軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

56話『エピローグ:籠の外で鳥は飛ぶ』

クリスが手配した馬車を利用して、俺とミゼはテラリア王国に帰ってきた。

「久しぶりに帰ってきましたね」

「ああ」

王都の景色を目の当たりにすると、心がじんわりと温かくなる。

大切な思い出が詰まった場所は、新たな故郷となる。気持ちが軽くなったような気がした。

「しかし、根本的な問題は何も解決していないな」

「そうですね。《叡智の道》が消えたわけではありませんし……きっと、この問題はいつか再燃すると思います」

当事者なだけあってミゼは冷静に先を見据えていた。

「大丈夫です」

ミゼが微笑みながら言う。

「いざとなれば、私とトゥエイトさんの間で子供を作ればいいんです。娘が生まれれば《叡智の道》が遺伝される可能性も高いでしょう。ですが、私たちなら父のように娘を束縛することはありません。今度は家族みんなで逃げましょう」

「……相手が俺である必要はあるのか?」

「他の方を巻き込むんですか? それは少し無責任な気がしますけれど」

言外に「責任を取ってくださいね」と言われ、俺は口を噤んだ。

まあ、あれだけ散々連れ回しておいて、何の責任も取らないのは問題だろう。子とか家族とか、そういう話は置いておくとして。

俺たちが王都に戻ってきたのは、当然、学園へ向かうためだ。

無断欠席をしてしまった以上、早い内に説教を受けるのが生徒の務めだろう。

「ミゼ?」

校門の前に辿り着くと、ミゼが不意に足を止めた。

様子を窺うと、ミゼは不安を吐露する。

「その……私たち、結構、離れていましたし。もう、居場所とか……」

「……多分、心配ないと思うぞ」

俺だってある程度の責任は取るつもりなのだ。

と言っても、大したことはしていない

「トゥエイト、ミゼ!」

尻込みしているミゼの背中を押し、学園に入ろうとすると、前方から二人の生徒が駆け寄ってきた。

エリシアとグランだ。

「貴方たち、何処行ってたのよ!」

「まったくだ、急に消えやがって!」

各々、俺たちに大声で文句を言う。

しかしその表情からは怒りだけでなく、安堵や喜びといったものも感じられた。

「ちゃんと手紙に書いてあっただろう」

目を瞬かせて驚くミゼの前で俺は言う。

「そうだけど……いや、納得できるわけないでしょ! なんなの、これ!? 『ちょっとバカンスに行ってくる』って!?」

「結構楽しかったぞ。ほら、土産だ」

「あ、わーい。――じゃない!!」

テラリア王国へ帰る途中に立ち寄った村の土産を渡すと、エリシアは一瞬喜んだがすぐに再び憤慨した。

逃避行を始める際にミゼには伝えたが、俺は旅立ちに際して二人に手紙を出していた。

但し、その内容は先程エリシアが言った通り、だいぶ適当なものだ。

いつか帰ってこられた時のための文面である。

できれば俺たちの居場所は残しておいて欲しいという思いを込めていた。

本当は、手紙とは別に遺書も用意していたが、こちらは後で秘密裏に処理するとしよう。

遺書なんてものは、燃やして捨てるに限る。

「ミゼ。折角だ、色んな土産話でもしてやろう」

ミゼにそう言うと、彼女は満面の笑みを浮かべた。

「はいっ!!」