軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1120話 初めて見る景色

ラウルと炎の女王、そして朱雀の友誼は無事結ばれた。

ラウル達のやり取りを、それまで後方でじっと見守っていたライトとレオニス。ライトが先んじてラウル達のもとに駆け寄ってきた。

「炎の女王様、朱雀、ありがとうございました!ラウルも炎の加護を得ることができて、本当に良かったね!」

「ああ、これも全てご主人様達のおかげだ」

「ううん、ラウルがすっごく頑張って、自分の足でここまで来たからこそだよ!」

「ありがとうな」

嬉しそうにラウルの顔を見上げるライトに、ラウルも小さく微笑みながらライトと頭をくしゃくしゃと撫でる。

ライトの言うことは正しく、ラウルが自身の恐怖心を懸命に抑え、自らの足でここまで来たからこそ炎の女王達もラウルを快く歓迎したのだ。

いや、もちろんそれでなくともライトとレオニスの知己というだけで、炎の女王は無条件でラウルに加護を授けただろう。

だが、その後も信頼関係を築いていくことを思えば、ラウルの努力する姿は決して無駄ではない。むしろ己の力で新たな力を得ようとする姿勢は、実に好ましいものだ。

二人のやり取りを微笑みながら見ていたレオニス。

ここでライト達に声をかけた。

「さ、そしたら次は火の女王のところに行くぞ」

「うん!……って、まずは炎の女王様にお願いしないとでしょ?」

「お、そうだな。そこをすっ飛ばしちゃいけねぇよな、すまんすまん」

ライトに注意されて、レオニスが思わず謝り倒す。

そして改めて炎の女王の方に向き直って、交渉を始めた。

「炎の女王、扱き使うようで申し訳ないが、俺達をエリトナ山に連れていってもらえるか? せっかくだから、火の女王の加護もラウルに授けてもらいたいんだ」

『もちろん良いぞ。妾も火の姉様にお会いしたいしな』

レオニスの頼みに、炎の女王も快諾する。

炎の女王は、自発的にエリトナ山に行くことはほとんどない。こうしてライト達に頼まれたら連れて行くくらいのものだ。

しかし炎の女王としても、本当は姉と慕う火の女王にもっと会いたいと密かに思っていたりする。

そう、実はライト達の頼みは彼女にとっても渡りに船なのである。

するとここで、炎の女王がふと何かを思い立ったように口を開いた。

『……そうだ、せっかくだから今日は朱雀様も連れていっても良いか?』

「そりゃもちろん構わんし、むしろ朱雀も炎の洞窟の外に出る良い機会にもなるよな」

『ああ。火の姉様にも、是非とも朱雀様にお会いしていただきたいのだ。この炎の洞窟にようやく降臨なされた神殿守護神、朱雀様をな』

「そりゃあいい。きっと火の女王も喜ぶだろ」

炎の女王の願いに、今度はレオニスが快諾する。

朱雀は去年の八月初旬に、ライト達の手によって卵から孵化した。

それから約五ヶ月が経過した今、そろそろ火の女王に朱雀をお披露目してもいいだろう……と炎の女王は考えたのだ。

そうした炎の女王達の会話が分かるのか、彼女の胸にいる朱雀が「ピィッ!」と言いながら両翼を高く掲げて喜んでいる。

糸目でニコニコと笑う朱雀は、実に愛らしい。

「よし、そうと決まれば早速行くか」

『では参ろうぞ。朱雀様、妾の肩から離れないようにしてくださいね』

「ピィッ♪」

ライト達はエリトナ山にに移動するべく、いつもの炎の吹き溜まりに向かう。

その間に炎の女王が朱雀を胸から左肩に移し、吹き溜まりの前で右手をライト、左手をラウルに差し伸べた。

ライトとラウルは炎の女王と手を繋ぎ、レオニスはライトと手を繋ぐ。

これだけ大きな炎の吹き溜まりを前に、ラウルが怯むことはもうない。その頼もしさに、ライトは思わず笑顔になる。

まず炎の女王が炎の吹き溜まりに入り、ライト達もそれに続き炎の中に入っていく。

こうしてライト達は、炎の女王達とともにエリトナ山に向かっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

炎の渦の中を、しばし漂うように進むライト達。

ほんわかとした温かさの中、赤い光が満ちた空間をゆったりと泳ぐ。

「……おおおお……」

初めて見る赤く温かい空間に、ラウルは目を大きく見開きながら感嘆している。

この世にも珍しい空間は、何度も見て経験しているライト達ですら未だに感動してしまう。

これは、本来なら火の精霊にしか見ることのできない絶景。ライト達が何度見ても感動してしまうのも当然のことである。

「これは……ものすごく綺麗な世界だな……」

「うん、ぼくも初めて見た時はすっごく感動した!」

「本当に……この世界には、俺の知らないものがまだまだたくさんあるんだな……」

炎の女王を挟んで会話するライトとラウル。うっとりとしたように周囲の景色を眺めるラウルに、ライトもうんうん、と頷いている。

二人の微笑ましい会話に、二人の間にいる炎の女王も自然と頬が緩む。

そしてしばらくして、赤く温かい空間からより明るい橙色に変わっていく。

グラデーションのようにじわじわと彩りが変化していく、その移り変わる景色がまた何とも美しい。

周囲の色が完全に橙色=マグマ色に染まり、体感温度も炎の優しい温かさから火の力強い熱さに変わっていった。

しかし、ライト達が火の熱さを感じることはない。

ライトとレオニスには、炎の女王からだけでなく火の女王の加護もあるからだ。

それに比べてラウルはまだ炎の女王の加護だけだが、それでもこのマグマの熱さに耐えきれない訳ではない。それなりに熱いが、ノーヴェ砂漠に比べたら全然マシだ、とすらラウルは思う。

そしてここで、炎の女王がふと顔を上げた。

『火の姉様!』

『おお、我が妹、よくぞ参った!』

エリトナ山の火口のすぐ入った浅いところで、火の女王がライト達を出迎えた。

炎の女王がエリトナ山に来たことを敏感に察知し、すぐに火口に飛び込んだようだ。

花咲くような笑顔で炎の女王を抱擁する火の女王に、炎の女王はその腕の中で照れ臭そうに微笑んでいる。

火の姉妹の仲睦まじい交流に、ライト達が早速火の女王に挨拶をする。

「火の女王様、こんにちは!」

「よう、火の女王。久しぶりだな」

『おお、其方らもよう来た!…………ン? そこにいるは、新顔か?』

ライト達の挨拶にも笑顔で応える火の女王。二人とも、もう火の女王ともすっかり顔馴染みだ。

その一方で、ライト達の反対側にいるラウルの存在にも気づいたようだ。

そんな火の女王に対し、炎の女王が少し慌てたように進言する。

『火の姉様、この者は決して怪しい者ではございません!』

『ああ、分かっておる。其方が自らここに連れてくる者なのだ、妾が疑うはずもない』

『姉様……突然連れてきたにも拘わらず、ご理解いただきありがとうございます』

『そう身構えずともよい。さあ、皆で上に出よう。そして心ゆくまで話を聞かせておくれ』

『……はい!』

優しく微笑みながら受け入れる 姉(火の女王) に、 妹(炎の女王) も思わず破顔する。

火の女王の招きに従い、炎の女王はライト達を連れてエリトナ山火口から外に出た。