軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

276、強敵

そして次の日。

俺はロジェとともに夜中から自分の部屋でバリアを張り、ずっと刺客を警戒していた。しかし予想に反して夜には何事もなく、外が明るくなって来る。

「ロジェ、何もなかったね」

「はい。ですがまだ警戒を緩めないでください、元々挙兵は早朝とのことですし、これから襲われる可能性の方が高いのです」

「分かってるよ。でも明るくなってからの方が身を隠し難いし、普通は暗い時に暗殺するよね?」

「はい。ですが暗い中では暗殺する方も動き難いもの。早朝に動くというのはよくある話です」

「そうなんだ」

そうしてロジェと話していると、外から騒がしい声が聞こえて来た。本当に挙兵したのかもしれないな……

「外騒がしいね」

「もし本当に戦いとなっているのであれば、王宮の門前での戦いでしょう。ここは近いので声も聞こえると思われます」

「……一般人は、巻き込まれてないかな」

「王宮近くにはほとんどいませんし、時間も早いので大丈夫だと思いますが……」

「祈るしかないね」

それからしばらく不安を感じながらロジェとともに警戒していると、公爵家の兵士の一人が部屋にやって来て情報を伝えてくれた。

「レオン様、プレオベール公爵を筆頭に五つの貴族家が結託し挙兵、王宮に攻め入りました。現在は王宮の門前で第一騎士団と交戦中。敵の数は約三百とのことです」

「ありがとう。戦況は?」

「第一騎士団が優勢。しかし敵は街中にも関わらず魔法を使用しているとのことで、周辺の建物への影響が懸念されます」

魔法まで使ってるのか。もう街がどうなってもいいってこと? 本当に理解できないな……

「ありがとう。下がっていいよ」

「はっ!」

「ロジェ、大丈夫かな? 加勢に行った方がいいんじゃない?」

「いえ、騎士団は強いので問題ありません。それよりもレオン様はご自分の身の安全をお考えください」

「それはそうだけど……」

それから数分間、怖いぐらいに何事も起きず、部屋の中はしーんと静まり返っていた。だからこそ、その音を聞き取れたのだと思う。

カタッ……

何かが動く音が少しだけしたのだ。俺はその音に驚いて急いで振り返ると、しっかりと締めていたはずの窓が開いていて、窓辺には男が佇んでいた。

その男はかなり背が高く肌が黒い。そして驚くことに頭にはツノがあり、口には牙も生えている。瞳は綺麗な紫色で髪の毛も同じ色をしている。

「お前は誰だ!」

俺はその男にそう問いかけつつ内心ではかなり狼狽えていた。だって、こんな人間見たことない。まるで日本のアニメとかに出て来てた魔人族とか、そんな存在に見える。この世界にそんな種族いたの!?

「せっかくあと少しでこっちの世界も手に入れられるところだったのに、お前が邪魔なんだ。お前に恨みはないが、死んでくれ」

男はそう口にすると、俺に向かって飛びかかり心臓に剣を突き立てようとしてきた。

「っ!!」

俺はその咄嗟の攻撃に全く反応できず、ただ立ち尽くしてるだけ。というよりもバリアがあるから大丈夫だと、頭のどこかでは思っていたのかもしれない。

ピシッ……ピシピシッ……バリッンッッ!!

しかし男の攻撃によってバリアは粉々に砕け散り、男の剣はそのまま俺の心臓に突き刺さる、そう思った瞬間に男が突然目の前から消えた。

「かはっ……」

ロジェが蹴りで男を突き飛ばしたのだ。男は壁に激突し、その場に倒れ込んだ。ロジェが倒れ込んだ男の急所を狙い暗器を放つが、男はすぐに立ち上がりそれを防ぐ。

「レオン様、油断なさらないでください!」

「ごめん! 助けてくれてありがとう」

俺はここまで来てやっと混乱から抜け出し、全力で身体強化をかけて剣を構えた。やっぱり実戦経験のなさがこういう場面で出るんだよね。バリアを過信しすぎるのはダメだ。

「意外と硬かったか……」

男はそう呟くとまた俺の方に飛びかかってくる。そのスピードは相当なもので、やっと目で追い切れるレベルだ。身体強化を全力でかけていなければ絶対に追いつけない。ほんとにこいつ誰なんだ。

ガキンッッ……!!

俺と男の剣がぶつかり合う。全力を出しているけど、力は拮抗していて競り勝てない。

「ほう、意外と強いな。この世界の者にしてはやるではないか」

男はそう呟くと俺の剣を弾くようにして後ろに下がり、そのすぐ後にナイフを投げてきた。凄い速度だ。俺がそれを剣で弾いてる間に、男は俺に迫って来る。このままだと剣で防ぐのは間に合わないっ!

そう思った俺は、バリアで剣を作り出し男の剣を受け止めた。

「……っ!!」

重い。魔力がどんどん減っていく! でもまだバリアは壊されてない。

俺は男の剣をバリアで受け止めてる間に後ろに下がり、男から距離を取った。その間にロジェがナイフを男の心臓目掛けて投げたけれど、それは難なく防がれる。

「その魔法は厄介だな。あちらの世界にはないものだが……」

さっきからこの世界とかあちらの世界とかどういうことなんだ。もしかして、この人って別の世界から来たのか?

今度はこちらから仕掛けてやろうと思い、俺は男の正面から心臓めがけて飛びかかった。そしてそれと同時に、男の死角からバリアの剣でも攻撃をする。流石にこれは防げないだろう。

そう思ったけれど男はどこからかナイフを取り出し、両方の剣を難なく受け止める。……こいつ、俺より強い。

でもこっちは二人いるんだ。これで両手が塞がったのだからロジェが攻撃すれば……

俺がそう思うのよりも早く、ロジェはナイフを男の心臓と頭に狙いを定めて投げていた。さらに自分も男めがけて飛びかかる。

これで勝てる……! そう思った瞬間、男が魔法を使って爆発を起こした。

「なっ……!」

俺は咄嗟に察知して、間一髪のところでバリアの剣を解除しロジェにバリアを纏わせた。そして自分の前にはロックウォールを作り爆発を防ぐ。

さっきあの男、火魔法と風魔法を組み合わせて爆発を作ってた。さらに自分を守るように風魔法で自分の周りの空気を動かないようにしてたと思う。その上で水魔法を使って熱の影響も受けないようにガードしてたし……。かろうじて分かったのはそこまでだった。

……俺以外にも複数属性を使えるやついるじゃん。本当にこいつ誰なの。

「ロジェ大丈夫!?」

「はい。バリアをありがとうございます」

「二対一は分が悪いな。先にそっちのを殺すか」

男はそう言って標的をロジェに変えた。

ロジェは絶対に守る、絶対に殺させなんかしない。そう気合を入れて剣を構えたけれど、どうすれば良いのかは分からない。

今の俺ではこの男に勝てそうにない。転移を使えば逃げられるけど、ここで逃げたら屋敷の皆が危険になるかもしれない。

……それなら倒すしかないよね。幸い転移はまだバレてないはずだから、今あいつの後ろに転移してそれで後ろから心臓を一突きすれば倒せるだろうか。

もうそれしかない……

俺はそう思って剣をぎゅっと握りしめ、男の後ろに転移した。そしてそのまま後ろから心臓を一突き、しようと思ったけど寸前で男に防がれた。何でこれが防げるんだ!

「今のは危なかった。もしかして別の場所に一瞬で移動できるのか? それは厄介だな」

「……何で気づいたんだ」

「まあ、教えてやってもいいか。答えは角だ。俺は目だけでなく角で空間を把握して敵の位置を知ることができる」

その角にそんな役割があったのか……勝てない。この男には今の俺では勝てない。……どうすればいい。どうすればこの場を乗り切れる。

男と剣をぶつけ合いながら俺は必死に考えた。でも思いつかない。この男に勝てる未来が見えない……

そもそも何が目的なんだ。何で俺を殺そうとするんだ。それにこいつはどこから来たんだ。

「レオン様、ご無事ですか!?」

そんなことを考えていたら部屋の外から兵士の声が聞こえて来た。さっきの爆発で気づいたのだろう。

「ちっ、もう気づかれたか。人数が増えるのは厄介だ……まあいい。また次の機会だな。おいお前、次は殺してやるからせいぜいそれまで人生を楽しむんだな」

男はそう呟くと、素早く窓から去っていった。助かった、のか……?