軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第16話

この世界で、自分の葬式に出席したことがある人って……たぶん、ほとんどいないよね。

そう考えると、私ってけっこう幸運なのかも……

……なわけあるかあああああっ!!

担任の先生は、手に持っていた白黒写真にちらりと目を落とし、

それから、ゆっくりと顔を上げて——私を見た。

「おおお——っ! 君、うちのクラスの水瀬さんにそっくりだな!」

「……」

「……転生って、こんなに早いのか?」

「……」

「つまり……私がフグを食べて、そのうえ土曜日に現れなかったから、みんな“自殺した”って思ったの?」

「うん……」

「いやいや、日曜の午後に普通に配信してたんだけど!?」

「日曜日はみんな修学旅行の準備で忙しくて……情報が更新されなかったのよ。それに、あなた保護者いないでしょ? 誰に連絡すればいいかも分からなかったし……」

「私に連絡すればよかったじゃん……」

「死者に電話をかけるのはさすがに不敬でしょ」

「それは……確かに……」

「……」

気まずい沈黙が落ちる。

「……でも、なんだかんだで、みんなが私のことを悼んでくれたのは、すごく嬉しかったよ。ありがとう……」

「クラスの生徒が亡くなったとなれば……教師として何かしらの対応は必要だからな。ちなみに、さっきは召喚陣で降霊しようとしてた生徒もいたぞ」

「そのときに肩トントンしてあげればよかったかも」

「はははははっ——」

空は少しずつ暗くなり、キャンプのあちこちで人が立ち上がって、遠くの空を見上げ始めた。

ここには“夜”が存在しない。

だから空が暗くなるのは、日没じゃなくて——

遠くに現れた巨大な暴風雲が、太陽を覆い隠したからだった。

「嵐が来るぞ! 全員、急いでテントを設営しろ!!」

突然現れた嵐雲に、さっきまでの雑談ムードは一瞬で吹き飛んだ。

キャンプ全体が、一気に慌ただしくなる。

私も慌ててリュックから携帯テントを取り出した。

ゴロゴロ——

遠くで雷鳴が響く。

担任の先生が眉をひそめる。

「急げ!! 四隅はしっかり固定しろ!! G172の嵐は甘く見るな!」

私はキャンプの端にテントを設営し、神代がそれを補強してくれている。

彼女はあのやたら高そうな剣を取り出して、柄の部分でペグを——

カン、カン、と叩き込んでいく。

……見てるこっちが怖いんだけど。

「それ、壊れないの?」

「今は戦闘状態よ。使うべきときに使うだけ。それより——あなたはクラスのみんなと一緒にいなくていいの?」

私は遠くのクラスの方をちらっと見て、

首を横に振った。

「修学旅行、申し込んでないし……それに配信もあるから、一緒に行動するのちょっと不便で」

カン——

最後の一本を打ち込み終えて、神代がふっと息を吐いた。

「わざわざあそこまで苦労して同級生を探して……やったことが、自分の葬式に参加するだけ?」

私はリュックを抱えてテントに潜り込む。

「……それでも修学旅行には参加したことになるでしょ!」

神代もテントの中に入ってきて、私の隣に座る。

しばらく沈黙が続いたあと——

彼女が、ふいに口を開いた。

「……もしかして、あなた、友達いないの?」

「ぶっ——————!!」

危うく水でむせて死ぬところだった。

「い、いるし!? クラス全員、友達だし!? 私、めちゃくちゃ友達多いから!!」

「じゃあ、なんで目が赤いの?」

「むせただけ! 水でむせただけだから!!」

「ふーん……?」

意味ありげに声を伸ばしながら、神代が顔を近づけてくる。

「その見方やめて!? さっき見てたでしょ、みんな私の葬式やってたんだよ!?」

私は顔をぷいっとそらした。

「私が言ってるのは、そういう表面的な付き合いじゃなくて……一緒に登下校したり、買い物行ったり、なんでも話せるような、そういう関係のこと」

「いるよ」

「ほんとに? でもさっき、先生以外誰も話しかけてこなかったけど」

「だって、すぐそばにいるし」

私は腕時計を掲げた。

「ポチ、この失礼な人に挨拶してあげて」

【こんにちは、神代。今の質問、かなり残酷でしたね……でも、私は好きですよ】

「ポチぃぃぃ!! どっちの味方なの!?」

「はははははっ——」

狭くて密閉されたテントの中に、剣士さんの豪快な笑い声が響き渡って、ちょっと頭が痛くなる。

ドン——

バラバラバラバラ——

雨粒がテントを激しく叩き、暴風が布を揺らして唸りを上げる。

私は頬を膨らませて神代を睨んだ。

「っていうか、なんで同じテント入ってくるの……自分のあるでしょ?」

神代はぐーっと伸びをする。

「私がここにいれば、雷で震えて怯えたりしないでしょ?」

ドン——

突然、すぐ近くで雷が炸裂した。神代の体がびくっと跳ねて、顔色がわずかに白くなる。

なるほど。

「おお! 雷、怖いんだ!」

「……私はあなたが怖がるかもしれないから心配してるだけ。私が怖がるわけないでしょ。百戦錬磨の冒険者なんだから!」

「ほんと〜に〜?」

私は彼女の顔をじっと見つめた。さっき彼女が私を見つめてきたときと同じように。

ドンッ——!!

さらに大きな雷鳴が響き、嵐の勢いも一気に強まった。

もう少し観察しようとした、そのとき——

びゅうっ!!

冷たい風と大粒の雨が、顔面に叩きつけられた。

密閉されていたはずの空間が、一瞬で引き裂かれる。

暴風雨が、容赦なくテントの中へなだれ込んできた。

え、ちょっと待って——テント壊れた!?

いや、違う——

「ごめん!!」

びしょ濡れの人影が、どさっとテントの中に転がり込んできた。

ちゃんと良心はあるらしく、入った直後にジッパーを閉めて、嵐を遮断する。

キン——!

鋭い音とともに、神代の剣が抜かれる。

次の瞬間、その刃は侵入者の首元にぴたりと当てられていた。

現れたのは、翠色の髪をした少女。

どこかで見たことのある顔。

……あれ?

「……って、あなた……あの放火した錬金術師!?」