軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1144話 盛り上がる歓迎会と次の行き先

マキシの父ウルスと兄ケリオンを迎え入れた日の夕食は、それはもう豪勢な食事だった。

様々なメニューの中には、この日ケセドで買い付けてきたばかりのエヴィルヴァイパー肉の唐揚げもあった。

脂分が多い尾肉を除き、首肉と胸肉と肩肉、そして腰肉の四種類の唐揚げがそれぞれ大皿に盛られている。

「ラウル、これはどの部位なの?」

「その皿は腰肉で、そっちが肩肉、あっちは胸肉でこっちは首肉だ」

「おお、腰肉はジューシーで首肉はあっさり、肩肉はさっぱりで胸肉はジューシー寄りのしっとりってとこだな」

「ああ、やはり蛇肉ならではの臭みはほんのり感じるが、逆にそれが独自の強い旨味にもなってるところが面白い」

「こないだの干し肉も美味しかったけど、生肉の方もこんなに美味しいんだね!」

「今日もあの干し肉を使った料理があるぞ。そこの炒飯とデミグラスシチューの具な」

エヴィルヴァイパー肉の話で盛り上がるライト達四人に、ウルスとケリオンはおそるおそる唐揚げを覗き込んでいる。

これまでライト達がご馳走してくれた唐揚げは美味しく食べられたが、蛇肉と聞いて若干怖気づいているようだ。

そんな父と兄に、マキシが明るい声で話しかける。

「父様、ケリオン兄様、この唐揚げも全部美味しいですよ!」

「ぉ、ぉぉ、確かに食欲を唆る香ばしい匂いはするな……」

「……そ、その……マキシは蛇の肉を食べても大丈夫なのか……?」

「はい!ほら、見てくださいよ、僕だけでなくライト君やレオニスさんだって美味しそうに食べてますよ? というか、ラウルが作る料理で美味しくないものなんて絶対にないですし!」

ケリオンの問いかけに、マキシは花咲くような笑顔で答える。

その笑顔は、ライト達三人を心から信頼していることの証。特にラウルに対する全幅の信頼は、マキシの中で絶対に揺るぐことなどないのだ。

そんなマキシの笑顔を見て、ウルス達も覚悟を決める。

「……よし、ケリオン、我らもご馳走になるぞ」

「……はい…………えいッ!」

二羽は腹を括り、目の前の皿に盛られた唐揚げに嘴を入れた。

温度もちょうどいい塩梅に冷めてきて、ほんのりと温かい唐揚げを頬張るウルスとケリオン。

最初こそギュッ!と閉じていた目が、しばらくすると大きく見開かれていく。

「こ、これは……」

「何という美味さ……!」

嘴の中いっぱいに広がるエヴィパ肉の旨味に、ウルス達の顔が驚きに満ちる。

今ウルス達が食べたのは肩肉。ジューシーさとあっさりの中間と評された部位だ。

その後ウルスとケリオンは、夢中になって唐揚げを食べている。もとより八咫烏達は唐揚げが大好きだったが、この新しいメニュー、エヴィパ肉の唐揚げもとても気に入ったようだ。

「ぷはー……実に美味なる唐揚げであった……」

「ケプー……これまでの唐揚げとはまた違う美味しさでしたねぇ……」

「でしょでしょ? 父様もケリオン兄様も、食べず嫌いはいけませんよ!」

「「ぅぐッ……」」

ニコニコ笑顔のマキシに正論を諭され、ぐうの音も出ないウルスとケリオン。

一瞬だけ言葉に詰まったものの、二羽の表情はすぐに解れていく。

そしてウルスがマキシに改めて声をかけた。

「……マキシはこの人里で、日々成長しておるのだな」

「ですね。我らの想像をはるかに上回る成長ぶりで……マキシ、兄さんはお前の成長を本当に……とても嬉しく思うよ」

「父様……ケリオン兄様……」

マキシの成長を褒め称えるウルス達の言葉に、今度はマキシの方が言葉に詰まる。

最初の頃こそ、ウルス達はマキシの行く末を心配していた。

それまでずっと不自由だったマキシの願いを聞き入れて、人里で暮らしていくことを了承したものの、それでもずっと心配だった。

だが、マキシが自らの意思でカタポレンの森を飛び出し、そのまま人里で暮らすようになって早一年と三ヶ月。

自分達の見えないところで、末息子、末弟はこんなにも立派に成長していた。

ウルスとケリオンは、改めて今日そのことに気付かされたのだ。

「ツィ様のあの事件の時にも思ったが……マキシはどんどん強く、逞しくなっていくな」

「全くです。あの時も我ら兄弟は『マキシに負けてはいられない!』と思いましたが……僕ももう、今やマキシの背を追う側になった気がします」

「ケ、ケリオン兄様!決してそんなことは……僕なんてまだまだです!」

マキシの成長を心から喜ぶ父と兄に、マキシが慌てたように否定する。

父と兄と弟、三者のやり取りをライト達は微笑みながら見守っている。

こうして歓迎会を兼ねた晩餐は、和やかな空気のうちに進んでいった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

その後たらふくご馳走を食べたライト達は、食堂から客間に移動し食後のお茶と洒落込む。

テーブルのソファに座り、それぞれ思い思いの飲み物を口にする。

ライトはぬるぬるドリンク薄黄、レオニスとラウルはブラックコーヒー、マキシはカフェオレ、ウルスとケリオンは単独の飲み物を飲むのは難しいのでたまごボーロを摘んでいる。

そして一息ついたところで、レオニスが話を切り出した。

「さて、そしたら明日はどこに行くかな。皆、どこか行きたい場所とかはあるか?」

レオニスの問いかけに、ライト達はしばし考え込む。

ライト達が今から話し合っておきたいのは、明日どこに出かけるか、ということ。

アクシーディア公国生誕祭が始まる前の、いわゆる日常生活や日頃の風景も見せておきたい、という考えからである。

ちなみにウルスとケリオンは、初の人里訪問で右も左も分からないので、ただただ静観=ライト達にお任せである。

「うーん……一応ウルスさんとケリオンさんの人化の術のための見学だから、男の人が多いところがいいよね?」

「そうなると、冒険者ギルドとかになるが……冒険者ギルドなら明後日以降の平日に俺やラウルが連れて行ってもいいしなぁ」

「そうだな。ラグナロッツァの市場なんかも、平日に俺が連れて行けるしな」

「せっかくの日曜日ですし、ライト君が滅多に行けない遠い場所とかがいいですよねー」

「「「「……うーーーん……」」」」

ライトとレオニス、ラウルにマキシ、四人して目を閉じ呻る。

明日のお出かけは、いつもの三人だけでなくマキシも含めた四人で行くことになっている。

父と兄の来訪を聞いたカイ達が、今日の半休だけでなく日曜日も丸一日休んでいいと言ってくれたのだ。

この時期のアイギスは、パレードの踊り子達の衣装作りなどでとても忙しい。本当ならマキシの手だって必要だし、マキシが休めばかなりの痛手なはずだ。

それなのに、普段会えない家族が会えることをカイ達は我が事のように喜んで、気を利かせてくれた。

マキシは申し訳なく思いつつも、ここはカイ達の厚意に甘えてお休みをもらった、という訳である。

しばらくうんうんと呻り続けていたライト達だったが、ここでレオニスがパッ!と目を開けた。

何か良い案が思い浮かんだようだ。

「……そしたらホドに行くか」

「ああ、それいいね!バッカニアさんのおうちの道場でしょ?」

「そそそ、ヴァイキング道場な。あの道場なら男が山盛りいるし、若いのもそれなりに歳食ったのもいるしな」

「だな。冒険者ギルドとはまた違う男達の集まりだから、ウルスやケリオンにとっても大いに見学のし甲斐があるだろう」

「僕は、ラグナロッツァ以外の人里に出かけたことは一度もないので、ホドのことも全く分かりませんが……皆さんについて行きます!」

レオニスの提案に、ライト達三人も頷きつつ同意する。

せっかく日曜日に出かけるのだから、いつもはあまり行かないような場所に行きたい!と思うのは当然の流れだ。

その点ホドならば、ライトもラウルもまだ一度しか行ったことがないし、剣術道場の見学はウルスとケリオンにとっても大いに役立つに違いない。

「よし、なら明日はホドに決まりだな!」

「うん!二回目のホドとヴァイキング道場、楽しみー!」

「俺はたまごボーロ以外の新メニューが仕入れられるといいな」

「父様、ケリオン兄様、僕もホドに行くのは初めてなんです!」

「おお、そうか、それは楽しみだな」

「どのような人里か分かりませんが……父様、僕達も一日も早く人化の術を会得できるよう頑張りましょう!」

明日の行き先が確定したことに、皆大いに沸いている。

この日のラグナロッツァの屋敷は、いつになく楽しげな笑い声が絶えず響いていた。