作品タイトル不明
第4話「ダンジョンの宝箱と勢力争い」
#第4話「ダンジョンの宝箱と勢力争い」
あの隕石が落ちてから、世界は変わった。
地球の各地に“ダンジョン”と呼ばれる異空間が出現し、そこから現れるモンスターや財宝、そして不思議なルールに人々は困惑した。だが、数か月の混乱を経て、政府と企業はこの異常事態を利用しようと動き出した。
中でも注目を集めたのが“宝箱”だ。
ダンジョンのモンスターを倒すことで確率で出現するこの宝箱には、驚くべき価値があった。金・銀・銅の三種類が存在し、中には以下のいずれかが入っている。
・金箱:100%中身あり
・銀箱:10%中身あり
・銅箱:0.1%中身あり
そして宝箱に中身がある場合は武具、使役モンスター、財宝の3種類のいずれかが出てきた。その後の研究で武具は3種類あることが分かった。
中身は開けるまで分からず、さらにダンジョン内で開けなければ装備やモンスターは使用できないというルールが設定されていた。
しかも武具やモンスターは宝箱を開けた本人のみが使用でき、他人への譲渡も不可とされた。この辺りはまさしくゲームの仕様と同じだ。
・武具(武器、防具、ブーツのいずれか。宝箱を開けた本人のみ利用可能)
・使役モンスター(宝箱を開けた本人のみ利用可能)
・財宝(戦闘に利用不可。通貨換算で約2,000万円相当で交換されることに、ただし相場は常に変動)
使役モンスターは5体まで連れ歩ける。また使役モンスターを持っている人はスロットという格納庫ができる。スロットに入れているモンスターは戦闘参加ができない。また使役モンスターはダンジョンの外にも連れていけない。
また、武具は1人1部位1つずつしか装備できないという制限もあった。最大3つの武具を装備できるわけだ。
一方、財宝は唯一誰でも換金可能なアイテムとして流通し、主に富の象徴として機能するようになった。
この宝箱を巡って、一種の勢力争いが始まった。
多くの大企業――特に財閥系の巨大企業は、宝箱を得るために“ハンター”と呼ばれる人材を大量に雇い入れた。
ハンターたちは企業の資金援助を受けて装備を整え、より深いダンジョンに潜ってレアな宝箱を得る。その宝箱を企業が買い取り、装備をハンターに提供する、装備によってより強くなったハンターは宝箱を得る――そんな循環が成立していった。
やがてこの仕組みは問題視され始めた。
「このままでは財閥系企業だけが戦力を独占する」
「富と力の格差が拡大するだけだ」
「政府による規制が必要ではないか」
テレビでは毎日のように有識者が討論を繰り広げた。中には「これは新たな資本主義だ」「格差の象徴がゲームの世界からリアルになっただけ」と冷笑する者もいた。
だが、規制は進まなかった。むしろ政府関係者の一部が企業側と癒着し、企業有利の制度設計が水面下で進行していったのだ。一部の議員は反対したが無力だった。
結果、ランキング上位のハンターは財閥系列企業やその子会社が独占するようになった。
なお、ハンターになること自体は難しくなかった。16歳以上であれば申請するだけで誰にでもなれ、 ID(マイナンバー) によって一元管理された。クラン(グループ)も自由に設立・加入でき、学校や地域単位でのクランも増えていった。
そんな中、俺――結城蓮は、高校三年のときに知り合いに促されるままにハンター登録した。また、ダンジョンの基礎知識に詳しいことからクラスメイトから頼られる存在となっていた。ゲーム時代の知識をもとに、クラン活動に参加する仲間に助言を与えていたが、俺自身は相変わらずバイト漬けの日々。実戦に出ることはなかった。
それでも皆が言ってくれた。「リーダーになってくれ」と。
かつて使っていたクラン名――『エクリプス』。
その名を掲げて、俺は再びクランを率いることになった。