A組の教室を出て、下駄箱で上履きから靴に履き替えるライト達。

そして校舎を出て、さよならの挨拶を交わす。

「じゃ、皆、また明後日会おうね!バイバーイ!」

「「「バイバーイ!」」」

皆それぞれに手を振りながら、イヴリンとリリィ、ジョゼは平民門、ライトとハリエットは貴族門に分かれて帰路に就く。

そしてライトとハリエットも、貴族門を出てすぐに分かれる。ハリエットにはいつも馬車が迎えに来ていて、貴族門の前でハリエットを待っているためだ。

御者に手を添えられ、予め開けられていた扉から馬車に入っていくハリエット。ライトはそれを、少し後ろで見ている。

馬車に乗り込んだハリエットが、馬車の窓を開けてライトに声をかける。

「では、ライトさんもごきげんよう。明後日の皆との約束、楽しみにしてますね」

「うん!ハリエットさん、また明後日ね!」

穏やかな微笑みとともに小さく手を振るハリエットに、ライトも元気いっぱいの笑顔で返す。

そしてハリエットの馬車が帰っていくのを見送ってから、ライトは徒歩でラグナロッツァの屋敷に帰っていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうしてライトがラグナロッツァの屋敷に帰り、二階の自室で制服から普段着に着替えて一階に降りていたその時。

玄関の扉が開き、誰かが入ってきた。

階段を降りていた最中のライト、ピタッと足を止めて玄関ホールの様子を窺う。

時刻は午後四時半頃で、まだマキシが帰宅する時間ではない。

それに、背格好が全く違う。すらりとした長身に優雅に揺れ動く長い髪は、明らかに成人女性を思わせる姿だ。

もともとこのレオニス邸には、ほとんど来客などない。しかもこんな夕方の時間帯に訪ねてくるような人物など、ライトには全く心当たりがなかった。

このうちに大人の女の人が訪ねてくるなんて、珍しいこともあるもんだな。はて、一体誰の客だろう……レオ兄? それともラウル? いやいやここは大穴のマキシ君?

ライトがそんなことを考えていると、その女性が中に向かって声をかけた。

「こーんにーちはー♪ラウル、いるー?」

鈴が転がるような愛らしい声が、レオニス邸の玄関ホールに響き渡る。

その声の主は、パレードなどの踊りを得意とする技芸一座『暁紅の明星』のトップダンサー、シャーリィだった。