軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第360話「重さの意味」

#第360話「重さの意味」

レイラとクアンは、レンたちとの四階層攻略を終え、政府が用意した簡易住居へと戻った。

地上に出る際、二人は両手両足に合計20kgの拘束具を装着する。常人なら立つだけでも苦しい重さだ。歩くのもかなりきつい。それでも、彼女たちは全く不満を漏らさなかった。

そして、レイラが軽く肩を回し準備体操をするような態勢で軽く笑いながら言った。

「拘束具はかなり重いけど……それなりに慣れたな。もう生活するにも特に支障はない」

「レイラさんと一緒に住めるなら、これぐらいどうってことないですよ」

クアンは笑って答えた。

二人にとって拘束具はもちろん重たいものではあるが、もはや罰とは言えなかった。クアンの言う通り、たいしたことがないと思っていたのだ。

何より普通の住宅に住むことができ、食事がきちんと支給されるのがありがたい。

Q国の住まいも食事情は決して良いとは言えない。住む場所に困らず満足に食べられる今の環境は、むしろ以前よりも恵まれている。

外出は自由にできず拘束具はあるものの、向こうよりもかなり良い生活と言えた。

一方で、政府側としても特段の問題はなかった。

まずは四階層で安定して魔石を回収してくれる二人はそれなりの戦力だ。そこから入る収入がある。多少の食料支給など痛手でもない。しかも将来的には地上での戦力になる可能性もあるのだ。確保しない手はなかった。

そのために生活面の面倒はそれなりにしっかりと見ていたのだ。

もっとも、後から外部に知られた際の体裁もある。後々、人権団体に問題視されぬよう、最低限の生活は保障している。そういう計算もあったわけだ。

ともかくレイラとクアンから見れば、Q国の一般基準よりもかなり恵まれており十分な待遇と言えた。

二人はその日も元気に支給された食材で料理を作った。二人にとっては何不自由ない日常だ。

湯気の立つ鍋を囲みながら、自然と会話が弾んだ。今日のダンジョン攻略や今後の計画などについてだ。

そしてレイラがふとクアンに問いかけた。

「……でも、いいのか? 彼に、自分の気持ちを伝えなくて」

「な、な、何を言っているのですか?」

クアンはレイラに図星を言われて耳まで赤くなった。まさか自分の気持ちがレイラにばれているのかと思ったわけだ。

「そりゃ見てたらさすがに分かるよ。バレバレだよ。彼のことが好きなんだろう?」

「……は、はい」

クアンは観念したようにうなずいた。本当にその通りだから否定する材料は何もない。

彼女にとっては異性を好きになるというのは初めての経験だった。

まずレンはレイラに依存する自分を否定しなかった。それどころか信頼できるとまで言ってくれた。周りのみんな、レイラさえも否定していた自分の気持ちを肯定してくれた、たった一人の理解者だった。

そして過去ではなく今の、そしてこれからの先の自分を見てくれた。頑張っていると褒めてくれた。

更にはレイラとの生活を作り、守ってくれた。命の恩人とも言えた。好きにならない理由がなかったのだ。

それでもレンに対する気持ちは伝えなかった。彼女には告白はできなかったのだ。

「さすがに言えませんよ。レンさんにはふさわしい相手がたくさんいるじゃないですか。それに、せめて、何か貢献でもしないと」

「それでも……いいのか?」

「もちろんです。そのために、まずは強くなります」

握った拳に力がこもった。クアンは今の自分ではレンの迷惑にしかならないと思っていたのだ。まずはレンに匹敵する実力を持たなければ話にならない。

レンにはすぐ近くに7人もの女性がいる。しかもその7人ともに、レンを浅からず想っているように見えた。

そして、その7人ともに自分よりはるか上だ。今の自分では全く勝てない。比較にさえもならない。

だからこそレンの相手になるはずもないと思えたのだ。せめてまずはレンと同等以上に強くなる必要がある。告白するにしても、まずは話はそれからだろう。

「そうか。ならば頑張らないとな。まずはレベル5をめざそうか」

「はい。頑張ります! その上にいかないと話になりませんから」

力強く答えるクアンを見てレイラは静かに笑った。そうしてクアンは、自分の想いにそっと蓋をした。

今はまだ言わない。言える立場ではない。だからこそ絶対に強くなる。

せめてレンと同じぐらい強くなって、胸を張れるようになってからだ。

そのクアンの決意を見守りながら、レイラはどこか幸せそうに微笑んでいた。

「それよりも早く食べましょうよ。強くなるためには食べることも大切です」

「そうだな。食べようか」

そうして二人の会話ははずみ、おいしそうに食事を進めた。

二人にとっては本当に幸せな貴重な時間だ。

もちろん拘束具の重さはある。ダンジョン攻略が思うように進まずにつらい時もある。だがその重さごと、今の生活を二人は受け入れているのだった。