軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1154話 ヴァイキング道場第一支部と支部長

昼食を食べた大衆食堂を出て、ヴァイキング道場第一支部に向かうライト達。

十人以上の大人数での大移動、しかもただでさえ目立つレオニスやラウルに加えハンザ以下ヴァイキング道場の猛者達が固まってゾロゾロと歩く図は、威圧感がとんでもないことになっている。

しかし、当人達は威圧感など出してるつもりは微塵もないので、歩きながらのんびりと会話をしている。

「そういやハンザ、アマロの結婚式っていつやるんだ?」

「公国生誕祭明けてすぐの土日、今月の十九日と二十日にやる予定だ」

「え、二日間もやんのか?」

何気なくアマロの結婚式の日取りを問うたレオニスだったが、まさか二日間も執り行われるとは驚きである。

しかしそれには、ちゃんとした理由があった。

「ああ。一日目の土曜日にまず第一支部で内々だけで式を挙げて、二日目の日曜日には本部で盛大に披露宴をする予定なんだ」

「あー、そういうことか。アマロは第一支部の支部長だもんな」

「うむ、本部と第一支部、どちらも大事なのでな。両方で挙式と披露宴をすれば、全て円満かつアマロを知る全ての人々に祝ってもらえる。まさに一挙両得策なのだ」

ハンザの説明を聞けば、レオニスにも十分に納得できた。

アマロはハンザの次男で、今年二十七歳になる。

彼がヴァイキング道場初の支部である第一支部の支部長となったのは、今から約三年程前のこと。第一支部が創立された当初から、アマロは支部長を務めてきた。

そんなアマロにとって、今や第一支部は本部と同じくらいに大事な場所なのだ。

そしてここで、今度はハンザがレオニスに問うた。

「もしよければ、レオニス君もアマロの結婚式に来てくれないか? 招待状も出さずに直接頼むなど、甚だ図々しいと思われるかもしれんが」

「図々しいだなんて、そんなことないぞ? そんなん言い出したら、俺だって毎回毎度事前連絡もせずにフラリと立ち寄ってばかりだしな」

「そりゃまぁそうなんだが……どうだね、次の土日の予定は開いているか?」

「うーーーん……」

ハンザの再度の問いかけに、レオニスがしばし考え込む。

三日後に迫ったアクシーディア公国生誕祭。正式な建国記念日である一月十七日と、その前後の日の計三日間は『アクシーディアから生誕祭』として内外に見せつけるかのように盛大な生誕祭が催される。

建国記念日前日の一月十六日は水曜日、そして一月十八日は金曜日。

その公国生誕祭が明けた直後の土日に、アマロの結婚式が行われるというのだが、その参加の可否をレオニスはすぐに言えなかった。

何故ならレオニスは、邪竜の島の討滅戦を間近に控えているからだ。

「ここだけの話なんだが……俺、公国生誕祭が終わったらすぐにとある任務に出向かなきゃならなくてな……」

「そうなのか!? ……レオニス君が向かう任務となると、かなり重要性の高いものなんだろうな」

「ああ。その任務は何としても成功させなきゃならん」

「そうか……ならば無理は言えんな」

言葉を濁すレオニスに、ハンザも非常に残念そうな顔をしている。

レオニス程の人物が出張る任務など、只事ではないことはハンザでもすぐに分かる。

そのような重大任務を背負ったレオニスに『息子の結婚式なんだから、是非とも絶対に来てくれ!』などとは言えなかった。

しかしレオニスとしては、アマロの結婚を知ったからには是非とも参加したいと思っている。

友の結婚という、目出度くも新たなる門出。バッカニアやハンザ、コルセア達とともにアマロの門出を祝いたい―――レオニスがそう思うのは当然のことだった。

「いや、でもその任務自体は何日もかかるようなものじゃないんだ。やるとしたら早期決戦、一日以内で決着がつくはず」

「では、どちらかでも来てもらえそうなのか?」

「ああ。土日のどちらかは分からんが、何とかなると思う。ただし、任務の決行日自体がまだ確定してないんでな、土日のどっちに行けるかまでは断言できんのだが」

「構わんさ!レオニス君が来てくれるなら、例え五分でも三分でも大歓迎だ!」

申し訳なさそうに話すレオニスに、ハンザは破顔する。

確たる日時までは約束できないが、それでもレオニス自身には『アマロの結婚式に顔を出したい』という意思がある。

ハンザにとっては、その気持ちを知れただけでも十分に嬉しかったのだ。

そしてそんな話をしているうちに、ヴァイキング道場第一支部に到着した。

外壁は本部のものとよく似ていて、それがヴァイキング道場なのだということが一目で分かる。

門を潜ると第一支部本館と思しき建物が立っていて、規模としては本部よりも小さめだが、それでも古式ゆかしい風情が漂う作りだ。

ハンザが先頭となって中に入り、大きな声で奥に向かって声をかけた。

「頼もう!」

「はいはーい、どなたですかぁー?……あッ、ハンザ大先生!こんにちは!」

ハンザの大声に、しばらくしてパタパタパタ……と誰かがこちらに向かってきている足音がする。

そして十代半ばくらいの若い門下生が、道場の奥から出てきた。

ハンザの顔を見て、瞬時にシャキッ!と背筋を伸ばし、深々と頭を下げる。

ハンザは基本的に本部にいて、支部にはあまり顔を出さない方なのだが、支部でもハンザの顔はすぐに分かるくらいには周知されているようだ。

「邪魔するぞ、アマロはいるか?」

「はい!支部長室にてお仕事中です!」

「そうか。すまぬが、我が来たことをアマロに伝えてもらえるか?」

「はい!!」

最敬礼をする門下生に、ハンザが柔らかい口調で用件を伝える。

若い門下生がピューッ!とすっ飛んでいった後、しばらくして誰か別の人が奥から出てきた。

その道場関係者と思しき若者は、ハンザ達と同じ道着を着ている。

体格もとても立派で、ハンザやコルセアに負けないくらいに鍛え上げた身体だ。

少し癖毛気味の赤い短髪に、本紫色のぱっちりとした目元は爽やかな印象を見る者に与える。背筋も常にピンと伸びていて、堂々とした佇まいが強者特有の風格を感じさせる。

そう、その人こそハンザの二人目の息子にしてバッカニアの兄であり、そしてヴァイキング道場第一支部支部長でもあるアマロ・パイレーツだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ハンザ大先生、ようこそお越しくださいました!…………って、あれ? コルセア兄さんに、バッカニアまでいる?」

「よう、アマロ兄!仕事中に邪魔してすまんな!」

「いや、それは別に構わんが……こんな大人数で来るなんて、一体どうしたんだ。何かあったのか?」

ハンザの来訪を聞いたアマロが出迎えるも、その人数の多さに驚愕している。

来たのがハンザ一人かと思いきや、兄のコルセアに弟のバッカニア、それに本館で師範代を務めるマレー達五人までいるのだ。アマロがびっくり仰天するのも無理はない。

そんなびっくり顔のアマロに、バッカニアがその理由を語る。

「アマロ兄、何で俺達がこんな大人数でここに来たと思う?」

「そんなん分かる訳ないだろう。ホント、何があったんだ?」

「それはだな…… あの人(・・・) が今日、うちの道場を訪ねてきたからだ!」

「あの人???」

一体何事が起きたのか、さっぱり分からないアマロ。

たまにハンザやコルセアが第一支部を訪ねて来ることはあるが、こんな大人数が大挙して来るなど開所式以来なかったことだ。

あからさまに訝しがるアマロに、バッカニアが右手の親指でクイッ!とハンザの後ろ側を示す。

そして次の瞬間、ハンザの背後からレオニスがヒョイ、と顔を出した。

「よう、アマロ」

「!!!レオニス君!?!?」

「おう、久しぶりだな」

「すんげー久しぶりッすね!!」

久しぶりに見る懐かしい顔に、アマロの顔がパァッ!と明るくなる。

レオニスはハンザの後ろから前に出て、嬉しそうに右手を出してきたアマロの手を握った。……と思ったら、次の瞬間。

レオニスは左腕をサッ!と伸ばし、アマロの頭を抱えるようにして捕まえた。いわゆるヘッドロックというやつである。

「アマロ!お前ぇー、結婚するんだって!?」

「おごごごご……は、はい、この度縁あって、結婚することになりました……」

「何だよもー、俺より先に結婚するなんてよぅ!」

「ぃゃぃゃ……それを言ったらコルセア兄さんにも申し訳が立たなくなるんで……」

「あ、そっか。でもまぁな、こんなん順番なんかどうでもいいさ!目出度いことなんだからな!」

出会い頭にアマロをヘッドロックするレオニスに、アマロも苦笑いしながら受け答えしている。

レオニスの拳でグリグリされながらも、笑顔を絶やさないアマロ。本当に幸せそうだ。

一頻り戯れて気が済んだのか、レオニスがアマロへのヘッドロックを解いた。

解放されたアマロは、胸元が乱れかけた道着を両手で直しながら改めてレオニスに声をかける。

「レオニス君、もしかして俺の結婚のことを聞いてわざわざここまで来てくれたんですか?」

「ああ、アマロは日中はずっとこっちの第一支部にいるって聞いたんでな。せっかくなら祝いの言葉だけでも直接伝えたかったんだ。おめでとう、アマロ!」

「ありがとうございます……レオニス君のその気持ちだけで、十分嬉しいッす!」

レオニスの祝いの言葉に、アマロが破顔しつつ礼を言う。

アマロの花咲くような人懐っこい笑顔は、ヴァイキング道場第一支部支部長としてではなく、レオニスの友という素朴な素顔だった。