軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

394話:草津に行こう!

服屋を出て、車で草津へと向かう。

高速道路に乗ると、バレッタは「うわあ」と声を上げた。

「は、速い……ちょっと怖いです」

ぐんぐん上がっていく速度メーターの数字を見て、バレッタは心配そうだ。

「高速道路ですからね。100キロくらいは出し続けないと」

「1時間で100キロも進むなんて、自動車って本当にすごいです……」

「あっちじゃ、バイクに乗ってもこんなに速くは走らなかったですもんね」

「ええ。こんな道路があるなら、どんなに遠くてもどこでも行き放題ですね」

あれこれ話しながら走り続け、サービスエリアの入口が見えてきた。

「サービスエリア、寄ってみます?」

「寄ります!」

速度を落とし、サービスエリアに入る。

駐車場にはたくさんの普通車やトラックが停まっていた。

「わ、混んでますね」

「ですね。平日だけど盛況だ」

空いている場所に駐車して、車を降りる。

目の前にそびえ立つ大きな建物に、バレッタは目をキラキラさせていた。

「大きいですね! それに、何だか建物の造りがオシャレです。どことなく、さっきまでいたお屋敷に似てますね」

「古民家っぽい形ですよね。俺、トイレに行ってきますね」

「私はお店の中を見ててもいいですか?」

「いいですよ。財布、渡しておきますね」

財布を受け取り、バレッタは一良と別れて施設の中へと入った。

たくさんの土産物のお菓子や、冷蔵食品が並んでいる。

客もたくさんおり、大賑わいだ。

「おー」

感心しながら、あれこれ見て回る。

土産物だけでなくレストランもあり、いい匂いが漂ってくる。

――どれも美味しそう……お腹が空いてきちゃった。

乾物コーナーを見ていると、バウムクーヘンの試食用のタッパーを見つけた。

フタを開け、1つ取り出して口に入れる。

「ん、美味しい!」

思わず声を漏らして喜ぶバレッタ。

近くを通ったカップルの彼氏が、「うお、天使か」と思わずこぼしてしまい、彼女に肩を引っ叩かれていた。

他にも煎餅や漬物の試食を見つけて楽しんでいると、一良がトイレから戻って来た。

「お、試食ですか」

「はい。どれも美味しいです。はい、カズラさん」

バレッタが楊枝でたくあんを1つ取り、一良に食べさせる。

程よい塩気とコリコリした歯応えで、抜群に美味い。

「うん、美味い。気に入ったなら、買ってもよかったんですよ?」

「帰りに買おうかなって。冷蔵品ですし」

「ああ、確かに。何か食べていきません? 小腹が空いちゃって」

「はい! 私、ラーメンが食べたいです!」

フードコートに移動し、2人で醤油ラーメンを注文した。

大手チェーン店の、いわゆる「家系ラーメン」というやつだ。

呼び出しベルを受け取り、セルフの水を汲んでから空いている席に座る。

「ここ、楽しいですね。美味しいものがたくさんあります」

バレッタが楽しそうに、周囲を眺める。

たくさんの人が食事を楽しんでいて、とても賑やかだ。

「バレッタさん、食べたことのないものばかりですもんね。ラーメンも、カップ麺以外は初めてですよね」

「はい。雑誌で見てから、ずっと食べたいなって――」

バレッタが言いかけた時、呼び出しベルが「ピピピ」と音を出しながら激しく震えた。

バレッタは思わず「ひゃあ!?」と声を上げてしまう。

周囲の客の視線が集まり、顔を赤くした。

「あはは。やっぱりびっくりした」

「うう、こんな音が出て震えるなら、教えてくださいよぅ」

「ごめん、ごめん」

一良がラーメンを取りに行き、すぐに戻って来る。

いただきます、と食べ始めた。

「ふーっ、ふーっ……ん、美味しい! カップ麺と全然違いますね!」

「おっ、ほんとだ。こりゃ美味い」

「こんなに美味しいんですね……お肉、すごく柔らかいです」

「トロトロで美味いですね」

そうして、2人はのんびりとラーメンを楽しむのだった。

サービスエリアを出て、再び草津へと向かう。

バレッタはバニラのソフトクリームを食べており、とてもご機嫌だ。

「これ、すっごく美味しいです!」

「はは、気に入りましたか」

「カップのアイスとは、また違った感じの美味しさです。はい、カズラさんも」

「ありがと」

バレッタに一良も食べさせてもらう。

下道を進み、草津市街に入った。

予約していたホテルに直行し、駐車場に停める。

ホテルは湯畑のすぐ近くだ。

「硫黄の匂いがしますね」

車を降りるなり感じる硫黄の香りに、バレッタが鼻をひくつかせる。

「湯畑のド真ん前ですからね。先にホテルに、車を停めさせてもらうって言いに行きましょう」

荷物を持ち、ホテルの玄関に向かう。

巨大なホテルの外観を、バレッタはお上りさんよろしく、「おー」と見上げていた。

ロビーに入り、受付へと向かう。

時刻は正午だが、車を停めるのは問題ないとのことだった。

着替えの入ったバッグを預けて、ホテルを出る。

もくもくと湯気を上げる湯畑に、バレッタは柵に駆け寄った。

一良もその後に続く。

「綺麗ですね!」

「ですね。記念に写真を撮りましょうか」

2人で湯畑を背に、スマートフォンで自撮りをした。

数分景色を堪能し、温泉街を散歩することにした。

手近な商店に向かうと、饅頭の載った皿を手に呼び込みをしている中年男性店員が一良たちに気付いた。

「はいはい、どうぞ!」

はい、とトングで茶色の饅頭を1つずつ、2人に渡す。

続けて、傍にいた女性店員が「どうぞ!」と湯のみに入ったお茶を渡してきた。

まあ店内へ、と言われるがまま店に入ると、何人もの客がお茶と饅頭を手に店内を見て回っていた。

「おお、流れるように誘導されてしまった……」

「雑誌に書いてあったとおりですね!」

バレッタは嬉しそうに、饅頭にかぶりつく。

「んっ、美味しい!」

「美味いですねぇ。お茶とよく合うわ」

「まあ、ありがとうございます! 今お食べいただいているのは、これですよ!」

カウンターにいたおばちゃん店員が、ショーケースに入っている饅頭を指す。

「お土産にどうかしら? 家で食べるもよし、近所に配るもよし。きっと喜ばれますよ!」

「そ、そうですね。村の皆へのお土産にするか。バレッタさん、どれを何個にすればいいですかね?」

「えっと……6個入りのを、35箱あれば足りると思います」

バレッタが言うと、おばちゃん店員の目がキラリと光った。

「6個入り35箱! 彼氏さん、いいですね!?」

「は、はい」

「6個入り35箱! お買い上げ、ありがとうございまーす!」

「「ありがとうございまーす!」」

かなりの声量で言うおばちゃんに、外にいた饅頭配りの店員たちが声をそろえる。

他の客の視線も集まり、2人はあたふたしてしまう。

「じゃ、じゃあ、現金払いで。賞味期限って――」

そうして代金を払い、量が量なのでホテルに運んでもらえることになった。

饅頭を平らげて湯のみを返し、「また来てね!」と満面の笑みで見送られて店を出る。

「まさか、最初に入った店でお土産を買うことになるとは……」

「あはは。面白いお店でしたね!」

その後もあれこれ話しながら、温泉街の散策を続けることにした。

店を見て回っていると、釜めし屋を見つけたので入ることにした。

サービスエリアでラーメンを食べてしまっているが、バレッタが「食べてみたい」とせがんだのだ。

席に座り、メニューを開く。

夕食に差し支えないようにと、五目釜めしを1つ、2人でシェアすることにした。

しばらく雑談していると、釜めしが運ばれてきた。

「わ、すごい」

小さな釜に、バレッタが目を輝かせる。

一良がフタを開けると、ほかほかと湯気が立ち上った。

「美味しそう! あ、私が取り分けますね!」

バレッタがしゃもじで茶碗に取り分け、いただきます、と食べ始める。

「んー、こりゃ美味い」

「美味しいですね! さっきから私たち、『美味しい』しか言ってないです」

楽しそうに笑いながら、2人で釜めしを楽しむ。

「これ、エイラさんが『食べてみたい』って前に言ってたんです。こういうのって、あっちでは見たことがないから」

「そうなんですか」

「はい。いつか行ってみたいって……あ、ご、ごめんなさい!」

しまった、といった顔で、バレッタが謝る。

先日、布団の中で一良にお願いした件について、プレッシャーをかけるようなかたちになってしまったからだ。

「その、せっつくようなつもりじゃなくて! ただ思い出したからで――」

「あ、いいんですよ。リーゼやジルコニアさんも、映画とか雑誌を見ながら『行きたいなぁ』ってぼやいてましたし」

一良が苦笑し、釜めしを頬張る。

「でもまぁ、エイラさんたちもつれて来たら、きっと喜びますよね」

「そうですね。皆さん、大はしゃぎすると思います」

「でも、ジルコニアさんなら、まずは温泉よりも、『天然カキ氷屋につれていけ!』って言いそうだ」

「ふふ、ほんとに言いそうです」

そうして釜めしを堪能し、2人は店を出たのだった。

チェックインの時間が近づいてきたため、ホテルへと戻って来た。

館内と食事の説明を受け、浴衣のレンタルがあるとのことだったので、選ぶことになった。

ホテルマンに浴衣のある場所に案内してもらう。

「わあ、かわいいですね!」

何種類もある色浴衣を前に、バレッタはとても嬉しそうだ。

「私、この赤い花柄のにします」

「じゃあ、俺は青いのにしようかな」

浴衣とルームキーを受け取り、8階にある部屋へと向かう。

部屋に入ると、バレッタが再び、「わあ!」と声を上げた。

草津に来てから、驚きっぱなしだ。

「畳部屋だ!」

「ですね。広いなぁ」

「カズラさん、湯畑が一望できますよ!」

窓に駆け寄って障子戸を開け、目をキラキラさせて景色を眺めるバレッタ。

一良も浴衣をテーブルに置き、彼女の隣に行く。

ちなみに、先に預けておいた荷物は部屋の隅に置いてあった。

大量の温泉饅頭が入った紙袋が、かなり自己主張している。

「いい景色だ……うお、ソファーがある部屋まであるのか」

部屋は特別室で、畳部屋が2つにソファーとローテーブル付きの部屋の計3部屋だ。

「さて、温泉に行きますか。浴衣に着替えていきます?」

「そうですね、着替えましょっか」

バレッタがテーブルから浴衣を取る。

「……えっと、隣の部屋で着替えてきますね」

「え? ここで着替えればいいじゃないですか」

一良が言うと、バレッタは不満そうな顔になった。

「カズラさん、エッチです」

「い、いや……下着を着てるんですし、服を脱いでも裸ってことはないから、別にいいんじゃないかなって。水着姿みたいなものですよ」

「あ、それもそうですね」

納得したバレッタが、服を脱ぎ始める。

一良も服を脱ぎながら、チラチラとバレッタを見る。

バレッタは上着を脱いでスカートに手をかけたところで、ぴたりと動きを止めた。

「や、やっぱり、あっちで着替えてきますっ」

そう言ってソファーの部屋に行き、ぴしゃりとふすまを閉めてしまった。

一良は残念そうに肩を落とし、浴衣に着替えるのだった。