軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第37話「御影の回想と苛立ち(御影視点)」

#第37話「御影の回想と苛立ち(御影視点)」

俺のおやじは財閥系企業の社長だ。小さい頃から忙しそうで、ろくに話した記憶もない。その代わり、金だけはたっぷりくれた。

ゲーム機、自転車、最新スマホ、キックボードなど欲しいものは何でも手に入った。小遣いも友達の何倍ももらい遊びにもいった。俺は好き勝手できたし女にも困らなかった。

ただ――女絡みで少しトラブった。二股かけてた相手同士が揉めた。性格がキツい女はやっぱダメだ。大喧嘩に発展し責任を取れと言ってくる。こいつらは何を言っているのだ?

恋愛は自己責任でお互い様だろうに。本当にめんどくさい。そう思って夏休みの間に高校三年の時に転校した。特別仲の良かった友達がいたわけでもないので特に未練もない。転校先で新たに交友関係を作ればいいだろう。

転校先では、学校内にダンジョン攻略、ハンターを目指すクランがあった。俺は親父の仕事の関係でダンジョンにも多少は詳しかったからクラン活動には興味があった。将来的には俺自身がハンターになりレベルアップして会社に貢献するつもりだったので丁度良い。

そのためクランに入ったのだが、まあ緩い空気だった。同好会レベルの緩さと適当さ。そこで俺が引き締めてやるか――そう思った。

そこで見つけたのが紗月という女だった。あどけなくて、おとなしくて、ちょっと地味だけどかわいい俺好みだった。これはあと数年すれば更に良い女になる。俺にふさわしい、俺のものにしたいと思った。

問題は彼氏の結城がいたことだ。でも紗月に聞いたら結城がバイトばっかで構ってくれないと文句を言っていた。しかも結城は貧乏ときた。これはチャンスだと思った。

豪華な食事、遊園地、アクセサリー。金の力で心を満たしてやった。案の定、紗月は笑顔を見せてくれた。攻略は簡単だった。そしてついに俺の告白を受け入れた。

ただし放置していてはまた元に戻る可能性がある。結城をしっかりと引きはがす必要がある。結城はクランのリーダーだった。そこで俺は適当に結城の悪い噂をまいてクランを乗っ取った。多少強引ではあったが周囲を丸め込むのは簡単だ。最終的には金と実力で証明すれば、誰も逆らわない。

財閥企業系のクラン運営の方針を伝えれば誰もが頷く。そりゃそうだよな。年収数千万円、下手すれば数億円プレイヤーになることも夢ではない。庶民にとっては嬉しい話だろう。

こうして俺は結城をクランから追放した。更には紗月と付き合っていることを告げて近寄らないようにと突き付けた。貧乏人には何もできないだろう。案の定、結城は受け入れた。

少し手間はかかったがクランも女も手に入れた。欲しい物は金と実力で手に入れる。これがいつもの俺のやり方だ。結果に満足しそのまま高校生活を謳歌した。

高校を卒業して後、希望者はクランにそのまま引き入れた。本来は一般募集して面接して引き受けるのだが結城を追い出す時に協力してもらった負い目がある。そして下手な噂をばらまかれても困る。

またクランについて一から教えるのは面倒だ。ある程度知識のある人間の方がいいだろう。

そうして新たにクランがスタートした。俺のおやじの会社のバックアップでレベリングし着実に実力を付けていった。このまま成長していけば国内有数のクランになれるはずだ。

そうして……うまくいったはずだった。

だが――紗月の様子がなんかおかしい。最近は食事に誘っても嬉しそうじゃない。どこか心ここにあらずということが増えた。笑ってはいるが本心じゃない気がする。まさか、結城に未練があるのか?まだ結城とコンタクトを取っていたりするのか?

そんな疑念が湧いた。調べると、結城――もハンター活動を続けていた。やはりこいつのせいか?

ただ結城は1階層でちまちまやってるって話だった。“ゴミ漁り”とまで言われている。ハンターになっても底辺だ。俺は安堵した。

そして俺は紗月に結城が“ゴミ漁り”と言われているという現実を教えてやった。これで紗月は俺だけを頼るはず……そう思ったが何も変わらなかった。

それどころか更に不満そうにする表情が増えた。くそこの女、何を考えているのだ。

そこで更に結城が“ゴミ漁り”をしている現場を見せてやった。

あの程度の雑魚に未練なんて、笑止千万。俺はレベル5、財閥系企業社長の息子、一方であいつはレベル1で“ゴミ漁り”をしている貧乏人。この状況を見ればきっぱりと未練は無くなるだろう。

でも現実には逆だった……紗月の視線は明らかに結城を追っていた。まるで結城を求めるかのように……。

なぜだ。どうしてだ?

俺の方が全てにおいて上だというのに……。異常に、むかついた。

こいつ、どうしてやろうか。もう面倒だし捨てるか?でもレベリングまでして育てたのに捨てるのはもったいない。下手をすれば他のメンバーからも文句が出るかもしれない。

そんな状況になればおやじにも文句を言われかねない。高校の時のように捨てることもできない。腹が立つ。

俺のやり方は正しいはずなのに……

やはり結城をどうにかするしかないのか?そう思うようになった。