軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第5話「二度目の追放、そして寝取られ(NTR)」

#第5話「二度目の追放、そして寝取られ(NTR)」

俺たちのクラン『エクリプス』は、学校のクラスメンバー中心の小さな集まりだったがそれでも皆で協力し、放課後や休日に低難度のダンジョンを攻略していた。あくまで“趣味”の範囲であり、本気でトップを目指すようなものではなかったが、それでも仲間意識はあった。

俺はというと、昼は学校、夜はバイトで手一杯。ダンジョンに行く余裕はなかった。しかしゲーム知識は豊富だったから、仲間たちにモンスターの弱点や宝箱のドロップ条件の考察などを教えることで貢献していた。

そんなある日、事件が起きた。

高校3年の2学期、俺たちの高校に大手財閥系企業『シンエン・グループ』の社長の息子―― 御影司(みかげ・つかさ) が転校してきたのだ。

彼はすぐに話題の中心となり、金持ちだという噂が校内を駆け巡った。そして、俺たちのクラン『エクリプス』に加入を希望してきた。

当初は驚いたが、「強くなるには現場を知ることが必要だ」と彼は語り、嫌味もなく腰が低かったため、仲間たちも歓迎ムードだった。

しかし――それは静かな侵食の始まりだった。

少しずつ、俺に対する空気が変わっていった。

「レンは実戦に出ないしね……」

「バイトで来れない人にリーダーを任せてていいのかな」

「御影くんの方が頼りになるかも」

「御影くんに付いていくと大人が随行してくれてレベリングしてくれるし頼もしい。それに比べてうちのリーダーは…」

そんな声が、耳に入ってくるようになった。

仲間が陰口を言い合っているらしい。最初は信じたくなかった。でも現実は冷酷だった。

御影は水面下で、仲間たちに「実力主義」の必要性を説いていた。表では丁寧な口調だったが、裏では俺の存在を「足手まとい」として認識させていたのだ。

そしてある日の放課後、ついに言い渡された。

「結城蓮、君をこのクランから追放することに決まった。君の知識はありがたかったが、実戦に出ない者がリーダーでは、今後のクランの成長を妨げると判断された」

その場には仲間たちがいた。でも、誰一人、反論の声を上げる者はいなかった。

その中には―― 紗月(さつき) の姿もあった。

幼馴染で俺の恋人。俺のゲーム時代に一緒だったあのルナと、どこか似た雰囲気を持つ女の子。

「ごめんね、レン……。私も御影くんがリーダにふさわしいと思う。その方が未来が見えるから」

言い方は優しかった。まるで別れを告げる恋人のように。

――またかよ。

過去がフラッシュバックした。あの時も、金と力を持つ人間に、仲間も、想いも、全て奪われた。

けれど今回、俺にはそれほどの怒りも、悲しみもなかった。

俺はそもそも、このクランにそこまで思い入れを持っていなかったのだ。クランの設立も、仲間の管理も、ほとんど他のメンバーがやってくれていた。

唯一、胸を締めつけたのは――紗月の選択だった。

それでも、俺は笑った。

「分かった。もう何も言わない。みんな、頑張れよ。強くなって、ちゃんと生き残れよ」

そう言って、俺はクランを抜けた。

俺1人がどうのこうの言っても始まらない。

その後、御影は再び俺を呼び出した。

そこにいたのは御影、そして紗月だけだった。

そして御影は俺に言った。

「俺は紗月と恋仲になった。だから今後、君は紗月に近寄らないで欲しい」

「紗月はそれでいいのか?」と俺が聞くと

「レン、ごめん」

御影は紗月を抱き寄せていたが紗月には嫌がるそぶりは無さそうだ。

そっか、そこまで話が進んでいたのか。ならば俺がリーダーから降りるのを了承したのも納得だ。

そして意外にも俺はすがすがしい気分だった。バイトなどで忙しくて紗月の相手ができなかった。どこか申し訳ない気持ちだったが、今回、裏切られたのでイーブンだなと感じたのかもしれない。

かつてのルナ。今度は紗月。

俺の人生は、何度も同じような形で裏切られ、見限られていく。やはりなんだかんだで金が全てなのかな。

そして……これが本当のNTRってやつか。チームだけでなく恋人の紗月も金持ちの御影に奪われた。

「じゃあな、紗月、幸せになってくれ」

そうして返事も待たずに俺は振り返りその場を去った。

そして自宅に戻り1人になった。

あの時は「すがすがしい気分だ」と思ったが1人になると……何故か涙が止まらなかった。

思ったよりも心が疲弊していたのかもしれない。

思えば紗月とはキスもした。将来の結婚の話をすることもあった。その全てが崩れ去ったのだ。

やはり世の中、金が全てか。ゲームでも現実でも何も変わらない……

俺は思ったよりも強くなかった。そして心も乾いていなかったようだ。

夜が明けるまで泣き続けた。