軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12話『魔法力試験』

「第二種免許を希望している方ですね。こちらへどうぞ」

受付嬢の案内に従い、ギルドの奥へと進んだ俺たちは、そこで試験官と思しき女性に声をかけられた。

「こちらが試験会場です」

女性の案内に従い歩き続けた俺たちは、やがて大きな部屋へと辿り着いた。

真っ白な壁で四方を覆われた空間だ。学園の演習場と少し似た雰囲気がある。

「丁度、今、皆さんと同じビルダーズ学園の生徒が試験を受けていますよ」

女性が指さした先には、確かに英雄科の制服を纏った四人の男子がいた。

そう言えばジークが俺たちのもとを去る時「試験を受けに行くぞ」と言っていたことを思い出す。どうやら彼らも第二種免許を希望したようだ。

今まさに試験を終えたのか、四人は部屋から出ようとしたところで、俺たちの存在に気づく。

「嘘だろ、お前らも第二種を希望してんのか?」

「はははっ! 普通科に第二種は無理だろ!」

相変わらず俺たち普通科は、英雄科に見下されているようだ。

入学式から二ヶ月。流石に多少は慣れてきたが、それでも精神的に疲れる。

好き勝手に罵詈雑言を吐いた彼らは、やがて部屋を出てギルドのカウンターの方へと向かった。

「え、えーっと、それでは、試験の説明をさせていただきます」

試験官である女性に気まずい思いをさせてしまったことに、内心謝罪しつつ、説明を受ける。

「第二種免許の希望者である皆様には、魔王の遺産に対処できるだけの能力があるか確認するために、二つの試験を受けていただきます。まず皆様に受けていただくのは魔法力の試験です。その後に基礎戦闘力の試験を受けていただきます。

魔法力は、 魔法出力(パワー) 、 魔法即応力(スピード) 、 魔法持続力(スタミナ) 、 魔法制御力(コントロール) の四種類に分けられます。これらをそれぞれ試験で数値化およびランク付けすることで合否を決定いたします。ちなみにランクはAからEまであり、訓練された兵士やプロの二種冒険者の平均がBランクです。近衛騎士団や正燐騎士団の団長、副団長になるとAランクである場合が多くなります」

ピクリ、とエリシアが反応した。

元正燐騎士団の団長――つまりエリシアの父ガリア=エスペランドは、生前Aランクであった可能性が高い。

エリシアとしては、意識せざるを得ない情報だろう。

「ただし一点だけご注意を。世の中には魔法を中心にして戦うタイプだけでなく、他の技術……たとえば武術や体術などを中心に戦う方もいます。そういった方は、次の基礎戦闘力で正しく実力を確認させていただきますので、魔法力の試験でランクが低いからと言って、必ずしも不合格になるわけではありません」

試験官の説明に、俺は無言で頷いた。

冒険者ギルドの歴史は長い。平等に試験を行うためにも、その内容は最適化されているようだ。

「それでは、こちらへお並びください」

試験官の指示に従い、俺たちは会場の中央へと向かう。

会場の中心には長机が置かれており、その上に透明な水晶玉が載せられていた。

「まずは 魔法出力(パワー) を計測します。ご自分の好きなタイミングで、そちらの器具へ思いっきり魔力を注いでください」

魔法出力(パワー) 。

魔法の瞬間火力と言い換えても良いこの能力は、戦闘面でも非常に重視される。この値が高ければ高いほど、広範囲かつ高威力の魔法を放つことが可能だ。

水晶玉は五つ用意されているため、俺たち四人はそれぞれ適当に並び、玉に手を添える。

試験官の指示通り、力一杯魔力を注ぐと、水晶玉が光り出した。

どうやらこの水晶玉は魔法具の一種らしい。

魔力を注ぐことで光を放つ魔法具は、一般的な家庭などでも照明として使用されている。しかしどうやらこの水晶には、注がれた魔力量に応じて光量が変化する特徴があるようだ。

水晶が最も輝いていたのはエリシアだった。

次点はグラン。その次に俺とミゼだ。俺とミゼはほぼ同じ量の光を放っている。

「エリシアさん、凄いですね」

「まあね。こう見えて火力には自信あるわよ」

尊敬の眼差しを注ぐミゼに対し、エリシアは得意気に答えた。

「次は 魔法即応力(スピード) ですね。水晶玉の中に現われる模様をご確認ください」

魔法即応力(スピード) 。

魔法を発動する速度のことだ。接近戦を主とする兵士はこれが速い場合が多い。反対に、後衛からの射撃支援を主とする兵士の場合は、戦略にもよるが、あまりこの能力を重視する必要がないこともある。

試験官の言葉に従い、顔を水晶玉に近づける。

水晶玉の中には、ふよふよと幾何学的な模様が浮いていた。

「模様の中心に大きな円がありますね? そこから模様全体に魔力を通すよう意識してください。全体に魔力が行き渡ると水晶玉が光ります。……ただし、模様は三十秒ごとに切り替わりますので、できるだけ素早く魔力を通すよう努めてください」

説明を終えた後、試験官が合図を出して 魔法即応力(スピード) の計測が行われる。

水晶に魔力を注ぐと、模様の中心にある円が淡く光った。その光を全体に広げるよう意識すると、ゆっくりと光が模様の端々へと伸びていく。

徐々に複雑な模様が出現し、最後まで魔力を通すよりも先に、模様が切り替わってしまうことも何度かあった。

「……ふぅ」

魔法即応力(スピード) の計測が終わり、肩の力を抜く。

水晶の光った回数は、恐らく俺とエリシアが同列。次いでグラン、ミゼといった順だろう。

「次は 魔法持続力(スタミナ) の計測です。水晶に魔力を注ぎ続け、できるだけ長く光らせてください」

魔法持続力(スタミナ) 。

個々人の継戦能力に深く関わる素質だ。長い時間、戦い続けることができる兵士は戦場でも重宝されやすい。

計測の内容は単純だった。

僅かでも魔力を注げば光を発する水晶を、できるだけ長く光らせる。コツは恐らく、できるだけ少ない魔力を注ぎ続けることだ。

しかし人は、一度に魔力を大量に消費すると疲労感を覚える。

全員、汗だらけになりながら水晶へ魔力を通し続けた。

最初に脱落したのはミゼとエリシア。次に俺の水晶玉が光を失った。

後はグランだけだが――。

「あ、あの……辛くないんですか?」

「え? まだ余裕ですけど」

試験官の疑問に、グランは不思議そうに答えた。

よく見ればグランだけ全く汗をかいておらず、疲労している様子もない。

「……わかりました。もう十分です。計測を終了してください」

試験官の言葉に、グランは水晶から手を離す。

これは……面白い結果になりそうだ。

「最後は 魔法制御力(コントロール) を計測します」

魔法制御力(コントロール) 。

簡単に述べるなら、魔法の失敗や暴発を防ぐ能力だ。

――魔法は失敗することがある。

雑なイメージで魔法を組み立てたり、本来の用途から外れた使い方をしたりすると、魔法は術者の意図から大きく逸れた結果をもたらすことがある。

例えば俺が好んで使う魔法のひとつに《物質化》という、魔力で物質を創造する魔法がある。これは想像する物質の形状や感触、密度などの知識を有していなければ発動できない。知識が不足した状態でこの魔法を発動すると、魔力の形が定まらず、最終的には霧散してしまう。

魔法の失敗は魔力を無駄にする上、最悪の場合、術者が怪我することもある。

俺が機関で最初に教わったのは、 魔法制御力(コントロール) の重要性だった。

「水晶玉の中をご確認ください。迷路のような図が表示されていると思います。魔力を通すと、右上に映る球が光りますので、それを自在に操って左下のゴールへと動かしてください。ただし球が、迷路の壁と接触すると、また最初からやり直しです」

迷路のようにも見えるが、注意深く観察すれば一本道であることがわかる。ただしその道は複雑に曲がりくねっていた

開始の合図と共に球を動かし、左下のゴールへと持っていく。

「ぐぎぎ、この……くそが……っ!」

隣では、グランが苛立たしげな声を漏らしていた。

球と迷路の壁が接触すると、球が右上のスタート地点に戻ると同時に水晶玉が微かに光る。

グランは 魔法制御力(コントロール) が苦手らしく、何度も水晶玉が光っていた。

「――試験、終了です!」

グランの計測が終わると同時に試験官が告げる。

「それでは皆様、受付カウンターの辺りで暫くお待ちください。結果が出ればお呼びいたします」

試験官の言葉に従い、俺たちは部屋を後にした。