軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第359話「信用という名の距離」

#第359話「信用という名の距離」

その後、俺たちは朝倉さんから一つ頼みごとをされた。クアンとレイラのダンジョン活動を、一度見てほしいというのだ。

俺としても二人のその後が気になっていたので、数時間だけという条件付きで了承した。

俺たちも六階層攻略で忙しい。長時間付き合う余裕はない。

予定を調整して彼女たちと共にダンジョンの四階層へ入った。正直、俺たちにとっては準備運動にもならない階層だが仕方がない。クアンは確かレベル4だったはずだから四階層は適正階層、それ以上は厳しい。

俺とルナ、ひより、そして使役モンスターのラム、リン、ロア、ルフ、クーは彼女たちの四階層攻略を軽くフォローした。

もちろん、危険だと判断すれば即座に介入した。

だけど、彼女たちは思っていたより強かった。

特にレイラさんは動きが洗練されていた。クアンとの連携も無駄がなく、状況判断も冷静だ。これなら四階層は二人でも問題ないだろうね。

休憩中、翻訳機を通して軽く会話した。

「(レイラさんはかなり強いですね。びっくりしました)」

「(ああ、私はレベル5だからな。この階層ならぎりぎり余裕がある。さすがに一人だと厳しいがな)」

「(なるほど、レベル5ですか。それなら納得です)」

レベル5ならば確かに四階層で安定して戦えるだろう。ただレイラさんはレベル5の中でも上位ではないだろうか。安定感が凄い。本来ならばレベル5とレベル4の2人では厳しい階層のはずだ。

少し間を置いて、レイラさんが言ってきた。

「(ありがとう。君が私たちを一緒に暮らせるよう働きかけたと聞いている)」

「(いえ、俺に決定権はありません。上の人に提案しただけですよ)」

「(いや、君の意見が後押しになったと聞いている。本当に感謝している)」

「(礼はいりませんよ。本当に良かったと思っています)」

レイラさんは一瞬だけ苦笑しながらも頭を下げてきた。

もう少し感謝をしっかりと受け止めた方が良かっただろうか。あまり感謝されることもないのでちょっと難しい。

そう思っていたらレイラさんが続けた。

「(最初は君に誘拐を阻止されて腹が立った。憎き敵だと思った。だが……阻止されたのが君で良かった)」

「(そう思ってもらえるなら何よりです)」

敵だったはずの相手にそう言われると、少しだけ不思議な気分になる。

もちろん、俺のやったことは間違っていない。とは言え敵から見れば腹が立つだろう。そんな敵からも俺で良かったと言ってもらえたのはありがたい。やはり恨まれるのは嬉しくないからね。

レイラさんはクアンの方を向いた。

「(ほら、クアンも何か話せ。レンと話せるって昨日まで大喜びしていただろう?)」

「(レイラさん! なんでそれを言うのですか!)」

「(大喜び?)」

「(ああ、今日、君たちに会えることを楽しみにしていたんだ)」

「(……それ以上言わないでください)」

クアンは真っ赤になってうつむいた。

どうにも、よく分からないな。嬉しいのか、恥ずかしいのか。まあいいか。会えるのが嬉しいというならば俺としても嬉しいことだ。

やがてクアンが意を決したように口を開いた。

「(本当にありがとうございます。私たちが一緒に住めるようになったのは、レンさんのおかげです)」

「(さっきも言った通り、俺は上に話を通しただけだよ。それに上層部もすでに同じ案を考えていたようだし。俺が何もしなくてもそうなっていたと思うよ)」

「(それでも、レンさんが動いてくれたことが大きかったと聞いています。本当にありがとうございました)」

「(どういたしまして)」

レイラさんとクアンは、その後も何度も頭を下げてきた。何度も感謝されて悪い気はしない。でも俺はそこまでのことはしていないのだけどね。

そしてクアンは少しだけ声を落とした。

「(それと……依存しても別にいいのでは、と言ってくれたことも嬉しかったです)」

「(ああ、そんなことも言ったな。まあ俺個人の意見だけどね)」

「(人を強く思えるのは素晴らしい、と言ってくれたのも嬉しかったです。そういう人間を俺は信用したい、と言ってくれたのもありがたかったです。凄く気持ちが楽になりました)」

「(まあ、俺は変な奴だからな。そういう考えもあるってだけだよ。それが正解だと思わないで欲しいかな)」

本当は依存し過ぎは危うい。だが誰かを強く信じられるのは悪いことじゃないとも思う。そして人のために戦える人間は信用できると思う。

「(私はレイラさんだけでなく、レンさんも信用します)」

「(それは光栄だな)」

「(だから、力になれることがあれば何でも言ってください。……とは言っても、私はレンさんより圧倒的に弱いのでまだ何の力にもなれないとは思いますが頑張って強くなりますので)」

「(気持ちだけで十分だよ。でも、何かあれば頼らせてもらう)」

「(はい。本当にありがとうございました)」

「(ああ、頑張れよ)」

それだけ言って、俺たちは別れた。クアンとレイラはそのまま四階層で活動。そして、俺たちは六階層へ移動した。

それぞれの場所で、それぞれの道を進む。

おそらく、彼女たちはもう大丈夫だろう。もう間違いを犯すことはないと思う。強くなって、今度は人に貢献できるようになって欲しいと強く思った。