軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第384話「束の間の買い物」

#第384話「束の間の買い物」

今や政府系ダンジョンになった、恩方ダンジョンに自衛隊トップの高倉さんが来られた。

やや難しい顔で「レンたちに依頼がある」と言ってきたので重たい話を覚悟していた。

しかし違った。実際に話を聞いた瞬間に俺は思わず吹き出してしまった。

「クアンとレイラの買い物に付き合ってほしい?」

依頼とはまさかのクアンとレイラの買い物の付き添いだった。それぐらいなら別に難しくもない。

むしろ、俺たちにとっても悪くない話かもしれない。

ダンジョンに潜って、討伐してミーティングして……その繰り返しだと、さすがに気も滅入るからね。

数か月に一回くらい、みんなに息抜きがあってもいい。思えばうちのメンバーはみんな女性だ。そして買い物も好きだ。以前も変装用の衣類を購入するのに盛り上がっていたからね。

高倉さんによると、クアンが命を懸けてレベル4モンスターを食い止めたことに感動し「何か望みはないか」と聞いたらしい。

まあそれはそうだよね。クアンのあの活躍が無ければ八王子が大変なことになっていたかもしれない。

高泉首相を誘拐しようとしたことで今は捕虜的な扱いになっているけど、それでも褒美ぐらいはあっていいと思う。

そしてクアンから返ってきた答えが……買い物だったということだ。

いつもは家とダンジョンの往復で変化に乏しいので街で買い物をしてみたいという話らしい。

クアンもレイラもテロ組織のメンバーと言っても普通の女性。見知らぬ土地に来たら街を見てみたいだろうし買い物もしたいだろう。

高倉さんとしては望みが買い物となるということで少し拍子抜けしたらしい。

でも、俺も見知らぬ土地に行ったら街を見てみたいと思うだろうしね。すぐには思いつかないし、望みとか言われるとそれを答えるのも普通にありえる話だ。

その程度の願いはかなえてあげたいところ。とはいえ、懸念がないわけではない。

元とはいえQ国のテロメンバーなんだよね。

しかもクアンは、ダンジョン外でも力を発揮できる数少ない存在だ。街で何かあったら大きな責任問題になる。

ということで何かあったときにすぐに止められる俺たちに高倉さんが直接依頼をしてきたという状況だ。

まあ、俺としても凄い活躍をしたクアン、そしてレイラの望み通りにしてあげたい。さらには、うちのメンバーの息抜きになるので丁度良いと判断。

みんなに聞いてみると……

「まあ、いいんじゃない?」

「買い物行きたいです!」

「どこの街に行くのですか!」

基本的に賛成の意見が多かった。やっぱり女性だ。買い物が好きだよね。

若干、思わせぶりな笑みが混じっていたのが気になるが、まあ深くは考えないことにする。

念のため、全員サングラスなどで軽く変装。今はまだ問題ないとはいえ、いつ身バレするか分からないからね。

そうして、俺たちは原宿へ向かった。

……正直、俺は原宿の店とか、おすすめがよく分からないから基本的にひよりとルナ任せになる。

クアンとレイラは来る途中でも日本の発展している様子にびっくりしていたが原宿では更にびっくりしている。

「(日本は凄いです。街が綺麗でお店がたくさん)」とクアンは感動しているようだ。

「(確かにな。Q国とは全然違うよ。別世界だな)」とレイラも驚いている様子。

うん、うん。是非とも日本を堪能して欲しい。

ダンジョンで頑張っているおかげさまで資金は潤沢だ。気にせず好きなだけ買ってもらいたいと思っていたのだが――

どうやら俺と同じく、みんな貧乏性らしい。

値札を見て少し考え、結局戻す。そんな光景が何度も繰り返された。それでもみんなそれぞれ洋服やアクセサリーを買ったみたいだけどね。

俺はそんな様子を少し遠くから眺めた。やはりあの中に混じるのは難しい。男は俺一人だしね。

そしてアイスクリームを食べたり、雑貨を見て笑ったり。いろいろなお店回りをして歩くだけでも、十分に楽しそうに見える。

クアンもレイラも、今日はどこか柔らかい表情をしている。

うーん。こうやって見ていると……やはり俺はリーダー失格かもしれないな。休む時間もたまには作ってあげないと駄目だろう。

いつもダンジョンに潜って討伐を進めているだけ。もっと楽しみがあっていいはず。

「今度はディズニーランドとか行くのもありかもな」

「いいね。久しぶりに行きたい!」とひより。

「少し遠いから早めに計画を立てないとまずいな」とルナ。

「乗り物に乗ってみたい!」とロアがはしゃいでいる。

そうだな。今はダンジョンの氾濫も数か月に一回程度でまだ余裕があるからね。だからこそ、楽しめることは楽しんでおいた方がいいと思う。

使役モンスターもネットの映像で見るのと実際に街を体験するのは全然違うだろうからね。せっかくダンジョンの外に出れるのだ。いろいろな体験をしてもらいたい。

そうして束の間の息抜きを終え、俺たちは帰路についた。今回は高倉さんの依頼だったけど定期的にこんな時間も作っていきたい。

当然のことながら、明日からまたダンジョン討伐が始まる。

六階層の討伐はやはり大変だ。多少は慣れたけどまだ八人全員でないと討伐が進まないのが現実。

地道に力を付けて頑張っていこうと思う。