軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1054話 雪狩りの後のひと仕事

ライト達とアル母子が合流してから、一時間程経過した頃。

ラウルは黄泉路の池を中心とした、直径5kmの範囲の雪のほぼ全てを掬い取った。

雪全てと言っても、上から30cmくらいまでの綺麗な上澄み部分だけを採る。欲張って地面から根こそぎ採ると、どうしても土や砂が混じってしまうからだ。

美味しいとこどりだけを狙うラウル、さすが万能執事である。

「とりあえず、これだけ採りゃ十分かな。…………さて、ライト達はどうしてるかな?」

目当ての雪をたんまりと確保したラウル、とりあえず一番最初に来た黄泉路の池まで戻ってみる。

するとそこには、黄泉路の池の中で泳いでいるすっぽんぽんちびっこブラザーズ&ウィカがいた。

池の横にはライトが脱いだ泥だらけの服と、さらにその横でぐったりと疲れきって腹這いで寝そべるシーナがいた。

「おぉおぉ、こりゃまた今回も派手に汚したもんだな」

『あら、ラウル……おかえりなさい。雪狩りとやらは、存分に果たしましたか?』

「おかげさまでな。そういうシーナさんは、随分と草臥れてるようだな?」

『……子供というのは、どうして遊ぶことにかけてはあんなにも体力底なしなんでしょうねぇ』

心底疲れ果てたシーナが力無く呟く。

その様子を見るに、ライト&アルのわんぱくブラザーズに余程振り回されたのだろう。

成獣であるシーナのスタミナをほぼ全て奪い切るとは、一体どれだけ遊び駆け回りまくったのだろう。

そんなシーナに、ラウルは事も無げに答える。

「そりゃあな、子供なんてそんなもんだ」

『そんなもんですかねぇ……』

「そうさ。そしてそれは、元気な子供ならではの特権だ。病で臥せってたり病弱な子には絶対にできんことだ」

『そうですねぇ……元気で健康な証と思えば、それはとても幸せなことですね』

「そういうことだ」

したり顔で説くラウルの言葉に、シーナも同意し頷く。

ラウルのその言葉に妙な説得力があるのは、先日のラグナ神殿爆発騒動が原因だ。

その事件のせいで、一週間近く意識不明だったイグニス。いつも明るく元気だったイグニスがあんなことになり、見舞いで寝たきりのイグニスをみる度にラウルは胸が締め付けられる思いだった。

あの一件により、ラウルはつくづく『元気で健康に過ごせる毎日が一番大事で幸せ』ということを悟ったのだ。

ラウルとシーナがそんな話をしていると、ラウルが来たことに気づいたライトが黄泉路の池の中から声をかけた。

「あッ、ラウル!おかえりなさーい!」

「おう、ただいま。ライトもアルとたくさん遊んできたか?」

「うん!気がついたら結構泥だらけになっちゃったから、この黄泉路の池でお風呂してるのー!」

「ンー、ここは風呂じゃねぇんだけどな……ま、いっか。十分身体が温まったら、一人づつ上がれよー」

「はーい!」

「ワォン!」

『うにゃッ☆』

ラウルの呼びかけに、何故かウィカまでいっしょに返事をしている。

ウィカは泥遊びはしていないはずだが、きっとライトやアルと黄泉路の池で泳ぎ遊ぶのがとても楽しいのだろう。

ライトは平泳ぎ、アルは犬かきならぬ狼かき、ウィカはラッコのように仰向けでぷかぷか浮いて、皆黄泉路の池の中で楽しそうに遊んでいる。

ライト達が黄泉路の池で楽しく遊んでいる間、ラウルは池の横でライトが汚した服やマントに洗浄魔法をかけたり、身体を拭くための大判バスタオルなどを用意している。

まるで保育士のような手際の良さは、ラウルが将来子持ちになったらさぞかし育児上手なイクメンパパになれるであろうことを予感させる。もっとも、そういう将来が来るかどうかは現時点では定かではないが。

ラウルの湯上がり準備が整った頃、黄泉路の池の中のライトがラウルに声をかけた。

「ラウルー、そろそろ上がるねー」

「おう、誰が一番最初に上がるんだ?」

「ぼくー!」

「了解ー」

一番最初にライトが池から上がる宣言をしたライト。水面の上に立ち、ピョーン!と飛び跳ねて池の周りの岩に飛び上がった。

湯上がりのライトの身体を、ラウルが大判バスタオルで優しく包む。

身体をしっかりと拭き、湯冷めしないうちに服を着るライト。

そのまま自分で頭をワシャワシャとバスタオルで拭き、自分の手で風魔法を駆使して髪を乾かし始めた。

何故ライトがこんなに急いで身支度を整えるのかと言えば、その後に上がってくるアルを迎えるためだ。

池から上がってから三分もしないうちに、服を着て髪の毛も乾かしきったライト。まだ池で泳いでいるアルに向かって声をかけた。

「アル、お待たせー!そろそろ上がってきていいよー!」

「アォーン!」

ライトの掛け声に、アルが嬉しそうな声で答える。

アルはライトのいるところまで泳ぎ、岩を器用によじ登って池から上がった。

そして岩の上をトトト……と歩き、ライト達がいる場所から少し離れたところで犬ドリルならぬアルドリルで水気を飛ばす。

それからすぐにライトのもとに戻り、ライトとラウルがアルの身体を大判バスタオルで拭き始める。

アルがもっと小さかった頃は、ライト一人でもバスタオルで拭いてあげられたのだが。今ではライト一人だけでは拭ききれない程アルの身体もすっかり大きくなった。

なので、ラウルと二人がかりで湯上がりの世話をしなければならないのである。

まだ水が滴るアルの、艶やかな銀碧色の身体を手早く拭き上げる。

頭から足から尻尾まで、全て水気を取ってからラウルと二人がかりで風魔法をかけて毛を乾かしていく。

温かい風を四方八方から受けて、気持ち良さそうに目を細めるアル。

アルもまた、池から上がって三分もしないうちに完全に身体が乾いた。

「アル、綺麗になって良かったね!」

「アォン♪」

ふわふわもふもふになったアルの身体に、ライトがバフッ!と抱きついた。

アルもまたライトに抱きつかれて、とても嬉しそうにしている。

するとそこに、先程までヘロヘロだったシーナがやってきた。

『まぁ、アル、見違える程綺麗になりましたねぇ』

「ワウ!」

『ライト、ラウル、アルの世話を二人に任せてしまってすみませんね』

「いいえ!ぼくもアルと久しぶりにお風呂に入れて、すっごく楽しかったです!」

「そうだな、うちの小さなご主人様も友達と風呂に入れて大満足したようだし、何も問題はない」

『黄泉路の池をお風呂扱いするのは、世界広しと言えど貴方達くらいのものでしょうね……』

さっぱりと小綺麗になったアルに声をかけながら、ライトとラウルにも詫びるシーナ。

我が子を他人に任せっ放しというのが申し訳なかったようだが、シーナはライト達の子守りに一時間も奔走して疲れ切っていたので仕方がない。

しかも当のライトはアルと遊べて楽しかったと言うし、ライトの保護者であるラウルも別に気にしてなどいない。皆楽しかったのだから、何も問題はないのだ。

するとここで、ライト達を気遣うシーナにラウルが話しかけた。

「……さ、じゃあ今度はシーナさんの毛繕いをするか」

『……え? 私まで毛繕いしてもらっていいのですか?』

「もちろん。俺が雪狩りに専念できたのは、ライトとアルを見ててくれたシーナさんのおかげだからな。な、ライト?」

「うん!シーナさんにもお礼をしなくちゃね!」

シーナの毛繕いを申し出たラウルに、シーナが戸惑いつつ聞き返す。

シーナがブラッシング好きということは、ラウルも知っている。

ライト達の子守りで疲れたシーナへの労いとして、またわんぱくブラザーズの子守りというなかなかの重労働に対しての報酬も兼ねていた。

そうしたラウルの粋な計らいに、もちろんライトも大いに賛同している。

ライト達にここまで言われたら、シーナとしても吝かではない。嬉しそうに微笑みつつ、徐に口を開いた。

『そ、そういうことでしたら、是非ともその話を受けましょう』

「そしたらぼく、アイテムリュックからブラッシング用のブラシを持ってくるね!」

「おう、頼んだぞ。シーナさんは楽な姿勢で寝ててくれな」

『分かりました』

ライトがブラッシング用のブラシを取りに行っている間に、シーナが地面に寝そべりブラッシングをされる体勢で待っている。

二本の最高級ブラシを持ってきたライト、そのうち一本をラウルに渡した。

そして二人がかりでシーナのブラッシングを開始した。

ライトはシーナの足や横の側面を丁寧に梳き、ラウルは宙に浮いて主に背中などライトだけでは手が届かない部分を担当する。

もちろんブラッシング中に抜けた毛は、その都度まとめてライトのアイテムリュックに収納していく。

今回もまた銀碧狼の毛糸が作れるくらいに採取できるだろう。

銀碧狼の毛糸ができたら、今度のクリスマスプレゼントにも使えそうだなー。……よし、銀碧狼の毛糸で特別なアイテムを作ろうっと!

……って、誰のプレゼントにしようかな? 今まで銀碧狼の毛糸のものをプレゼントしたのは、フェネぴょんだけだけど……今度は誰にプレゼントしよう?

…………ンー、ここはやっぱレオ兄ちゃん一択かなー。……そしたら、いつも身につけてもらえるようなものにしないとね!

シーナの身体を丁寧にブラッシングしながら、頭の中であれこれと思案を巡らせるライトだった。