軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1112話 新年一発目の仕事と秘密の会話

レオニスが朝から冒険者ギルド総本部でパレンと会談をしていた頃。

ライトとラウルは【Love the Palen】で買い物をしていた。

さすがに正月三が日限定のお年賀セットは既に完売していたが、通常より少し豪華なお年賀向けの菓子折りセットを元旦から十日間程は販売すると聞き、追加でそれらを買うために【Love the Palen】の本店に出かけたのだ。

「ぼくはルティエンス商会のロレンツォさん用に買うんだけど、ラウルは誰用に買うのー?」

「俺はいつも殻処理で世話になっている、エンデアンとネツァクとツェリザークの受付の姉ちゃん達三人分だな」

「あー、クレエさんとクレノさんとクレハさんねー。うん、いいんじゃない? 【Love the Palen】の菓子折りなら、きっと皆大喜びしてくれると思うよー」

「だといいがな」

ヨンマルシェ市場にある【Love the Palen】本店に向かいながら、のんびりと雑談するライトとラウル。

ライトがわざわざ言わなくとも、ラウルの方から日頃世話になっている人々に挨拶に出向きたい、と自主的に考えるのはとても良いことだ。

そして【Love the Palen】本店内に入ったライト達。

二人して何となく店の中をキョロキョロ見回してしまう。どうやら今日は眠はいないようだ。

目当ての年賀用セットはお一人様二点までだったので、二人で二点づつ系四点を購入した。

無事【Love the Palen】の年賀用セットを買えて、ホクホク顔のライト。ラウルとともに店を出た。

「そしたらラウルはこれからどうする? ぼくはルティエンス商会に行くけど」

「なら俺もツェリザークに行くかな。ライトがルティエンス商会にいる間に、殻処理仕事の二つか三つはこなせるだろうし」

「じゃあいっしょに行こうね!」

次の行き先が決まり、二人は冒険者ギルド総本部に向かう。

冒険者ギルド所有の転移門で、ラグナロッツァからツェリザークに移動したライト達。早速ツェリザーク支部の受付窓口にいるクレハに声をかけた。

「クレハさん、こんにちは!あけましておめでとうございます!」

「あけましておめでとう。今年もよろしくな」

「あらまぁ、ライト君に殻処理貴公子様!あけましておめでとうございますぅ、今年も何卒、何ッッッ卒!殻処理依頼の方、よろしくお願いいたしますぅー」

ライトとラウルの顔を見たクレハ、その場ですぐに椅子から立ち上がり深々と頭を下げる。

氷蟹フィーバーに沸くツェリザークは、その殻処理依頼件数も右肩上がりで激増している。それはぬるシャリドリンクの爆発的ヒットから始まっており、これを大量にこなせるのは現状ラウルしかいない。

そもそもぬるシャリドリンクの爆発的ヒットもラウルが原因なのでまその後始末もラウルが担うのは当然と言えば当然か。

そしてラウルは徐に空間魔法陣を開き、先程購入したばかりの菓子折りをクレハに差し出した。

「あ、これ、いつも世話になってる礼も兼ねての挨拶の品だ。受け取ってくれ」

「ンまぁぁぁぁ、これは……【Love the Palen】のお年賀ですか!?」

「ああ。正月三が日用の限定品じゃなくて申し訳ないがな」

「申し訳ないだなんて、そんなとんでもない!あの【Love the Palen】のお菓子セットというだけで十分ですぅー!」

ラウルが恭しく差し出した【Love the Palen】の年賀用菓子折りセット。

それは【Love the Palen】を象徴する濃桃色でラッピングされており、店名の刻印と相まってそれが何であるかすぐに分かる。

もちろんクレハも即時理解し、輝かんばかりの笑顔で差し出された菓子折りセットを受け取った。

受け取った菓子折りに、クレハがうっとりしながら頬ずりする。

「ああ、あの憧れの【Love the Palen】のお菓子セットをいただけるなんて……年始早々こんなに嬉しいことはありませんー」

「おお、そんなに喜んでもらえると俺も嬉しいわ。そしたら俺も早速新年一発目の殻処理依頼を引き受けたいんだが。緊急度の高そうなものを、いくつか見繕ってもらえるか?」

「ハッ!畏まりましたぁー!少々お待ちくださいませぇー!」

ラウルの言葉にクレハがハッ!とした顔で我に返る。

そして瞬時に菓子折りを机の下に仕舞い、猛烈な勢いで依頼掲示板の方にダッシュしていった。

バビュン!と走り去るクレハの後ろ姿を、ライトとラウルがクスクスと笑いながら見ている。

「あんなに喜んでもらえて、よかったねぇ」

「全くだ。あの店の菓子折りって、あんなに喜んでもらえるもんなんだな」

「そりゃそうだよ!【Love the Palen】の名前は全国区で有名だけど、お店はラグナロッツァにしかないからね。地方に住む人にはぼく達以上に入手困難な品なんだよ」

「そっか、そう言われてみりゃ確かにそうだな」

ライトとラウルがのんびりと雑談していると、依頼書の束を持ったクレハが窓口に戻ってきた。

可愛らしいラベンダー色の制服、その胸には五枚の依頼書が抱き抱えられている。

「殻処理貴公子様、是非ともこの五件をお願いいたしますぅ!」

「五件分もか? そりゃまた多いな」

「いえ!この五件はどれも立地が近いものを選んでありますぅ!なので、移動時間も然程かかりません!」

「ほーん……それならまぁいいか」

五枚もの依頼書をクレハから渡されたラウル。依頼書を一枚一枚パラパラと捲りながら、その内容に目を通していく。

予想以上に仕事を回された感があるが、その五件はどれも近場にあって移動は楽だと言う。

これは、少しでもラウルにたくさんの依頼をこなしてもらうために、移動時間だけでも負担を軽くして差し上げよう!という、クレハなりの気遣いなのだろう。

「よし、それじゃこの五件を引き受けよう」

「ありがとうございますぅー!」

「ライト、行くぞ」

「うん!クレハさん、いってきまーす!」

「お気をつけていってらっしゃいましー♪」

超ご機嫌なクレハに見送られながら、ライトとラウルは冒険者ギルドツェリザーク支部を後にした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

まずはライトの目的であるルティエンス商会に向かったライト達。

店の前に到着し、ラウルは店には入らずそのまま殻処理依頼をこなしに出かけていった。

ライトは店の扉を開き、中に入っていく。

中には相変わらず客の一人もいないが、ライトは気にすることなく店の奥に向かって声をかける。

「こんにちはー。ロレンツォさん、いますかー?」

「……いらっしゃいませ」

そのまましばらく待っていると、ロレンツォがライトの呼びかけに応じ奥から出てきた。

ライトはロレンツォが出てくるまで待っている間に、アイテムリュックから出しておいた【Love the Palen】の菓子折りを早速渡した。

「あけましておめでとうございます!今年もどうぞよろしくお願いします!」

「これはこれは、ご丁寧なご挨拶痛み入ります。こちらこそ、本年も何卒よろしくお願いいたします」

二人してお互いにペコペコと頭を下げ続ける。

すぐに頭を下げてお辞儀をするのは、前世日本人の性か。

「ところで今日は、お連れ様はいらっしゃるのですか?」

「はい、ラウルといっしょに来てます。ラウルは氷蟹の殻処理依頼を五件こなしてから、ぼくを迎えに来てくれることになってます」

「氷蟹の殻処理問題は、ツェリザークにおける長年の社会問題でもありますからねぇ……」

顎に手を当て、難しい顔をしながらしかめっ面をするロレンツォ。

だがしかし、殻処理問題はラウルがライトとともにこのツェリザークに来てくれる、大きな要因ともなっている。

そのことを、ライトは懸命にロレンツォにアピールする。

「まぁでも、その殻処理依頼のおかげでぼくはこうしてロレンツォさんに会いにこれて、ゆっくりお話もできますし!」

「そうですね、それには感謝せねばなりませんね。では早速、中でお話をお伺いいたしましょうか。ライトさんからも、とても素敵な菓子折りをいただいたことですし」

「はい!」

特に何を言わずとも、中での会話を誘ってくれるロレンツォ。

ロレンツォは、大きな秘密を抱えるライトの数少ないBCO仲間。彼のさり気ない気遣いは、ライトは本当にありがたいと思う。

ロレンツォの粋な誘い方に、ライトは破顔しつつ奥に向かうロレンツォの後をついていった。