軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第327話「各クランの動き」

#第327話「各クランの動き」

日本ではダンジョンの氾濫に備えて多額の金を使った。

常時監視システム費用もそうだがハンター協会への補助金の増額、他にもランクアップ制度も取り入れている。

具体的にはレベル3以上のハンターのランクアップに対して報奨金制度が導入された。

レベル4、レベル5などレベル4以上に到達した者に対し、国が1人1回につき300万円を支給したのだ。

とりあえず先着1万人とした。その予算だけでもおよそ300億円になる。

これはハンターの全体の底上げを狙い、常時監視人員の強化にもつなげるという方針だ。

もちろん、すでにランクアップ済みの者からは不満も出た。

「なぜ今さらだ。俺の時は何もなかったのに」

「上がったばかり。次は遠いよ……」

だが制度とはそういうものだ。あくまでも未来への投資であり、過去への補償ではない。

そして、この報奨金の動きに最も敏感に反応したのは企業系クランだった。

現実にはレベル4へのレベリングには通常1000万円以上かかるとされている。だが300万円が戻るなら実質的なコストは下がる。

今がチャンスとばかりに急速にレベリングを進める動きが広がった。すでにハンター業界では企業系が有利という図式だったがそれに拍車をかける形になった。

政府の意図した本来の動きとは言いづらい、とは言え全体の底上げになるのは間違いのない事実なので目を瞑った。

その結果、以前より質はやや劣るが、レベル4の人数は確実に増えていった。

一方で、その流れを無視するクランもあった。当然のことながらレンたちのクランは関係のない話ではあるが、黒澤のクラン、エリナのクランも同様に独自路線に動いた。

むしろ、この2つのクランは逆の動きに出たとも言えよう。

黒澤とエリナは安易なレベリングを辞め、合同で二つの基礎講座を開設したのだ。

一つは「マインド養成コース」。もう一つは「武術鍛錬コース」。

いずれも原則無料だ。ただし順番がある。マインド養成コースを修了しなければ武術鍛錬コースへは進めない形になっている。

そのマインド養成コースではハンター活動の厳しい現実を教え込む。

・簡単には稼げない。当面は生活さえもできない

(現在は常時監視で食いつなぐことは可能だがレベルアップは遅れる)

・レベル4以上でないと生活は厳しい

・レベル4以上になれるのは全体2%もいない

・次の段階は武術鍛錬コースを受けながらの活動になるのでかなりしんどいので覚悟するように

他にも様々な厳しい現実を伝えるが、基本的にはこの辺りの情報を徹底的に伝える。

もちろんレベル4以上になれば大きく稼げるのでそこを目指すように頑張ろうという内容にもなっている。夢のある仕事ということも伝え奮起も促す。

すなわち最初の段階でハンター業界の厳しい現実や夢の部分を教え込み、それでもやるのかどうかという判断をさせるわけだ。

そして、その上で納得した人間のみ武術鍛錬コースを受けさせる。その武術鍛錬コースでは、専門家による武術指導に加え、一定量のダンジョン活動を義務付けている。

武術鍛錬コースで付いていけない者は基本的に脱落だ。再びマインド養成コースを受けるか、クランから外れるという選択肢になる。

アイドル戦略などの政府の広報により、ハンターになりたいという人は圧倒的に増えたが質は低い。そのために黒澤とエリナのクランではふるいをかけ質を高める方法として二つの基礎コースを取り入れた形だ。

すなわち、来る者はできる限り拒まず。去る者は追わずという形。

量もある程度求めるが、基本は質だ。そうしないと本格的なダンジョン攻略指導が無駄になる可能性がある。

これで見込みがある人間のみ指導していくことになる。

実際、多くは途中で脱落した。頑張っているのにも関わらずレベルアップは遠い。そしてレベル3まではほとんど稼げないという現実を知って辞めていく人間は多かった。

だが残った者は着実に成長する人間が多かったのも事実。そうして黒澤とエリナのクランの質は徐々に高まっていった。

この辺り黒澤もエリナも、レンたちの姿を見て考えたわけだ。

急がば回れ。そうして本気の者だけを育てる。

レンたちにも相談して作った形でもある。

「やはりやる気が一番大事」とレンは答えた。

「基礎鍛錬も必須だね」とルナはやはり基本が大切だと言及。

「片方だけじゃ厳しいね。その両方が必要だよね」とひよりはバランスの問題について伝えた。

その三人の指摘から作り出した2つのコースが、まずまずうまく回っている形だ。

やる気を試すマインド養成。やる気がある人間については、そのやる気をまずは育てる。

そして、それを突破した者に武術と実戦を課す。

厳しいが、その先に行けるものだけがクランの力になる。

そうして企業系クラン、黒澤とエリナのクランを中心とした草クラン、レンのクランなど、それぞれが自分なりの考えで成長を続けた。結果として日本では様々な方向から強化が進んでいた。

報奨金による量の拡大。基礎重視による質の向上など方向性は違うが目的は同じ。

政府が反対を押し切って予算をつけたことで、層は確実に厚くなりつつある。

もちろん、これだけで十分というわけではない。

だが止まるわけにもいかない。いつダンジョンが牙を剥くかは分からないのだ。少なくとも日本は歩みを止めずに模索しながら備えを進めていた。