軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

462、久しぶりの港街

代官邸の食堂には誰もいなかった。綺麗に整えられた食堂には静かな時が流れていて、微かに他の場所で動く人達の物音が聞こえる。

「代官ってトニーさんだっけ? 挨拶した方が良いかな」

「そうだな。一応執務室に行くか」

「リュシアンってここにはよく来たりするの?」

「ああ、最近はかなり頻繁に来ているぞ。海鮮料理にハマって食べに来てるんだ」

「そうなんだ! やっぱり海産物って美味しいよね」

大公領でも早く食べられるようにしたいな。皆に海産物の美味しさを知って欲しい。俺は海に行って魔法を使って自分の分を確保するぐらいはできるんだけど、特産品にするなら誰でも獲れるようにしないと。

「最高だな。私が最近ハマっているのはマグロだ。この時期にたくさん取れるらしくて、分厚く切ってステーキにするとめちゃくちゃ美味いぞ」

「え、マグロがあるの!?」

「ああ、知ってるのか?」

「めちゃくちゃ好きな魚なんだ。食べられるかな?」

「市場に行けばあるんじゃないか?」

それは今すぐ行かないと……! マグロステーキも良いけど、マグロってやっぱり生が一番美味しいよね。毒除去の魔法を使えば生で食べても問題ないだろうし、使徒の特権で食べちゃおうかな……マグロ寿司。

今までは魔法を使えば俺なら生魚を食べられるだろうなと思いつつ、なんだかんだ手を出していなかった。でもマグロがあるって言われたら、食べないわけにはいかない。

醤油がないのが残念だけど、塩レモンでも十分美味しいだろう。ヤバい、一気にお腹が空いてきた。

「リュシアン、市場で色々と買ったらここの厨房を使わせてもらえるかな。作りたい料理ができたんだけど」

「使っても大丈夫だと思うが、一応トニーに確認するか。着いたぞ、ここが執務室だ」

リュシアンが軽くノックをして中に入ると、凄く懐かしい顔がそこにはあった。トニーさんも同じことを思ったのか驚きの表情から段々と目を細めてくれる。

「ようこそお越しくださいました」

「急に来てすまないな。レオンが転移で連れてきてくれたんだ」

「お久しぶりです」

「またお会いできて光栄でございます。レオン様……ではなく大公様とお呼びすれば良いでしょうか?」

「いえ、レオンで良いですよ」

なんかトニーさんの笑顔、落ち着くなぁ。前に来た時も思ったけど穏やかな人だ。

「本日は海産物を食べにいらしたのですか?」

「ああ、これから市場で色々と買ってくるから厨房を使っても良いか?」

「もちろんでございます。料理人のナセルは手伝いに必要でしょうか?」

「ナセルさん! いらっしゃるのですね。もしご迷惑でなければ手伝っていただけるとありがたいです」

「かしこまりました。では手配しておきます」

そうしてトニーさんとの話を終えた俺達は、代官邸を出て海方面に歩いて向かうことになった。リュシアンがよく来ているから街の皆が慣れたのか、俺達を見ても軽く会釈をしてくれるぐらいでそこまで騒ぎにならない。

「こんな街並みだったね。懐かしい」

「素朴な街で良いよな。私はこの街がかなり好きだ」

「でも前より人が増えた……というか、活気が増した?」

「ああ、海産物を王都に輸出するようになったからな。この街は皆が利益を得ていてとても明るくなった」

海産物の輸出が儲かるようになったんだな……海の幸が内陸の人たちにも受け入れられているというのは嬉しい。やっぱり製氷器で鮮度が良いものを運べるようになったからかな。

「観光客って結構来てる?」

「そうだな……この街にというよりは、領都に来て港街に遊びに行くという者が多い。領都と港街間には乗合馬車も出ているんだ」

「そうなんだ。それは良いね」

そんな話をしながら歩いているとすぐに海鮮市場へと到着し、もう時間が遅めということもあったので、俺は残っている魚を全て買う勢いで端から海の幸を購入した。

「あっ、それマグロ!?」

「おおよ。久しぶりにデカいのが釣れたんだ。こいつはまだ捌いてないが、少し時間をもらえればすぐ必要な部位だけ売れるぞ」

「じゃあ……部位ごとに捌いて欲しい。それで全ての部位を俺が買うよ。あとそっちにあるカツオとそれってシャケだよね? それも全部買いたい」

「そんなに買ってくれんのか!? ありがとな! すぐ捌くから待っててくれ」

それから俺は他のお店も回ってサンマ、サバ、アジなどいろんな魚を大量に購入し、全てアイテムボックスに仕舞った。これでしばらくは海に調達に行かなくても、海産物が食べ放題だ。

海鮮市場から代官邸に戻った俺とリュシアンは、代官邸の厨房にやってきた。中には……懐かしいナセルさんがいる。

「ナセルさん! お久しぶりです……!」

「レオン様、またお会いできて光栄でございます」

「こちらこそ、その節はありがとうございました。今日も手伝っていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「もちろんです」

俺はナセルさんのにこやかな笑顔に感謝しつつ、寿司のネタとして美味しいだろう魚をアイテムボックスから取り出した。