軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第385話「動き出す世界の影」

#第385話「動き出す世界の影」

日本でレベル4モンスターの氾濫が確認された後、世界各国の視線は再び日本へ向けられることになった。

決定的だったのは、恩方ダンジョンから溢れ出たレベル4モンスターと、それに自衛隊服姿で立ち向かうクアンの映像だ。

当局からの指示でそのクアンの戦闘映像は削除されていった、そして様々な類似のAI映像がそれと入れ替わりに入ったことで、ネットではデマ映像であるという結論に達した。

本物の戦闘映像を隠すために偽の戦闘AI映像を大量に流した結果である。多くの人は騙されてくれた。

しかし、そのほとんどの映像は世界にも拡散されている。いくつかの国では、国家レベルで解析に回されていた。

そして最初に出ていたとされる映像のみは本物である可能性が高いという結論に達していたのだ。

もちろん、人間がレベル4モンスターと正面から戦うなど常識では考えられない。

しかし最初に出ていた映像については編集や生成AIによる偽造の痕跡は確認できない。

つまり、日本は何らかの秘密戦力を保持している可能性が極めて高いということだ。

「それは本当に人間なのか?」

「分かりませんが、レベル4モンスターに対峙しています。相当に強いのは間違いありません」

とんでもない戦力が日本にいる……いくつかの国ではその結論に達していた。しかしおかしい、人間がレベル4モンスターと戦えるはずがないのだ。

大量のドローンでも勝てないようなモンスターと人間が戦うなど常識的にあり得ない。

「もしかしてダンジョンから出てきたモンスターを手なずけているのではないか?」

「最初はその辺りの推測もなされました。しかしダンジョン内に普通の人間タイプのモンスターはいません。そのため、その推測は排除されています」

確かにそうだ。映像に映る存在は、どう見ても普通の人間。そこまで大きくない。性別までは分からないが背が高いようにも見えない。

そして、少なくともモンスターのようには見えない。

さらに言えば、その動き、そして相手の攻撃を見ての状況判断。どれもが“人間の戦闘”に見えた。

そして、もう一つ不可解な点があった。

映像を見る限り、日本の秘密戦力もレベル4モンスターに対しては明らかに不利だったのだ。

そう、クアンはレベル4モンスターと同等に戦えたわけではない。完全に不利な状況だった。

戦闘で不利となれば、最終的にレベル4モンスターを倒すには携行型誘導弾などの重火器を使用するしかないはず。

だが、現地情報を聞く限りではその痕跡がない。爆発音の報告も、大型兵器が用いられたような現場映像の報告もない。

衛星画像の解析なども行われた。そこまで精度は高くなく、細かい部分までは分からない。それでも、さすがに携行型誘導弾などの重火器の使用があれば分かるはずだ。

しかし衛星映像では何も分からなかった。

最終的にレベル4モンスターをどうやって倒したのか。疑問ばかりが残った。

やがて、各国は再び裏組織に依頼をかけ始めた。日本は何か兵器を隠しているのではないか。

あるいは、特殊な強化人間計画が存在するのではないか。空想のような話までが出てきた。

問い合わせは相次いだ。しかし、日本の裏組織もまた“それ”については何も知らない。

表向きは「そんなものは存在しないだろう」と返答した。

だが内心では、薄々感じ取っている。北海道・駒ヶ岳ダンジョンでのスパイたちの会話。

圧倒的な戦力がモンスターを殲滅したであろうという話を司と共に案内をしていたエリは聞いていた。

あの時点で、日本に何らかの異質な戦力が存在することを裏組織は確信していたのだ。

しかし、裏組織でもその秘密の戦力を探したが……ヒントすら掴めていない。情報が欲しい。

可能ならば、その戦力を味方に引き込みたいのだ。そうすれば日本の裏どころか表の征服さえも可能になるかもしれない。

そうして、再び裏組織から司へ指令が下った。各国関係者を八王子の恩方ダンジョン、富士山麓の青木ヶ原樹海ダンジョンへ案内せよというものだ。

ただし恩方ダンジョンは政府管理下。一般人の入場は不可。現実的に内部までの案内可能なのは青木ヶ原樹海ダンジョンのみ。

司はほくそ笑んだ。以前にその関連の仕事をしており報酬が高いことを知っていたからだ。

「またおいしい仕事が入ってきたな」

そして再びエリの同行を願い出た。半ば駄目元だったが、組織はあっさりと承認した。

司としては報酬も良く、かわいい女の子の同行が許されるルンルン気分での仕事である。

この二人は、意外にも優秀なコンビである。英語も理解できない無知な男の司、最初はスパイも警戒していたが、その様子を見て本当にただの馬鹿だと判断して警戒を解いた。

その隣でじゃれ合うエリ。当然、エリも司と同様に警戒が解かれた。だが実際は、エリが冷静にスパイの言動を観察し、情報を抜いて裏組織に報告していた。

北海道・駒ヶ岳の時と同じ状況。裏組織は今回もエリからの何らかの収穫を期待して司に同行するように伝えたわけだ。

こうして、世界各国は水面下で動いた。各国から派遣されるスパイ、日本の裏組織。そしてその指示で動く司やエリ。

日本の“秘密の戦力”を巡り、水面下の探り合いが再び始まろうとしていた。