軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13話『不正疑惑』

カウンターの近くで暫く待っていると、受付嬢から呼び出しを受けた。

俺たちはそれぞれ、魔法力の試験結果を記した用紙を受け取る。

「ふーん。ま、今はこんなものね」

エリシアが手元の用紙を見ながら言う。

「全員で見せ合おうぜ」

グランの提案に俺たちは同意した。

全員、同時に用紙を開いてみせる。

グランとエリシアは自信に満ち溢れた様子で。

一方、ミゼはこの世の終わりみたいな顔をしていた。

***********

●エリシア=ミリシタン

魔法出力:B

魔法即応力:B

魔法持続力:D

魔法制御力:D

***********

***********

●グラン=イブリス

魔法出力:C

魔法即応力:D

魔法持続力:A

魔法制御力:E

***********

***********

●トゥエイト

魔法出力:D

魔法即応力:B

魔法持続力:C

魔法制御力:B

***********

***********

●ミゼ=ホーエンス

魔法出力:D

魔法即応力:E

魔法持続力:D

魔法制御力:C

***********

「言い出しっぺの私が一番危ういですね…………ふふふ」

涙目になりながら呟くミゼに、俺たちは複雑な表情で無言を貫いた。

「取り敢えず、一番注目するべきところはグランの 魔法持続力(スタミナ) だろう」

グランの用紙を指さしながら言う。

驚愕に値する結果だ。計測中の様子から、高い結果を叩き出すとは予感していたが、まさかAランクを記録するとは思っていなかった。

「確か、Bランクで訓練した兵士および冒険者……Aランクで騎士団の団長、副団長クラスよね。……貴方、化物みたいな 魔法持続力(スタミナ) してるじゃない。何か特殊な訓練とか受けた経験があるの?」

「いや……悪ぃけど、そういう経験は全くねぇな。実を言うと俺自身この結果には驚いてる。うーん……生まれつきか?」

魔法力は努力で向上させることも可能だが、生まれ持った才能も影響する。

生まれつき特定の能力が高いというのも、有り得ない話ではない。

「トゥエイトは思ったより低いわね。グランがAランクなら、トゥエイトもAランクくらい取れそうな気がするけれど」

エリシアが俺の持つ用紙を覗き見ながら言う。

「買いかぶりすぎだ。そもそもグランが異常なだけで、本来ならBランクでも十分高い」

「でも、貴方が使う魔法……《魔弾》は、物凄く速いじゃない。あの速さで 魔法即応力(スピード) がBランクっていうのは、ちょっとおかしいんじゃない? 私も貴方と同じBランクだけど、貴方みたいに速い魔法は使えないわよ」

「それは、 魔法即応力(スピード) の解釈を誤解しているな」

エリシアが首を傾げた。

「魔法即応力は、要するに魔法を完成させる早さのことだ。魔法自体の速さではない」

「……でも貴方の場合、ほぼ反射レベルで《魔弾》を撃ってなかった?」

流石、剣鬼と呼ばれた男の血を引いているだけある。

エリシアの前で《魔弾》を使った回数はそこまで多くない筈だが、彼女の分析は的を射ていた。

しかし分析は正しくても知識が誤っている。

俺は首を横に振り、説明を続けた。

「魔法即応力というのは……絵に例えるとわかりやすい。複雑な絵を全員同時に模写すれば、完成するまでの時間にばらつきが生まれるだろう。しかし単純な絵……それこそ三角形や円ならどうだ? 筆が速い人も遅い人も、ほぼ同じ速度で完成させる筈だ」

「……成る程。つまり 単純(シンプル) な魔法なら、訓練次第で誰でも速く発動できるってことね」

「そういうことだ。俺のように単純な魔法を重用する者にとって、魔法即応力はそこまで大事な能力ではない」

エリシアが得心した様子を見せる。

すると今度は、グランが疑問を口にした。

「じゃあ 魔法出力(パワー) はどうなんだよ。トゥエイトの《魔弾》って、かなり威力高ぇよな?」

「ああ、それは魔力を圧縮させているだけだ」

「圧縮?」

グランが首を傾げる。

「魔法をアレンジする際の技術のひとつだ。発動範囲または発動時間を限定することで、威力を底上げすることができる」

「へぇ、そいつは知らなかったぜ。まだ授業でも習ってねぇよな?」

「偶には図書館に行って勉強でもすればどうだ。圧縮を用いたアレンジは中々便利だぞ」

感心するグランを眺めつつ、俺は内心で安堵していた。

エリシアといい、グランといい、実戦能力の高い人間は観察眼も優れている。

二人にした説明は事実だ。

だが――――俺が ほんの少しだけ手加減(・・・・・・・・・・) した(・・) のも、また事実。

任務中であるため、今は不要な注目を浴びたくない。

しかし学友に怪しまれるようでは……俺もまだまだということか。

「魔法力は才能によって大きく左右されるが、工夫次第で幾らでも補える。逆に言えば、魔法力の結果だけで人の実力は測れない。……だから、ミゼもそこまで落ち込む必要はない。重要なのは寧ろ、次に計測する基礎戦闘力の方だろう」

そうミゼに告げると、彼女は小声で「はい」と呟いた。

完全に自信を喪失している。だが、ミゼの試験結果は恐らく学生にしては平均的なものだろう。

この場にいるミゼ以外の三人は、学生にしては高い戦闘力を持っている。

その三人と比較しても意味はないのだが……そう告げたところで、彼女が納得することはないだろう。

「おい、お前ら。ちょっと待てよ」

その時。

近くにいた英雄科の生徒が、俺たちのもとへ近づいてきた。

「聞こえたぞ……そこのお前、Bランクを取ったのか?」

英雄科の男子は、俺の方を睨みながら言う。

「ああ」

「なっ――ふ、ふざけるな! そんなのありえねぇだろ!!」

英雄科の男子は、途端に激昂した。

そしてカウンターの奥にいる受付嬢へと怒鳴りつける。

「おい! こいつはDランクの魔法も使えねぇんだぞ! なのになんで魔法力がBランクもあるんだよ!」

「そ、そう言われましても」

受付嬢が困惑する。

第二種免許を希望する際に記入した用紙から、その男子が英雄科の貴族であることを知ったのだろう。波風を立てないよう必死に頭を回している様子だ。

「何の騒ぎだ」

二階から男の声がする。

階段を下りてきたのは、がたいのいい男だった。赤褐色の髪を、獅子の鬣の如く後ろへ流している。グランにも勝る筋骨隆々な体格だ。

「ギルドマスターのレウス=バーレンだ。俺のことはマスターと呼んでくれ。……で、この騒ぎは何だ?」

男の容貌に英雄科の男子は僅かに鼻白んだが、すぐに俺を指さしながら事情を説明した。

「そ、そこにいる男はDランクの魔法も使えねぇのに、魔法力がBランクになってるんだ! こんなの有り得ねぇだろ!」

「……成る程。確かに、かなり稀な事例だな。使用できる魔法のランクと、魔法力のランクには相関がある。普通、Dランクの魔法が使えないなら、魔法力も高くてDかEになる筈だ」

そうなのか……。

しかし、そんなことを言われても俺は不正を働いたわけはない。

英雄科の男子から一通り話を聞いたマスターは、次に俺の顔を見た。

「一応、そっちの言い分も聞いておこう。……お前、名前は?」

「トゥエイトです」

「そうか。で、トゥエイトは不正をしたのか?」

「していません」

「まあ、そりゃそう答えるよな」

マスターが悩ましい顔をする。

「よし、わかった。なら次の基礎戦闘力の試験は俺が監視しよう」

マスターが言った。

「俺が監視している以上、不正は見逃さない。もしトゥエイトが魔法力で不正を働いているようなら、基礎戦闘力の試験で必ずボロが出る筈だ。……それでお互い、矛を収めてくれ」

英雄科の男子が、複雑な顔をしながらも頷く。

後は俺が頷けばいいだけか。

大人の対応というものを強いられるのは、少し癪ではあるが、下手にごねてまた決闘にでもなったら面倒である。

「わかりました」

俺が首を縦に振ると、マスターが安堵した様子を見せた。

「決まりだな。お前さんの実力、しっかりとこの目で見させてもらうぜ」