軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1055話 守護神の成長具合

『ンふぅ……相変わらず、このブラッシングというものは気持ち良いですねぇ……』

「シーナさんこそ、相変わらずすっごく綺麗ですべすべな毛ですね!」

『まぁ、ライトってば。口がお上手ですねぇ』

「えー、お世辞とかじゃなくてホントのことですよ? ね、ラウル?」

「ああ。ツェリザークの雪の白さにも負けないこの艶やかさは、銀碧狼ならではの美しさだよな」

『…………/////』

ブラッシングされながら、気持ち良さそうにうっとりとするシーナ。

ライト達との会話の中で、シーナの毛艶の良さを大絶賛されて照れ臭そうにしている。

ライトはもちろんラウルも本当に心からそう思っての言葉なのだが、こうも面と向かって褒められると気恥ずかしくなるらしい。

その反面、シーナはため息をつきつつ心の中で思う。

こんな口説き文句みたいなことを、臆面もなくサラッと言えてしまうのがこの人族達の末恐ろしいところよね……これでは氷の女王がラウルにメロメロになってしまうのも当然だわ……

何しろあの子は箱入り娘ならぬ、洞窟入り娘。異性どころか他者に対する免疫からして薄い子だもの。

……でも、私達親子以外にもあの子の世界を広げてくれる者達が必要ね。その点で言えば、この者達は安心できるわ。

あの子の尊厳を踏み躙ることなく、そして変な下心を持たずに対等に接してくれる者達だもの―――

心地良いブラッシングを受けながら、そんなことを考えるシーナ。

しかし、実はライトもラウルも全く下心がないとは言えなかったりする。

ライトの場合は『BCOでも大人気だった美麗敵キャラ、氷の女王様に会いたい!』であり、ラウルの場合は氷の女王の魔力をたっぷり含む氷雪が目当てであることが多い。

しかしそのどちらとも、氷の女王の尊厳を損なうような悪意は含まれない。むしろ氷の女王へのリスペクトの方が強いとすら言えよう。

なので、ライト達が氷の女王とお近づきになるのは全く問題ない。

するとここで、シーナがはたと何かを思い出したように口を開いた。

『……ああ、そういえば。氷の女王のところにも守護神が誕生したそうで。私達も守護神の玄武にお会いしましたよ』

「シーナさん達も玄武に会ったんですね!もう大きくなってましたか?」

『いいえ、まだそこまで大きく成長してはいませんでしたが……それでも氷の女王はとても喜んでいて、日々甲斐甲斐しく守護神の世話をしているようですよ』

「そうなんですね……それは良かった!」

シーナの口から氷の洞窟の守護神玄武の話が出てくるとは思わなかったライト。

氷の女王が嬉しそうに世話をしている、と聞き、ライトもほっこりとする。

ライト達が氷の洞窟の守護神玄武を孵化させたのは、今年の十月初旬。今から二ヶ月と少し前のことだ。

シーナの所感によると、玄武はあまり大きくなってはいない、ということだが、あれからどれくらい成長したんだろう?とライトは俄然気になってきた。

「ねぇ、ラウル、今から氷の女王様のところに行かない? 玄武に会いたい!」

「そうだな……せっかくここまで来たことだし、皆で氷の女王と玄武に会いに行くのもいいな。……シーナさんとアルもいっしょに行くか?」

『もちろんいいですよ。私も女王の顔を見に行きたいですし』

「ヤッター!アル、もっといっしょにいれるよ!」

「ワウワウ♪」

ライトの提案に、ラウルとシーナも賛同した。

氷の洞窟行きが確定したことに、ライトもアルも大喜びである。

「じゃ、早速行こうよ!アル、背中に乗せてもらってもいい!?」

「ワォン!」

「ありがとう!」

ライトがアルの背に乗り込み、早速アルが氷の洞窟の方角に向かって駆け出す。

そんなにとっとと走り出すと思っていなかったラウルとシーナ。一瞬ポカーン……とした後すぐに我に返る。

『え、ちょ、待、アル!? 貴方達、行動が早過ぎますよ!? 待ちなさーい!』

「アーッハッハッハッハ!ライトとアルが合わさると、いつも以上に元気だな!」

『ちょ、ラウル、笑い事ではありません!あの子達を追いかけなくては!』

「そう焦んなって。行き先は氷の洞窟と決まってんだ、俺達もそこに向かえばいいだけだ」

『だとしても、早いところ追いつかねば!行きますよ!』

「おう」

慌てふためくシーナに、腹を抱えて大笑いするラウル。

矢も盾も堪らず飛び出したシーナに、ラウルも勢いよく飛んでいく。

こうしてライト達は、黄泉路の池から氷の洞窟に向かって移動していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ライトとアルを追いかけて、氷の洞窟に到着したラウルとシーナ。

氷の洞窟の入口では、ライトとアルが待っていた。

しかもライトがアルのブラッシングをしている。余程早くに到着したようだ。

ハァ、ハァ、と息を切らしているシーナに、まだ余力があるラウルがライト達に声をかける。

「何だ、アルの毛繕いをする程長く待たせちまったか?」

「あ、ラウル、ううん、そこまで長くは待ってないけど。アルのブラッシングはまだしてなかったから、ここで少しやっておいてあげたかったんだー」

「そっか。もうしばらくゆっくりとブラッシングしてていいぞ。シーナさんが結構疲れてるようだしな」

「うん!」

「ワフゥン♪」

ラウルのブラッシング継続許可に、ライトが破顔する。

腰に手を当て悠々と立っているラウルの後ろで、シーナがへばっている。

シーナもまだ運動不足になるような年齢ではないはずだが、それでもやはり子供達のパワフルさには勝てないらしい。

そこから五分くらい、休憩も兼ねてアルのブラッシングをしただろうか。

息切れしていたシーナの呼吸も次第に整い、すっと立ち上がった。

『……皆、待たせましたね。さあ、氷の洞窟に入りましょうか』

「ワォン!」

『アルも毛並みを綺麗に整えてもらってよかったですね』

「ワゥワゥ♪」

ライトにブラッシングしてもらって、とてもご満悦の様子のアル。

綺麗になって喜ぶ我が子を見て、シーナも嬉しそうに微笑む。

そしてライト達は満を持して氷の洞窟に入っていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

氷の洞窟の中を、悠々と進んでいくライト達。

シーナが同行しているので、魔物除けの呪符なども必要ない。

魔物に襲われる心配なく、洞窟の最奥まで進んでいったライト達。

最奥の間では、氷の女王と玄武がライト達の到着を待っていた。

『おお、ラウルにシーナ姉様!アルにライトもよく来てくれた!』

ライト達が挨拶する前に、待ってました!とばかりにラウルの胸に飛び込んだ氷の女王。

ライト達が氷の洞窟に入った時点で、氷の女王にはそれが分かっている。かと言って、氷の女王が即座に最奥の間を飛び出して出迎えに行くというのは、はしたない気がする氷の女王。

なので、ライト達が最奥の間に到着するまで、氷の女王はやきもきしながら待っていたという訳だ。

氷の女王の熱烈歓迎に、ラウルが小さく笑いながら彼女の頭を優しく撫でる。

「氷の女王、久しぶりだな。元気にしてたか?」

『もちろん!我だけでなく、玄武様も息災に過ごしておるぞ!』

「……そのようだな」

「クアッ☆」

氷の女王の背中にくっついていた玄武が、後ろからヒョコッ☆と顔を出した。そしてラウルに向かってピッ☆と右前肢を上げた。何と凛々しい挨拶であろう。

そして氷の女王の背後から肩に移り、前に出て氷の女王の腕の中にすっぽりと収まる玄武。氷の女王に抱っこされて、とてもご機嫌である。

しかし、氷の女王自体が華奢な身体つきであり、その腕に抱っこされてすっぽり収まる程度の玄武。

玄武が孵化した直後は、ライトの手のひらに収まるサイズだった。それを考えると、やはりシーナが言っていたようにそこまで大きく成長していないようだ。

とはいえ、全く大きくなっていない訳でもない。

非常にゆっくりとではあっても着実に成長していく、いわゆる『大器晩成型』なのだろうか。

ご機嫌な様子の玄武を見て、ライトが嬉しそうに声をかける。

「氷の女王様、こんにちは!玄武も元気そうで良かったです!」

『おお、ライトも相変わらず元気いっぱいで良いことだ』

「ワゥワゥ!」

『アルもよう来たの。アルの場合はあまりにも元気過ぎて、姉様を困らせてはおるまいな?』

元気いっぱいなわんぱくブラザーズに、氷の女王も微笑みながらライト達の頭を撫でる。

あれ程人嫌いで名を馳せていた氷の女王が、今ではライトの頭を撫でるまでに至った。これは実にすごいことであり、それを見守っていたシーナにとっても喜ばしいことであった。

『ささ、皆、このようなところで立ち話も何だから、奥に来ておくれ。玄武様の立派なお姿も、皆によく見てもらいたいしの』

「そうだな。そしたら俺達の早めの昼飯も兼ねて、皆でお茶会にするか」

「うん、それいいね!ぼくもお腹空いてきたところなんだ!」

「じゃ、ライトもお茶会の支度を手伝ってくれ」

「はーい!」

氷の女王の誘いに、ラウルが頷きライトも賛同する。

時刻は十一時半手前、少し早めのお昼ご飯をここで摂るのもいいだろう。

ライト達は最奥の間の奥深く、玉座の前まで移動して昼食兼お茶会の支度をし始めた。