軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1007話 連絡手段の確立

その後ライト達は、エリトナ山山頂に出てお茶会をすることにした。

火口周辺の少ない平地に、テーブルと椅子を出してセッティングしていくライト。

それらのテーブルセットは、火の姉妹達用に用意した大理石でできているので、彼女達の火で燃える心配はない。

テーブルの上には、ホットココアなどの温かい飲み物とクッキーやアップルパイなどを並べていく。

そうして準備を整え、皆でお約束の「いッただッきまーーーす!」を唱和した。

ラウル特製の美味しいスイーツを頬張りながら、様々な話をするライト達。

エリトナ山火口付近というスリリングな場所でのお茶会は、今日も平和で長閑なひと時である。

「炎の女王様、洞窟内は特に異変などは起きていませんか?」

『ああ、おかげ様で日々恙無く過ごせておる。先日汝らが孵化させてくれた朱雀様も、今は妾の腕の中にすっぽりと収まるくらいに大きく成長なされた』

「そうなんですか!? 今度またレオ兄ちゃんやピィちゃんといっしょに、朱雀にも会いに行きますね!」

『ああ、是非ともそうしてくれ。きっと朱雀様も喜んでくださるだろう』

炎の女王から朱雀の成長ぶりを聞いたライト、花咲くような笑顔で喜んでいる。

炎の洞窟の守護神、朱雀が炎の洞窟内で孵化したのが今年の八月初旬。それから約三ヶ月半が経過した。

生まれた直後は、炎の女王が両手で包み込める程の小さな雛だった。

ふっくらまん丸でとても可愛らしい雛だったことを、ライトもよく覚えている。

それから三ヶ月半が経過し、今では炎の女王の腕の中に収まるサイズに成長したというではないか。

あのまん丸な姿のままで大きくなったのかな? それとも、成長するにつれてほっそりスリムになって、如何にも朱雀!って感じで格好良くなってるのかな?

これは是非とも朱雀の成長した姿を見たいぞ!

ライトが内心で大興奮しつつ、朱雀との再会を願うのも当然である。

そしてライトは火の女王にも近況を尋ねた。

「火の女王様はどうですか? エリトナ山に変化はないですか?」

『ああ。其方達が過日、あの骸骨の野原を綺麗さっぱり片付けてくれたおかげで、このエリトナ山の空気もかなり清浄になってきた。改めて礼を言う、本当にありがとう』

「それは良かったです!もし何かあったら、ぼく達にすぐに教えてくださいね!…………って、どうやって連絡してもらえばいいですかね?」

平和に過ごせている、という火の女王の言葉にライトはまたも笑顔で喜ぶ。

だが、決して油断はできない。今は平和に過ごせていても、いつ何時またスケルトンの群れ=死霊兵団が襲来するか分からないからだ。

高位の存在から力を簒奪するために、常に力ある者を付け狙う廃都の魔城の四帝。その悪意と狡猾さは底知れない。

四帝が健在である限り、ライト達は常に警戒し続けていく必要があるのだ。

とはいえ、もし万が一再び火の姉妹達が何者かに襲われた場合などに、一体どうやって彼女達から連絡を入れてもらえばいいのだろう?

例えば他の属性ならば、同属性の精霊達に頼んで伝言を託すことも可能だ。

実際に暗黒神殿に住む闇の女王は、カタポレンの森の中で起きた大きな異変―――神樹ユグドラツィが何者かに襲われた際に、レオニスに向けて闇の精霊を遣わしてその危機を教えてくれた。

しかし、唯一火属性だけはその手段を用いるのは難しい。

火の精霊がカタポレンの森の中を彷徨いて、万が一にも火事に発展したら困るからだ。

火の精霊を介した伝言が難しいとなると、どうやってその危機を伝えてもらえばいいのか。はたとした顔で考え込むライトに、火の姉妹達もともに考え込む。

うんうんと唸り悩む中、炎の女王がふとテーブルの上にあるスイーツを見て呟いた。

『……そういえば、汝ら人族は火を用いてこのスイーツ?なるものを生み出しておるのだよな?』

「そうですね。このアップルパイなんかも、ラグナロッツァの屋敷の窯でラウルが焼いていて…………あーーーッ!そうか!窯だ!!」

『『!?!?!?』』

炎の女王の問いかけにヒントを得たライトが、思わず大きな声で叫んだ。

そしてそのライトの大声に、火の姉妹達がビクンッ!と驚いている。

「あッ、驚かせちゃってすみません……」

『いや、気にせずとも良い。それより、何か良い案でも思い浮かんだのか?』

「はい。実はこの美味しいスイーツを作っているのは、ラウルという妖精なんですが―――」

ライトが思いついたことを、火の姉妹達に順を追って説明していく。

料理一筋のラウルは、料理をしない日は一日たりとてない。そしてその料理の中で、一日に何度も火を使う場面がある。

焼く・煮る・茹でる・蒸す、これらの調理方法を用いる際には必ず火を使う。

そしてラウルが使う火は、これだけではない。

畑の肥料に用いる魚介類の骨や殻、それらを焼く際にもカタポレンの家の横にある焼却炉の中で火を使っているのだ。

そうした火を使っている場面ならば、火の精霊を用いてラウルに伝言を託すことは十分に可能なのではないだろうか?

ライトはそう考えたのだ。

その話を聞いた火の女王は、ふむ……としばし考えてから徐に口を開いた。

『それはなかなかに良い案だと思う。ただし、火の精霊がそのラウルという者の居場所を正確に特定するには、その者にも妾達姉妹の加護と勲章を持たせた方が良かろうな』

『そうですね、妾もそう思います。妾達より力の弱い精霊でも、加護や勲章を目印にすれば必ずやその者のもとに辿り着くことができましょう』

火の女王の提案に、炎の女王も大いに同意し頷く。

特に何の目印も持たない者を闇雲に探し回るのは、例え強大な力を持つ属性の女王であっても時間も手間もかかり、非常に効率が悪い。

だが、己の属性と同じ加護や勲章を持つ者を探すならば、それは一瞬にして非常に容易いものになる。女王に比べて力が弱い精霊であっても、それは同じことだ。

かつて闇の女王がレオニスに向けて遣わした闇の精霊も、ライトやレオニスが持つ【闇の女王の加護】を目印にしてライト達の居場所を探し当てたのだ。

火の姉妹達の案を受けて、ライトが明るい声で彼女達に答える。

「じゃあ、近いうちにラウルを連れてまたここに来ますね!」

『ああ、よろしく頼む』

『いつでも妾の洞窟に来るが良い。汝ら兄弟が連れてくる者ならば、いつ何時でも受け入れようぞ』

ラウルを火の姉妹達の連絡窓口にするべく、ラウルとともにエリトナ山再訪を誓うライト。

いつも火を使って調理をしているラウルにとっても、火の姉妹達からの加護や勲章下賜は願ってもないことだろう。

火の姉妹達からの連絡手段が確立できそうなことに、ライトだけでなく火の姉妹達も嬉しそうに微笑んでいた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

非常に有意義なお茶会を経て、ライトは二つ目の目的のために再び動き出す。

「火の女王様、食事の後の腹ごなしとしてエリトナ山にいる魔物を狩ってきてもいいでしょうか?」

『それは構わんが……其方一人で魔物達に立ち向かうのか?』

「はい!こないだここに来たピィちゃんのために、鬼火や荒魂の核を持ち帰ってあげたいんですよね!あと、火山蜥蜴なんかも狩りたいんです!」

『其奴らもそこそこ強い魔物なのだが……其方一人で本当に大丈夫なのか?』

素材集めのための魔物狩りをしたい!というライトに、火の女王が心配そうな顔で問い質す。

だが、ライトもここで引き下がる訳にはいかない。

マキシマスポーション量産のためには、何が何でも火山蜥蜴を大量に確保しなければならないのだ。

もちろん他の理由『鬼火や荒魂の核をピースの土産に欲しい』も本当のことだ。

それらは魔石とは微妙に違う物質らしいので、魔術師ギルドでも研究対象となっている。

これをまたピィちゃんにプレゼントすれば、きっと喜んでくれるよね!というのも、本当の本当にライトの本心なのである。

それら全ての目的を叶えるべく、ライトはニッコニコの笑顔で火の女王に話しかけた。

「頑張ります!これも、将来立派な冒険者になるための修行ですから!」

『頑張る云々以前の問題なのだが……まぁいいか、ライトならば多少のことではへこたれないだろうし。何事も経験というし、死なない程度の怪我ならば、其方にとっても成長の糧となろう』

「心配してくれてありがとうございます!ぼくもレオ兄ちゃんやピィちゃんのように強くなって、将来は女王様達を守れるような存在になりたいんです!」

『フフフ、良い心がけよの。では、思う存分狩りをしてくるが良い。その間妾は炎の女王とともにマグマ浴をしておるので、気が済んだら火口にて呼びかけるがよい』

「はい!」

半ば呆れ顔ながらも、苦笑しつつライトの願いを聞き入れた火の女王。

死なない程度の怪我なら問題ない!と宣う火の女王も、なかなかに大雑把である。

しかし、ライトにとってはそれこそがありがたいことだった。

火の女王の承諾を無事得たライトは、火の姉妹達に見送られながらエリトナ山探索に出かけていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうしてエリトナ山の探索に出たライト。

もちろん魔物除けの呪符は使わないし、マグマの中で自由に動くために身に着けていた火の勲章や炎の勲章もアイテムリュックに仕舞い込んだ。

そうして一見普通の人族に戻ったライトは、早速数多の魔物達に襲いかかられる。

ライトのお目当ての鬼火や荒魂、火山蜥蜴だけでなく、エンプレスホーネット、獄炎茸、ボルケーノスライムなどが次々と出てきては、ライトの必中スキル【手裏剣】でバッタバッタと薙ぎ倒されていく。

狩っては収納し、収納してはまた狩って、をひたすら繰り返すライト。

火口がある山頂からエリトナ山の麓に向かって徐々に下っていく。

そうして三十分程が過ぎた頃、とある地点でライトは違和感を感じ取った。

それは、このエリトナ山の結界のような何か。ライトがレオニスとともに初めてエリトナ山に来た時にも感じ取っていたものだ。

そしてその違和感の境目は、エリトナ山の一番低い標高地点より少しだけ上にあった。

そこから上に行くと、何者かがエリトナ山に入ってきたことが火の女王にも伝わる。

だが、その境目より下にいるうちは火の女王が感知することはないはず。ライトはそう考えつつ、マイページを開いた。

エリトナ山の大部分が火の女王のサーチ範囲に含まれる中で、その幅1メートル弱の細い外周部分。ここがまさにライトが探し求めていたマッピングポイントであった。

ここにマッピングポイントを設定すれば、ライトが行きたい時にいつでもエリトナ山に行くことができるようになる。

もちろんライトとしては、エリトナ山の主である火の女王に黙って魔物狩りをするつもりはない。マッピングポイントに移動した後は、魔物狩りをこなしつつエリトナ山山頂に向かって進み、必ず火の女王に挨拶をするつもりだ。

ライトはマイページを開いた後、素早くマッピングの地点登録を済ませる。

ライトのマッピングの八ヶ所目となるこの場所は『エリトナ山麓/地点A』と名付けられた。

「……よし、これでいつでもエリトナ山に来れるようになったぞ!」

ライト独自のエリトナ山往復手段を確立したライト。

マイページを閉じて、上機嫌で火口に戻っていった。