軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

461、リュシアンのところへ

マルティーヌを王宮に送り届けた次の日。俺は王都から転移でタウンゼント公爵領にやってきた。突然屋敷の中に転移するのはどうなんだろうと思い、転移先は屋敷の庭にあった魔法の訓練場だ。

ロジェとローランを連れて転移をすると……すぐ近くで庭の手入れをしていたメイドさんに思いっきり叫ばれた。

「きゃーーーーーっ!! し、侵入者っ、!」

その声を聞いて屋敷を守る兵士達が続々と集まってきて、俺達は取り囲まれる。タウンゼント公爵家の領地邸には王立学校入学前に一度来ただけだから、俺の顔は知られてないのか。

ファブリスを連れて来てたら分かってもらえたのかもしれないけど、今日は一緒に来てないし……

「ち、違うんです! いや、突然入り込んだのは確かに不法侵入かも……それは大変申し訳ないのですが、リュシアンに会いに来たんです!」

必死に両手を振って弁明していると、兵士たちも普通の侵入者じゃないと分かったのか少しだけ殺気を抑えてくれた。そして今度は困惑の表情で互いに顔を見合わせている。

「貴族様……でしょうか? 本日はお客人のご予定はなかったと思うのですが」

「本当にすみません、混乱させてしまって。俺はレオン・ジャパーニスです。転移で突然来ちゃったので驚きましたよね。えっと……ジャパーニス家の紋章とか見ますか? あっ、全属性魔法を見た方が分かりやすいですかね」

俺が慌てながら色んな属性魔法を軽く発動させると、兵士の皆さんは困惑の表情を段々と青ざめさせていき……一斉にその場に跪いた。

「た、大変申し訳ございません……大公様にご無礼を」

「わ、私も侵入者などと叫んでしまって、なんとお詫びをしたら良いか……」

「いやいや、お詫びとか良いですから。こちらが悪いんです。本当にすみません」

この場をどう収めれば良いんだとひたすら慌てていると、遠くから駆け寄ってくる人影が見えた。あれは……リュシアンだ。

「リュシアン! マジで来てくれて助かった……!」

「レオン! どうしたんだ? 庭で騒ぎが起きていると聞いて来てみたら……」

「本当にごめん。リュシアンに会いたいなと思って転移で突然来たら、めちゃくちゃ驚かせちゃったみたいで」

リュシアンはその説明だけで全てを理解してくれたようで、すぐに兵士たちを持ち場に戻して、不敬なことをしてしまったと泣いている最初のメイドさんを、他のメイドさんに引き渡してくれた。

「メイドさん、大丈夫かな。何かお詫びの品でも送りたいけど……」

「そのうち落ち着くとは思うが……渡したいなら受け取るぞ」

「じゃあお願いするよ。色んなスイーツの盛り合わせを後で渡す」

「分かった」

そこで話を途切れさせると、リュシアンは俺の方に視線を向けてニッと楽しげな笑みを浮かべた。

「レオン、久しぶりだな。会えて嬉しいぞ!」

「本当に久しぶりだよね。会いに行くとか言っててこんなに遅くなってごめん。俺も会えて嬉しいよ」

リュシアンと軽くハグをした俺は、リュシアンに連れられて屋敷の中に入った。

「あっ、クリストフ様、ソフィア様、お久しぶりです」

「随分と珍しいお客だな」

「久しぶりね。ようこそいらっしゃいました」

「突然来てすみません。次からはちゃんと事前に連絡してからにします……」

本当に申し訳ないと思いながら謝ると、クリストフ様とソフィア様は穏やかな笑顔で首を横に振った。

「いや、いつでも自由に来てくれて良い。リュシアンも喜ぶからな」

「レオンならば歓迎します」

「良いんですか……?」

「もちろんだ」

「ありがとうございます」

俺が嬉しさから頬を緩めると、リュシアンが楽しそうに口を開いた。

「レオンが転移する専用の部屋を作るか。それなら使用人や兵士も驚かなくて済むからな。レオンも場所が定まった方が転移しやすいだろう?」

「うん。それ凄くありがたい」

「分かった。このあと決めよう」

それから俺はクリストフ様達と分かれて、リュシアンと一緒に応接室に入った。お茶を出してもらってスイーツは俺が提供して、楽しくお茶会をする。

「半年ぶりぐらいか?」

「そのぐらいは経ったかも。リュシアンは何してた?」

「私は父上と一緒に領地運営の仕事だな。ただそこまで忙しくはないから、のびのびと好きなこともしている。後はアルベールと遊んだりだな」

アルベール様か、懐かしいなぁ。前にここに来た時に会ったきりだから、年単位で会っていない。あの歳で年単位ってかなり大きくなってるんだろうな。

「レオンは何してるんだ?」

「俺は大公領の開発かな。リュシアンは知ってるかもしれないけど、本格的に大公領を整備し始めたんだ。今は大公邸を始めとした色んな建築物を作ってもらってる最中で、そろそろ農地整備にも力を入れようと思ってる。あとは港街も作る予定かな」

俺のその言葉を聞いたリュシアンは、大公領の開発を始めたことは知っていたのか何度か頷いた。

「うちの領地でも大公領への移住者を募ったから知っているぞ」

そういえば国中に移住者募集の情報を流してもらったんだった。そっか、国中ってことはタウンゼント公爵領も当然入るのか。

タウンゼント公爵領からわざわざ大公領に来る人は、かなり少なそうだな……ここは住み心地が良いだろうし。

「どのぐらい集まったんだ?」

「予想よりは多く集まってるよ。特に敵対貴族が治めてた領地からの移住者が多いんだ」

「……確かに荒れている場所もあると聞くからな」

「うん。七割ぐらいはそういう場所から来た人たちかな」

最初は貴族を必要以上に怖がっていたり憎んでいたり、痩せ細っていて働くのも大変そうだったり、そんな人もたくさんいたけど最近はかなり馴染んでいる。

「もう街は形になってるのか?」

「うーん、主要な大通りとかは整備されてるよ。あとは井戸や下水もかなり工事が進んでるかな。でもまだ狭い範囲だから、これから段々と広げないと。そのうち港街と繋げて大きな都市にしたいと思ってるんだよね」

「ということは、領都が港街になるのか?」

「まあそういうことかな。でもしばらく先だけどね。まだ港街なんて全く作り始めてないし」

そういえば、ここの近くには港街があるんだよな……あの街を参考にさせてもらっても良いだろうか。今思えばよくできた作りになってた気がする。

「リュシアン、港街にこれから行くっていうのはあり? 海産物を食べて街の様子を見て回りたいんだけど」

「別に良いぞ。レオンが転移で連れて行ってくれるのか?」

「うん。このぐらいの距離なら全然いける」

「よしっ、じゃあさっそく行くか」

リュシアンは楽しそうに瞳を輝かせるとソファーから立ち上がり、使用人に少し出かけることを伝えて俺の隣に来た。

「転移するのは従者と護衛一人ずつで良い?」

「それだけで良い」

「了解。転移先は代官邸で良いかな。はっきり覚えてるのが食堂と厨房だから、どっちかに転移になるんだけど」

「そうだな、それなら食堂にしよう」

俺はリュシアンのその言葉に頷くと、タウンゼント公爵領の港街にある代官邸を思い浮かべ……転移を発動した。