軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1100話 激レア餅のお披露目会

その後ディーノ村での餅拾いを思う存分堪能してきたライト。

父母の家に向かうべく、冒険者ギルドディーノ村出張所から外に出たら本当に見渡す限り辺り一帯に餅が一つもないのには驚いた。

クレアが言うところの『ギルド周辺半径1kmの範囲内の餅は全ていただいた!』という話は、嘘偽りない事実のようだ。

そしてその1kmが過ぎた辺りから、未拾得の餅が出てくるようになってきた。

これがただの雪ならば、何も気にすることなくサクサクと踏みしめながら進むところなのだが。とても有用な食べ物である聖なる餅を足蹴にするのは心苦しい。

とりあえずライトは自分が進む方向にある餅を、歩ける幅の分だけ拾い続けていく。

そうして辿り着いた父母の家は、見事なまでに一面の餅に包まれていた。

「うひょー!聖なる餅の取り放題だー!」

白く輝く絶景?に、ライトは思わず歓喜の声をあげる。

この父母の家は、ラグナロッツァの屋敷とは比べるまでもなく小さな 荒屋(あばらや) に過ぎない。

だが先程のクレアの助言に従えば、その収穫量はラグナロッツァの屋敷をはるかに上回るだろう。何故ならその近辺の餅は誰も拾わないので、実質的にライトが好きなだけ拾えるのだから。

ライトは早速木製バケツを取り出し、先程のラグナロッツァの屋敷での作業と同じように餅を拾い始めた。バケツ一杯に餅を入れては父母の家に入れ、十杯溜まったら家の中でアイテムリュックに移し替える。

アイテムリュックを使っているところを誰にも見られないよう、慎重に餅拾いを続けるライト。そう、例えこんな人っ子一人いないような寒村でも、ライトは絶対に警戒を怠らないのである。

そうして一時間半程も餅拾いを続けただろうか。

ライトはひとまずラグナロッツァの屋敷に戻ることにした。

その前に、換気のために開けていた父母の家の窓を閉め、家の中に何も異常がないことを確認してから玄関の鍵を閉める。

「父さん、母さん、また来るね!」

誰もいない空き家に向かって、元気よく挨拶をするライト。

もし父母が今も生きていたら―――きっと親子三人、あるいはライトの弟や妹も生まれていて四人家族、五人家族になっていたかもしれない。

そんなifの世界に少しだけ思いを馳せつつ、ライトはラウル達が待つラグナロッツァの屋敷に帰っていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ライトはラグナロッツァの屋敷に戻り、ササッと着替えや手洗いを済ませて階下に下りると、ラウルとマキシが食堂にいて昼食の準備をしている最中だった。

ライトが帰ってきたことにすぐに気づいたラウルが、食堂に入ってきたライトに真っ先に声をかける。

「ライト、おかえり」

「ただいまー!今からお昼ご飯?」

「おう、ちょうど昼飯の支度をしていたところだ」

ラウルとともに昼食の支度をしていたマキシも、ライトに声をかける。

「ライト君、おかえりなさい!」

「マキシ君もお疲れさま!ごめんね、帰るのが遅くてお昼ご飯のお手伝いできなくて」

「そんなことないですよ!お昼ご飯の支度と言っても、ラウルが空間魔法陣から出してくれる皿や篭を並べるだけですし。それよりライト君は、手を洗ってきましたか?」

「もちろん!」

「じゃ、早速皆でお昼ご飯を食べましょうか」

「うん!」

三人揃って席に着いたところで、ラウルが出してくれたおにぎりやハンバーガーなどを食べる。

美味しい昼食に舌鼓を打ちながら、ライト達は互いの状況を教え合う。

「ラウルの餅拾いの方はどう? 今何軒目?」

「十二軒のうち七軒終えて、昼飯食ったら八軒目に取りかかるところだ」

「えー、午前中のうちにもう七軒分も拾ったの!? すごいね!」

「今年はマキシも手伝ってくれてるからな、大助かりだ」

「そ、そんな……でも、ラウルの役に立てるなら僕も嬉しいな!」

ラウルが餅拾いの許可を得た十二軒のうち、午前中だけで既に半分以上を完遂したという。

この近辺のお屋敷は全てレオニス邸より大きくて、広大な敷地を誇る豪邸ばかり。

そんなだだっ広い貴族邸宅に降った餅を、数時間のうちに七軒分拾い終えたというのは正真正銘驚異のスピードだ。

もちろんその早さはラウル一人だけの力ではない。今年から新たな戦力として加わったマキシのおかげである。

ラウルに大助かりと讃えられ、マキシが照れ臭そうにはにかんでいた。

「そういやライトの方はどうだった? 向こうにも餅は降ってたか?」

「うん!こっちと同じくらい降ってた!」

「そっか、そりゃ良かったな」

「ライト君もたくさんお餅を拾えましたか?」

「うん!あの家の周りまでは誰も餅拾いをしに来ないから、好きなだけ拾えるんだ!」

「へー、それはいいですね!ライト君もアイテムリュックを持ってるから、できるだけたくさんお餅を拾えますもんね!」

ディーノ村で聖なる餅をたくさん拾えたことを、花咲くような笑顔でラウル達に報告するライト。

ラグナロッツァの屋敷の分と合わせたら、一体何個拾ったか知れない。もはや千個単位ではなく、万単位は確実に拾ったであろう。

これだけ拾えば、ライトとしても大満足だ。

そんなライトに、ラウルが改めて声をかける。

「ライト、そしたら午後はどうするんだ?」

「そうだなー……ラウル達のお手伝いしてもいいんだけど、どう? 残り五軒は夕方までに拾いきれそう?」

「多分大丈夫だと思う。最後の一軒はこの屋敷の五倍は広い公爵邸だが、ま、それもマキシが手伝ってくれるから問題ない」

「そっか……じゃあ、ぼくは冬休みの宿題の絵日記を書くことにするね!」

「そうだな、宿題を進められるならその方がいいな」

ライトの午後の方針が決まったところで、三人は食べ終えた食器を流しに下ろす。

ラウルとマキシも午後の予定を少し話し合う。

「午後はグリフィス家から始めるぞ。三時にはまた休憩がてら屋敷に戻っておやつを食べて、それから反対側のベイル家に取りかかる」

「分かった!午後の餅拾いも頑張ろうね!」

「おう、頼りにしてるぞ。ライトも宿題頑張れよ」

「うん!ラウルもマキシ君も頑張ってね!」

互いの健闘を祈りつつ、三人は食堂を出てそれぞれの持ち場に分かれていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

その日の夜。

冒険者ギルド総本部から帰宅したレオニスも交えて、今年最後の晩餐を四人で楽しんでいた。

「レオ兄ちゃんもお疲れさまー。特に事件とかは起きなかった?」

「ああ、去年のようにラグナ宮殿に駆り出されもしなかったし、何事もなく平和な一日だったわ」

「そっか、良かったね!」

「お前達も餅拾いはどうだった? 今年も何か面白ぇもん拾えたか?」

「うん!いくつか面白い形のを拾えたよ!マキシ君も面白い形の拾えた?」

「はい、僕も何個か気に入った形のお餅を見つけることができました!」

「そっか、そしたら後でまた見せてくれな」

「うん!」

「はい!」

ラウル特製カニしゃぶを突つきながら、今日の出来事を聞かせ合うライト達。

カニしゃぶの主役は氷蟹で、他にも砂漠蟹のボイルやジャイアントホタテの刺身など豪華な品々が所狭しと並ぶ。

まさに大晦日の食卓を飾るに相応しい豪勢さである。

ちなみにこのカニしゃぶに使われている鍋は、極々普通の鉄鍋だ。間違っても呪いの鉄鍋ではない。

そんなものをここで使ったら、せっかくの蟹の旨味が全部消えて台無しになってしまう。特に蟹という高級食材に対して、そのような失態は絶対に許されないのである。

今年最後の豪勢な晩餐を思う存分堪能したライト達。

食後のお茶を皆で楽しむべく、広間に移動する。

広間のテーブルに、それぞれの飲み物―――ライトはぬるぬるドリンク紫、レオニスとラウルはホットのブラックコーヒー、マキシはホットのカフェオレを飲みつつ、一息つく。

「さ、そしたらまずはぼくのお気に入りのお餅から披露するね!」

ライトは先に用意してあった小さな篭をテーブルの上に置き、篭の中から一つづつ丁寧に出して並べていく。

「えーとねぇ、ぼくの一番のお気に入りはコレとコレ!」

「これはまた……変なヒトデ型だな?」

「ぷくく……こ、これ……力瘤、か?」

「そう!二の腕に力瘤を作っているヒトデ!」

「「ブワーッハッハッハッハ!!」」

「アハハハハ!」

ライトの解説に、堪らず爆笑しているレオニスとラウル。もちろんマキシも笑いを堪えきれずに大笑いしている。

その変型星型は、二ヶ所が不自然に盛り上がった曲線を描いている。

それはライトが解説したように『力瘤を作るヒトデ』にしか見えなかった。

「ヒー、ヒー……ラ、ライト……お前、よくもまあ毎年こんな面白ぇもんを見つけるね……」

「これもね、一個しか見つけられなかったんだよ!」

「そ、そうか、そりゃ激レアだな……つーか、この形……見れば見る程笑えるわ」

「ライト君は本当に、面白いお餅を見つける名人ですよね!」

「「ウヒャハハハ!」」

ライト以外の三人が、皆揃いも揃って涙を滲ませながら大笑いしている。

レオニスに至っては、涙が滲むどころか流す勢いで大爆笑している。

腹が捩れるかと思うくらいに大笑いしていたレオニス。ようやくその笑いが落ち着いてきた頃、ライトに話しかけてきた。

「そ、そしたらライト、このヒトデ型は是非とも俺に譲ってくれないか?」

「もちろんいいよー!だってこのヒトデ、レオ兄ちゃんの仲間みたいなもんだもんね!」

「「ブフーーーッ!」」

ムキムキマッチョなヒトデ型の譲渡を求めるレオニスに、ライトもその意図を汲んで快諾する。

その意図とは『力瘤=筋肉=このヒトデは脳筋族、即ちレオ兄ちゃんの仲間!』である。

もちろんレオニスもそのつもりで譲渡を持ちかけたのだが、それを聞いたラウルとマキシが堪らず噴き出していた。

「はい、どうぞ!」

「おう、ありがとうな。この餅は特別にピースに頼んで、永久保存魔法をかけてもらってから飾るわ!」

「あー、それいいね!保存のために空間魔法陣に仕舞っちゃうと、わざわざ取り出さなきゃ眺めることできないもんね!」

「そゆこと。部屋に常時飾るには、外に出しておかなきゃならんからな!」

ニコニコ笑顔で力瘤ヒトデをレオニスに手渡すライトに、レオニスもまたニッコニコの笑顔で嬉しそうに破顔する。

お互いにお互いの考えがよく分かるようで、何よりである。

そんな人外ブラザーズの仲睦まじさに、ラウルとマキシが大笑いしながら讃える。

「アハハハハ!さすがは小さなご主人様だ!大きなご主人様のことをよーく分かってらっしゃる!」

「本当に仲が良くて、羨ましい限りです」

その後も一見ただの円形に見えて実は目玉焼き!な餅や、桜の花の形をした餅、ちょうちょ形の餅に手裏剣そっくりの餅など、それぞれ自慢の面白楽しい形の餅を他の皆に披露していく。

ラグナ暦813年の最後の夜も、ラグナロッツァの屋敷はいつも以上に一際楽しい笑い声が響き続けていた。