作品タイトル不明
第8話「ダンジョン講習受付、ひよりとの再会」
#第8話「ダンジョン講習受付、ひよりとの再会」
俺は高校を卒業してすぐにハンターになることを決めた。
ハンターになるには申請だけで十分だが、初心者にはハンター協会による「ダンジョン講習」を受けることが推奨されていた。
そこで俺も例に漏れず、その初回講習に申し込んだ。
ゲームの知識や高校生時代の友達からの情報である程度は分かっているつもりだがそれでも最新情報は入手した方がいいだろうという判断だ。
ダンジョンについて少しでも知っている情報に間違いがあったらとんでもない遅れに繋がる。それは致命傷になる可能性があるとゲーム時代の経験から考えていた。
そしてダンジョン講習の当日、協会の受付窓口で俺は――驚いた。
「え……ひより?」
そこに座っていたのは、最近俺の家に頻繁に来るようになった幼馴染――天川ひよりだった。何でここにひよりがいるんだ?
俺の混乱を無視するようにひよりが俺に話かけてきた。
「おっ、レン。久しぶりだね」
高校の制服姿ではなく、協会の公務員用のスーツ姿がよく似合っていた。俺の驚いた顔を見て、ひよりは笑っている。
「久しぶりって……前回会ったのは2日前だよな?」
「ってか、公務員って言ってたじゃん?あれはハンター協会勤務って意味だったのか?」
「そうだよ。公務員からのハンター協会勤務希望者は少ないから、公務員になるのもハンター協会勤務もすんなり通っちゃったみたい」
ひよりはそう言って肩をすくめる。
「ハンター協会に入ればそっち方面の知識も増えるからレンのことも支えられるし、公務員だから定時で帰れるし、レンの弟や妹の面倒も見られるし。私にとってはちょうどいいんだよね」
その言葉にはびっくりした。ありがたいどころじゃなかった。もはや感謝しかない。けれど、そんな俺の表情を見たのか、ひよりは少しだけ顔を引き締めた。
「でも、ここでは受付担当であり公務員だから。特別扱いとかはできないよ。ある程度の知識は伝えられるけど……極秘事項とかは教えることはできないから。それは分かっているよね?」
「……うん。分かってる。もちろんそうだよな」
律儀なところも、昔からずっと変わらない。俺に特別扱いできないと釘をさしてきた。これは当たり前のことだ。そんなことをしたら大変なことになる。
ただ言葉では分かっていると言ったものの、俺の中には小さな迷いが芽生えていた。
――このまま、ひよりに甘えてばかりでいいのか?
彼女の優しさに甘えるのは簡単だ。でも、それだけで済ませてはいけない気がした。
俺はすでにひよりが好きになっている。かわいいし、既に返しきれない恩もある。
――いつかちゃんと、気持ちを伝えないとな。
でも、それで今の関係が壊れたら……。怖さもある。
俺は卑怯だ。今の関係が壊れて弟と妹の面倒を見てくれるひよりがいなくなる可能性を考えると告白ができない。
俺はまだ、ダンジョンの中にも踏み出していないのに、こんなところで足がすくんでいる――。