軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1129話 生活様式と概念の違い

神殿の島から畑の島に移動したライト達。

畑では、パラスを始めとして何人もの天使達が野菜への植物魔法や水遣りに勤しんでいた。

畑を見回してもラウルの姿が見当たらないところを見ると、ラウルは今もログハウスの中にいて何かをしているのだろう。

ライトと二人の女王の来訪に、いち早く気づいたパラス。

作業の手を止めて、ライト達が現れた転移門のある方にパタパタと飛んで駆け寄ってきた。

「女王様、ようこそお越しくださいました!」

『パラス、いつもお仕事ご苦労さま。今日は何が実りそうなの?』

「えーとですね、白菜とニンジン、小松菜なんかが食べ頃となってきております」

『どれもヴィーちゃんとグリンちゃんの大好物ね!』

「はい!ヴィー様やグリン様には、是非とも美味しいものを食べていただきたく!」

二人の女王達の前に降り立ち、挨拶をしつつ右腕で額に薄っすらと滲む汗を拭うパラス。

この広大な畑の野菜全てに満遍なく水遣りをするというのは、かなりの重労働に違いない。

もちろん水遣りは一人二人でこなすものではなく、それこそ何十人もの天使達が今も水がたっぷり入ったバケツを持って飛び回っている。

パラスに言わせれば、これも立派な鍛錬になる!とのことなので、鍛錬と野菜栽培という実益が兼ねられるのは実に良いことだ。

屈託のない笑顔で語るパラスに、光の女王と雷の女王が感謝の意を示す。

『グリンちゃん達が毎日美味しいお野菜を食べられるのも、こうして貴女達が頑張ってくれているおかげよ。本当にありがとう』

『そうね。ヴィーちゃんも貴女達のお野菜が届けられるのを、いつも楽しみにしているのよ。お野菜を育てるのは本当に大変だと思うけど、これからも頑張ってね』

「もったいないお言葉でございます!我ら天使達一同、これからもより一層畑仕事に精進してまいります!」

二人の女王の心からの労いの言葉に、パラスが感激の面持ちで最敬礼をする。

そしてパラスがライトの方に向き直り、声をかけた。

「ライトはもう神殿の島の草むしりを終えたのか?」

「はい!見える部分は全部草むしりしてきました!」

「仕事が早いのは素晴らしいことだ」

「ありがとうございます!」

天使の長であるパラスに褒められて、嬉しそうに破顔するライト。

パラスは『部下は褒めて育てる』という方針なので、他者を褒めることに長けているのだ。

「ならば、今からあのログハウス?の中を見に行くのか?」

「はい。女王様達もあのログハウスに興味があるそうなので、いっしょに見に来ることになったんです」

「そうか。そのおかげで我らの畑も女王様方にご覧になっていただけたのだな。そしたら女王様方のご案内は、引き続きライトに任せるとしよう。よろしく頼むぞ」

「はい!任せてください!」

二人の女王の案内を任せられたライト。

それはまるで護衛騎士を指名されたかのようで、ライトはいつになく張り切っている。

「光の女王様、雷の女王様、ログハウスに行きましょう!」

『ええ、そうしましょう』

『パラス達も頑張ってね!』

女王達がパラスに軽く手を振りながら、ログハウスに向かう。

パラスもニコニコ笑顔で女王達に手を振りながら、三人がログハウスの中に入っていくのを見送っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

玄関の扉を開けて、靴を脱いでから上に上がるライト。

一階部分は玄関とキッチン、トイレを除いた部分が全てワンフロアとなっている。

フロア部にはテーブルやソファがいくつも置かれていて、休憩や食事が摂れる空間になっていた。

ちなみにそれらの調度品は、全てレオニスがラグナロッツァの家具屋で手配したものだ。

王侯貴族が使うような超高級品という訳ではないが、それでもちゃんとしっかりとした作りでそこそこ良い品である。

そして、フロアの中にラウルの姿はなかったが、奥の方から何やら音がする。

そこはキッチンであろう場所で、ライトがヒョイ、と顔を覗かせるとさらに奥の方でカチャカチャという音が聞こえてくる。

ラウルはキッチン入口から見えない食糧庫の方にいて、ライトと二人の女王が来たことに未だに気づいていないようだ。

そんな働き者のラウルに、ライトの方から声をかけた。

「ラウルー、まだ忙しい?」

「お、ライトか。もう草むしりは終わったのか?」

「うん、終わったよー。でね、女王様達もこのログハウスに興味があるって言うから、女王様達も連れてきたんだー」

「おお、そうか。そしたら俺も少し休憩を取るとするか」

ライトの呼びかけに、ラウルがその手を止めて振り返る。

ラウルが今何をしていたのかというと、食糧庫の中に追加で設置した食器棚に各種食器類を収めているところだった。

その食器類の中には、かつて海樹ユグドライアのところでもらってきた沈没船のお宝の食器もいくつか含まれている。

ライトが草むしりを完了させただけでなく、女王達も連れてきたと聞いたラウル。女王達をもてなすために、自身も休憩を取ることにしたようだ。

「そしたらライト、俺は今からお茶の用意をするから、その間女王達といっしょに二階を見てくるといい。二階の方もそれなりに整えたからな」

「うん!女王様、先に二階を見に行きましょう!」

『『はーい』』

ラウルの提案に、ライトは一も二もなく乗っかる。

そうして三人は、フロア奥にある階段から二階に上がっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

二階に上がると、そこは一階より薄暗かった。どうやら窓にカーテンが取り付けられていて、外の光を遮っているようだ。

ライトは薄暗い中、窓に近づいてシャッ!とカーテンを勢いよく開ける。

カーテンを開けたライトが振り返ると、外の光を取り入れた二階の中の様子がよく見えるようになった。

「……おおお……」

明るくなった二階の中を見回したライトが、思わず感嘆の声を洩らす。

ログハウスが建てられた直後の二階には、まだマットレスもない本当に素のベッド四台しかなかったが、かなり様変わりしていた。

まず四台のベッドには、マットレスはもちろんのこと枕や掛け布団などの寝具一式が全部綺麗に設えられている。

そしてベッドの他にも、箪笥や服を掛けておくハンガーラックが設置されている。

これなら今すぐにでも、ここで寝泊まりできるであろう。

人族が住む環境としては十分な出来上がりに、二人の女王が興味深く見回っている。

『へー、人族はこの四角い箱?の上で寝るのねー』

『この窓に取り付けてある、カーテン?というのも初めて見るわ……窓とは別に布を引いて開け閉めすることで、外の光の量を調節するのね』

『人族は服を纏うから、服を脱いだ時にこうして掛けておく場所が要るのね。私達精霊には服を着るという概念はないけど、こうして見ると面白いものね』

初めて自分の目で直接見る人族の文化に、二人の女王の興味は尽きない。

新しく設えられたカーテンやベッドなどを、手でそっと触っては手触りを直接確かめたり捲ってみたりしている。

それらは精霊である彼女達にとって、ほとんど無縁のもの。彼女達は服を着ることなく常に素肌のまま一生を過ごすし、寝るにしてもベッドなどという箱に頼ることはない。

だが、彼女達にとっては不要のものでも、ライト達人族には必要不可欠。他者が営む生活様式の違いは、長い時を生きる属性の女王達の目にもとても新鮮なものに映るようだ。

するとここで、一階にいるラウルから声がかかった。

「おーい、お茶の準備ができたぞー」

「はーい、今からそっちに行くねー!」

ラウルの呼びかけに、ライトが二階入口から下に向かって大きな声で返事をする。

そしてライトは後ろを振り返り、ベッドに座っている光の女王と同じく別のベッドに寝転んでいる雷の女王に声をかけた。

「光の女王様、雷の女王様、一階でおやつにしましょう!」

『ええ』

『いいわね、すぐに行きましょ♪』

ライトの誘いに、光の女王はスッ……と立ち上がり、雷の女王はガバッ!と起き上がる。

存分に二階の見分を済ませたライト達は、階段から一階にいそいそと下りていった。