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作品タイトル不明

第279話「司を呑み込む闇」

#第279話「司を呑み込む闇」

司が甘い言葉に乗せられ、加入しつつある団体――

その名は「反政府ハンター解放同盟」と言う。

表向きは“政府の横暴に抗議する市民団体”を名乗っている。

だがその実態は、巨大な裏組織が表社会に送り込んだ無数の“表部隊”のうちの一つにすぎない。

裏組織は社会のあらゆる分野に触手を伸ばし、表向きにはクリーンな活動を装った団体を多数運営していた。

たとえば――

★反政府団体

★NPO法人

★財団法人

★弁護士・司法書士ネットワーク

★政治家の支援団体

★医療法人、その他医療関係者

★芸能事務所

★メディア

★海外の協力団体

★宗教組織

★マルチ商法

★スピリチュアルサークル

★住所のみ実態のない裏企業

★チンピラ・半グレ

★暴力団

★人身売買の中継組織

★オレオレ詐欺グループ

などなど、その表に出てくる企業、団体はとんでもない数になる。

NPOなど表向きはまともに健全に活動しているように見える団体でも、その一部が裏の指揮下に落ちているケースもある。

その他、怪しい団体も活動自体は“合法の範囲ギリギリ”に収められている。違法ではないので普通にデモ活動などもできる。更には行政施設を利用してセミナーなども開催している。

だからこそ一般市民にはその危険性が見えにくい。

もちろん内部の一部の人間は表に出ている団体、企業が裏に利用されていることを知っている。

ただ、それを少しでも知る段階になると、そのほとんどは悪いことをしてしまった後だ。抜けることも困難でいつバレるかもしれないと毎日怯えて暮らすことになる。

なので怪しいバイト、怪しい団体には近づいてはいけないのは当然のことなのだ。

裏側の幹部は、こうした表部隊を使って世論の操作・嫌がらせ・資金調達を行う。

ときには“善意の第三者”を装い、

「私には政治家のつてがあります。一定の献金を払えばデモは静かになりますが?」

と依頼者に持ちかける。

――いわゆる“マッチポンプ”だ。

昔の暴力団の“みかじめ料”に近いが、こちらの方がはるかに巧妙で見抜きづらい。

なぜなら、デモ活動員のほとんどは裏側の存在を本当に知らず、純粋に理念を信じて動いているからだ。

裏の人間が一言いえば、司が取り込まれつつある「反政府ハンター解放同盟」の活動もピタリと止まる。活動メンバーにもそれらしい理由を伝えるだけでいいから簡単なこと。

昔と比べて、形が変わっただけで裏にお金が流れていく仕組みは全く変わっていない。より見えにくく悪質になったと言えるだろう。

そして裏社会の仕組みを知るのは、基本的にはほんの一握りの幹部だけ。活動員は善意で動き、幹部はそれを利用し、ほとんどのお金を裏組織が吸い取る。

汚い世界の構造が、静かにそこにあった。

そんな表部隊のひとつ――「反政府ハンター解放同盟」。

司はその甘い空気にあっという間に取り込まれつつあった。

メンバーの女性にチヤホヤされ、持ち上げられまるで英雄扱い。そうして司はいつしか疑う心も持たずに満足げに笑っていた。

ここが俺の居場所だと思うようになってしまった。

ある意味で依存している状態と言っていい。司にとっては邪険に扱う政府や会社の人間の方が悪なのだ。善悪の区別が付いていない。

ある時、司がつぶやいた。

「俺は政府に睨まれていてさ。親父の会社にも、そして家にも居所がなくなっているんだ」

「司さんほどの人が泊まるところがない? 本当に政府は腐っていますね。大丈夫です。狭いところで申し訳ないですが、うちの拠点を使ってくださいよ!」

彼らはそう言い、活動拠点のアパートの一角を司に提供した。行くところがない人間が集まる場所で共同生活ではあったが、行くあてのない司に拒む理由はなかった。

こうして司は――

表向き“行方不明”となったのだった。

その後、司は団体内部ですぐに頭角を現した。

理由は簡単だ。

・レベル5のハンター

・御影グループ社長の息子という肩書き

この2つの“バックボーン”は、表部隊で活動するには十分すぎる名札だった。時には横の繋がりの怪しい投資セミナー、マルチ商法セミナーなどにもアドバイザーとして参加した。

そういったセミナーに参加する人間は肩書にめっぽう弱い。司ほどの人間が勧める案件ならば間違いないとばかりに申し込みが増えた。

そうして司は利用価値が高いと判断され、まわりの人間は更に彼を持ち上げ、祭り上げた。そして幹部やそれに近い人間は司を操ろうとした。

もちろん裏のトップに近い人間は怪しんだ。

司のようなそれなりに名のある人間が「反政府ハンター解放同盟」に参加するのは不自然として調べを進めた。

その結果として単純に会社からもクランからも無能扱い、邪魔者扱いされていたことを確認。かなり都合が良い人間として利用することを決めた。

行方不明として探されていることも確認したので露出は最低限の方針とした。最悪、見つかっても切り捨てればいいだけだが、おいしい駒だ。使えるだけ使おうという判断のもとに司をちやほやさせた。

司自身はそれに全く気付かず「俺はやっぱり凄い。英雄だ」とご機嫌だった。

司がその裏の実態の危険性を知らなかったのは仕方がないことだ。怪しげな宗教やスピリチュアルに嵌まっていく人間と同じで少しづつ依存させる手口は巧妙。

しかしそれは――裏組織の巨大な闇が、彼を静かに飲み込んでいく始まりであった。

今ならまだ間に合ったかもしれない。しかし、司は本心でそこが自分の本当の居場所だと思い込んでいた。

心の隙間を埋めてくれる存在に依存していった。