軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1053話 日曜日の過ごし方

ライト達が目覚めの湖で貝獲りやら散々遊び尽くした翌日の日曜日。

この日のライトは、ラウルとともにツェリザークに来ていた。

何故かと言うと、前の日にラウルが「そういやツェリザークの雪もかなり積もっただろうし、ぼちぼち雪狩りにも本腰いれていかなきゃなー」と言っていたからである。

「ラウル、ツェリザーク行くならぼくもいっしょに行っていい?」

「もちろんいいぞ。ライトも雪狩りするのか?」

「ンーとねぇ、それももちろんいいんだけど……ぼく、ルティエンス商会にも行きたい!」

「ああ、あの面白雑貨屋か。何か欲しいもんでもあんのか?」

「皆にあげるクリスマスプレゼントを見たいんだよねー」

「……あの店に、クリスマスプレゼントになりそうなもんなんか売ってるのか……?」

ライトがツェリザークに行きたい理由を聞いたラウル、ものすごーく渋い顔をしながら考え込んでいる。

ルティエンス商会のことを『面白雑貨屋』というラウルも大概だが、確かにあの店にライトが気に入りそうな品があるかと問われれば誰もが懐疑的に思うだろう。

だが、ラウルが考え込むのはほんの数秒だけ。

ライトが行きたいというならば、そこが余程危険な場所でもない限り否定する必要などない。

しかもルティエンス商会ならば、ラウルも買い物をしたことがあるし、全く知らない店でもない。

ならばラウルに否やはない。こうして日曜日は、ライトとラウルのツェリザーク行きが決まったのであった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

日曜日の午前九時を少し過ぎた頃。

二人はウィカとともに、ラグナロッツァの屋敷からツェリザーク郊外の黄泉路の池に水中移動した。

ライトがこうして黄泉路の池に来るのは、十月初旬に水の女王と氷の女王に引き合わせるために連れてきた時以来か。

ラウルは月に一度か二度の頻度で、ウィカにここに連れてきてもらっては郊外の雪を採取しているらしい。

今のツェリザーク郊外の積雪量は、多いところで約100cm。これでも今年は積雪量がかなり少ない方らしい。

本当に雪が多い年は、ワンシーズンのうちに20メートル以上積もるのだという。想像するだけで寒くなる数字だ。

この黄泉路の池の近辺には、人族はおろか魔物ですらも滅多に近寄らない。

足跡一つない綺麗な雪原、その純白の雪をライト達はひたすらスコップで採取しては、空間魔法陣やアイテムリュックに入れていく。

ちなみにその間ウィカは、黄泉路の池で温泉よろしく湯船に浸かってリラックスしている。

ウィカは本当の猫ではないので、そこまで寒がりではないのだが。それでも寒いものは寒い。

さらにはウィカは水の精霊なので、決して湯あたりしたり逆上せたりすることもない。黄泉路の池の温かさだけを享受できる、という訳である。

そうしてライト達が雪狩りに温泉に、思い思い過ごし方を堪能していた、その時。遠くから犬の鳴き声のようなものが聞こえてきた。

それは、ライトの来訪を察知したアルの声だった。

「ワォン!」

「あッ、アル!久しぶり!」

「ワフワフゥ!」

遠くから勢いよく駆けてきて、ライト目がけて飛び込んでくるアル。

ライトもそれに負けずに、きちんとアルの大きな身体を受けとめている。

早速雪原に転がって戯れるライト達に、ラウルが近づいてきて声をかけた。

「アル、久しぶりだな」

「ワウ!」

「今日もかーちゃんといっしょに来てるのか?」

「ワウワウ」

「そうか、もうすぐここに来るのか」

アルが何と話しているのか、全て分かっているようなラウル。

彼には動物や魔物と会話する能力もしく翻訳能力など、特にないはずなのだが。アルの表情から読み取っているのだろうか。

そしてその言葉通り、しばらくしてアルの母シーナが現れた。

シーナの姿を見たライトが、嬉しそうにシーナにも挨拶をする。

「あ、シーナさん、こんにちは!お久しぶりです!」

『ライトにラウル、こんにちは。アルが突然走り出したから、もしやと思ったら。やはり貴方方がいたからなのですね』

「アルもシーナさんも、お元気そうで良かったです!」

『ありがとう。貴方達も元気そうで何よりです』

雪原の白さにも決して負けない、美しい銀碧色の毛並を持つ銀碧狼。

相変わらずの美しさに、ライトは惚れ惚れとしながらシーナと再会の和やかな挨拶を交わす。

この銀碧狼の母子、アルとシーナに一番最近会ったのは、ライトが夏休みだった八月中旬頃。人族嫌いの氷の女王に会うために、シーナに仲介役としてついてきてもらった時以来か。

シーナの尽力のおかげで、ライト達も今では氷の女王とも懇意になれた。シーナの執り成しにより、ライト達は氷の女王との縁が持てたのである。

ライトはもちろんラウルもそのとことに感謝しているので、ラウルがシーナに向かって声をかけた。

「シーナさんも久しぶりだな」

『貴方も息災そうで何よりです。今日は雪を採りに来たのですか?』

「ああ。冬も深まってきたし、この近辺もだいぶ雪が積もってきただろうと思ってな」

ラウル達の来訪目的を聞いたシーナ。

ラウルから帰ってきた予想通りの答えに、シーナがクスクスと笑う。

『雪をわざわざ採りに来るとか、いつ何回聞いても本当に不思議なことをするものですねぇ』

「ツェリザークの雪は、俺にとってなくてはならないものだからな」

『この極寒の地を厭う者が多い中、そんなことを言うのはラウル、貴方くらいの者ですよ?』

「お褒めに与り光栄だ」

揶揄うようなシーナの言葉に、ラウルはシレッと受け流す。

もちろんシーナとしては褒めたつもりではなかったが、それでも自分が住まう地の名産品?をこよなく愛し、足繁く通ってくる者に対して決して悪い気などするはずがない。

思いがけない切り返しに、シーナはますます笑う。

『これからしばらくは雪集めに専念するのですか?』

「ああ、今日もできる限り雪をいただいていくつもりだ」

『では、その間アルがライトと遊びたがるでしょうから、ライトとアルのことは私が見ていましょう』

「そうしてもらえると助かる」

保護者同士の役割分担が決まり、ラウルがライトに声をかける。

「ライト、俺はこのまましばらく雪狩りしてるから、ライトはアルと遊んでな」

「うん!ラウルも雪狩り頑張ってね!」

「おう、任せとけ。ライトもあまり遠くに離れるんじゃないぞ。……ま、シーナさんがライト達のことを見ててくれるから大丈夫だとは思うが」

「分かったー!」

大きなアルが思いっきりおぶさっている中、ライトは元気いっぱいでラウルの注意に答える。

そしてとっとと駆け出してしまったライトとアルに、ラウルも苦笑いである。

「さて、と。じゃあ俺も頑張るか。シーナさんもよろしくな」

『ええ、任せてください。……って、アル!貴方、走るの早過ぎますよ!? ちょっと待ちなさーい!』

ライトとともにバビューン!と走り去ってしまったアルに、シーナが慌ててその後を追いかけ始める。

わんぱくな子を持つ親は、日々苦労が絶えないようだ。

シーナが慌ててすっ飛んでいく様子を、ラウルは小さく笑いながら見送ってから再び雪狩りに勤しんでいた。