軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

318、魔物の森の奥へ

そして次の日の朝、いつもよりぐっすりと眠ることができて疲れも取れ、爽やかな気分で朝食を取っている。もちろんファブリスも一緒だ。

「やはり神獣様は凄いんだね。昨夜は全く魔物が現れなかったよ」

トリスタン様がファブリスの方に視線を向けつつそう言った。その視線の先には、スイーツを前にして理性を失いかけているファブリスがいる。完全にミシュリーヌ様と一緒だよ。

「私達が見張りの時もでした。たまにファブリスが顔を上げてどこかを見つめていたので、そこから魔物が来るのかなとも思いましたが、結局一度も来なかったです」

「久しぶりに途中で起こされることなく眠れたな」

「ああ、いつもよりスッキリとしている」

「感謝しないといけないね。……今日はどうするのだろうか? 神獣様はずっと私達と共に来てくれるのかな? 例えば別行動をしたりとか……」

確かに別行動ってこともあるのか。その辺は全然考えてなかった。……でもファブリスはスイーツのこともあるし、ずっと俺に付いて来てくれる気がする。ミシュリーヌ様にも俺を主人としてこの世界を救うようにって言われてたし、それには近くにいるのが一番便利だよね。

……でも一応確認してみるか。俺はそう考え、少し遠くでご飯を食べているファブリスに声をかけた。

「ファブリスー、今日も俺達と一緒に来てくれるの? というかこれからずっと一緒にいてくれるのか、それとも基本的には自由にしててたまに俺のところに来るのか、どっちにする?」

『我はずっと主人と共にいるぞ。そうでなければスイーツが貰えぬし、ミシュリーヌ様にも主人を助けるようにと言われているからな』

「そっか、凄く心強いよ。ありがと! ……ということらしいので、これからもずっと一緒に来てくれるみたいです」

俺のその言葉に三人は安心したように顔を緩めた。魔物の森という空間の中でのファブリスの存在は、砂漠にぽつんとあるオアシスみたいなものなのだ。ずっと一緒に来てくれるとなればこれ以上心強い存在はいない。

「本当にありがたいね。では今日も昨日のように移動するのかな?」

「そうですね。かなり速かったので今日も背中に乗せてもらえないか聞いてみます。もし了承してくれたら昨日のように進みましょう。あの速度なら数日以内には魔物の森の奥まで辿り着けそうですね」

「そうだね。まだまだかかるなと思ってたけど、思わぬ幸運だよ」

それから朝食を食べ終えて少しだけ休むと、またファブリスに乗って魔物の森を進んで行った。魔物が全くと言っていいほど出てこないので、今までと比べ物にならないほど楽だ。さらに今までの何倍ものペースで進んでいる。

俺達が快適に乗っていられるスピードでこのペースなのだから、本当にファブリスは凄い。

「ファブリス、このペースだと時空の歪みまでどのぐらいで着くかな?」

『そうだな……明日ぐらいには着くかもしれぬ』

「明日!?」

『正確ではないから分からんがな。数時間の誤差はある』

「いや、それにしても早すぎるよ。俺達は後何週間か、かかる予定だったのに……」

相当早いペースで進んでるとは思ってたけど、そこまでとは。このままいけば魔人と戦わずに時空の歪みを塞いでしまえるかもしれない。

「ファブリス、ミシュリーヌ様と少し話していても大丈夫かな?」

『もちろん良いぞ』

「ありがとう。――ミシュリーヌ様、ミシュリーヌ様?」

『はいはーい。何かあったの?』

「あの、今俺達ってどの辺にいますか?」

『……この前教えなかったかしら? まあ良いわ、ちょっと待ってなさい…………え!? なんでこんなに進んでるの!?』

やっぱりかなり進んでたんだな。ファブリスの能力が凄すぎる。

「ファブリスの背中に乗せてもらってたらかなり進んでたみたいです」

『……確かにあの子が本気で走れば、この広さの森なんて一日で縦断できるのかしら? そう考えればレオン達を乗せても相当のスピードよね。ファブリス良くやったわ!』

ミシュリーヌ様のその言葉はファブリスにも聞こえていたのか、走る速度が少しだけ上がった。うん、褒められて嬉しいのは分かるよ。でもこれ以上の速度になると俺達が大変だから自重しようか。

「この速度ならばどのぐらいで辿り着けそうですか?」

『そうね……明日の夕方ごろには着けるんじゃないかしら?』

「おおっ、早いですね。魔人は今どうしていますか?」

『今はちょうど集落に戻ってるのよ。タイミングも最高ね。このまま気付かれずに穴を塞げれば完璧よ!』

それは最高だ。できる限り早く辿り着きたい。でも焦っても良いことはないし、今夜はしっかりと休んで明日に備えよう。そして明日は絶対に成功させよう。

「では明日は絶対に成功させます。魔人に動きがあったらまた教えてください」

『分かったわ。じゃあ頼んだわよ』

「はい。任せてください」

それからその日の夜も昨日と同じように食事をとって眠りにつき、次の日の朝、時空の歪みに向けて出発した。そして今は昼食を食べてまたファブリスの背中に乗っている。

「そろそろ時空の歪みに着くかな?」

『後二時間ほどで着くだろう』

「もう少しだね」

後少しで辿り着けるという場所まで来たら、なんだか緊張してきた。言葉にできない、気持ち悪い焦りが浮かんでくる。魔人がいない今のうちに早く早くと焦ってしまう。

やっぱり俺はあの魔人と戦ったのが結構なトラウマだったのかもしれない。初めて死に直面したからね……

それから順調に進むこと二時間弱、もう後少しだと思ったところで急にファブリスが立ち止まった。

『主人、こちらに魔物が向かってくる。かなり強い魔物が三体だ。ファイヤーリザードと同等以上の強さだな』

「もうすぐに時空の歪みまで辿り着けるのに……その魔物達を避けて、先に穴を塞ぎに行くのは難しい?」

『かなりのスピードでこちらに向かってきているので、それは難しいだろう。油断すれば魔物にやられるぞ。多分魔物の巣穴が近いのだろうな……』

せっかく後少しだったのに……! しょうがない、最短で魔物を倒して時空の歪みまで行こう。

「じゃあ魔物を倒してから行こう。俺達は一度降りるね」

『うむ。では迎え撃つぞ。ここに来るまで後三分ほどだ』

「了解。……皆さん、一度ファブリスから降りるので転移しますね!」

俺は後ろに声をかけて三人と一緒に地面まで転移をした。そしてすぐにいつものバリアを張ってもらう。

「話が聞こえていたかもしれませんが、この前のファイヤーリザードと同等以上の強さを持つ魔物が三体、こちらに向かっているそうです。私とファブリスだけでは厳しいかもしれないので、皆さんにも援護をお願いします」

「分かった。今日は魔力も使っていないし体力も余っているから、十分戦えるよ」

「ああ、自分の身は守りつつ戦うから安心しろ」

「ありがとうございます。では後一分もしないうちにやってくると思うので、よろしくお願いします」

そうして三人と素早く今後の動きを話し合い、ファブリスがじっと凝視をしている方向に向けて剣を構えていると、遠くに凄い勢いでこちらへ向かってくる巨大蛇が見えてきた。

うわぁ……今度は蛇なのか。気持ち悪い、かなり気持ち悪い。我先にと三体で競うように向かってきている。

『あれはウォーターサーペントだ。体表には水のような粘液が分厚く纏わり付いていて、剣はほとんど効かぬ。一番効果的なのは火魔法だ。我は彼奴と戦うのは苦手だ……』

ファブリスが苦手な相手もいるんだ。……確かに爪の攻撃と風魔法は相性が悪そうだね。

「今まではどうやって倒してたの?」

『風魔法で粘液をなんとか吹き飛ばし、吹き飛ばせた瞬間にその部分に爪で攻撃を加える。その繰り返しだ。吹き飛ばしてもすぐに粘液が再生されるのが厄介なところだ』

「向こうの攻撃は?」

『攻撃はあのでかい胴体で締め上げようとしてくる。後は牙で噛みつかれる。あの牙には毒があるから注意したほうが良いぞ』

毒は厄介だな……もし噛まれたら俺がすぐに治癒をしないと。

「了解。皆さん、牙には毒があるので絶対に噛み付かれないよう注意してください。もし噛まれてしまったら私が治すのですぐに教えてください。では火魔法が使える俺とジェラルド様が中心となって、他の方は敵に隙ができたところにそれぞれ魔法と剣で攻撃をお願いします」

「分かった」

「了解」

「おうっ」

よしっ、最速で倒して早く時空の歪みへ行こう。