軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第186話「定期報告での違和感」

#第186話「定期報告での違和感」

今日は朝倉さんへの定期報告の日だ。俺とひより、ルナ、ラム、リンの五人(3人+2体)は、いつものようにハンター協会ビルのエントランスをくぐった。

するといつもの声が聞こえてきた。

「今日はリンも来ているのね。レベルアップ、おめでとう」

エリナさんが軽く片手を上げ、リンへ視線を向ける。

「ありがとうございますです」

「もう少しで私と同じレベルね。リンも頑張ってね」

「はい。もちろんです。レンさん、ひよりさん、ルナさん、ラムと一緒に頑張りますです」

リンは少しだけ背筋を伸ばして答えた。良い報告になごやかな空気が広がる。月に一度のこの日、きっとこれからも報告のたびに使役モンスターの顔ぶれが1人ずつ増えていくのだろう――そんな未来が自然と想像できた。

軽くエリナさんと挨拶と会話を交わした後、そのまま全員でエレベーターに乗って高層階の朝倉さんのオフィスに向かった。

オフィスのドアを開けるといつものように朝倉さん、そして研究課主任の透子さんが同席していた。

もっとも、透子さんは今や我が家の“準居候”だ。ラムやリンと同部屋、ほぼ一緒に住んでいるようなものなのでこちらの細かい事情まで把握している。

次のロアのレベルアップの時期なども今や俺よりも詳しいぐらいだ。透子さんには特に報告いらずと言っていい。

「その女性がリン君、だね。ラム君に続いて二人目の“人化”。しかもダンジョン内のパワーもスピードも保持……本当に、常識外れだ」

朝倉さんは眉根を寄せつつ、感嘆の息を漏らす。

「はい。しかも、先日はラムとリンで模擬戦をさせたら――とんでもないことになりました。本当に2人共にとんでもなく強いです。剣の動きが見えないぐらいでした」

俺が内庭での一戦をかいつまんで話すと、朝倉さんは「なるほど」と頷き会話を続けた。

「それは凄いな。パワー、スピード、そして剣技もか。トータルで見てほぼ完璧だな。ラム君とリン君、2人共に強いんだな」

「はい。ルナでも全くかなわないぐらいですから」

「そんなにか。それは心強い」

「はい。私が稽古を付けてもらっているぐらいです。スピードもパワーも桁違い。さすがに技は私の方が上でしょうが、スピードとパワーでその優位点も完全に打ち消されて全くかなわない状況です」とルナが続けた。

「ほう、ルナ君にそこまで言わせるか。とんでもないな」

「そんなことないです。ダンジョンの中ではルナさんは圧倒的です。私たちは全く勝てないですです」とリン。

「いや、ダンジョンの外ではラムとリンはやっぱり規格外だよ。本当に凄いことだ」と俺は補足した。

その後は運用面の話に移った。

「次はロアのレベルアップが近いです。その後はルフ、クーも順調に続けそうです。月1のペースで1人ずつレベルアップの予定です。なのであと2か月ぐらいで使役モンスター全員がレベルアップするでしょう。今のところ大きな問題はありません」

「他には?」

「以上です。基本的に全てが順調ですね。ここのところ特に問題はありません」

「そうか、それならば良かった。今後も頑張って欲しい」

そこまで話したところで、ふと違和感に気づく。朝倉さんの声音がどこか重い。リンを前にした驚きはあったが喜色は薄い。いつもとちょっと違う。なんだか疲れているようにも見える。大丈夫だろうか?

そのとき、エリナさんが横からさくっと切り込んだ。

「朝倉さん。レンたちにも“あの情報”、伝えたほうがいいわ」

「……エリナ君」

「彼らはもう貴重な戦力よ。早めに知って備えてもらうべきよ」

短い沈黙ののち、朝倉さんが観念したように頷く。

「そうだな、知っておいてもらった方がいいだろうな」

ルナが一歩、身を乗り出した。

「横須賀ダンジョンの件、ですね?」

「そうだ。さすがルナ君だ。すでに気が付いていたか?」

「いえ、何となくですが、さすがに違和感があったので」

「まあ、あの状態では気付く人間は気付くか……」

朝倉さんの低く、短い返答。胸の奥がざわつく。

テレビで繰り返された“イレギュラーな事故”――正直、俺は特に関心を持っていなかった。「イレギュラーなら今後は大丈夫だろう」とぐらいに高をくくっていた。

ダンジョンのモンスターが日本で初めて外に出てしまった大事故ではあるが、それ単発で今後も起きなければいいだけの話。

しかしながら朝倉さん、そしてエリナさんを見る限りはかなり深刻な状況のようだ。俺の読みがかなり甘かったのだろうか。俺は朝倉さんに聞いてみた。

「ということはあれはイレギュラーな事故ではないということですか?」

「ああ、そういうことだ。今後も日本中で起こりうる事故だ。しかしこのことが知れ渡ったら日本中がパニックになる可能性がある。だからこれから君たちに話すことは全て秘密にして欲しい」

「……分かりました。とんでもない状況になっているのですね」

朝倉さんが机の上の端末を回し非公開の記録映像と数値ログを開いた瞬間、空気の温度が下がるのをはっきり感じた。

「事態は……想定より、深刻だ」

朝倉さんの声は淡々としているのに、言葉は重く沈む。

俺は思わず、背後のひよりと視線を合わせた。リンとラムも、表情を引き締めている。

これからどのような話が出てくるのか?少し身構えて朝倉さんの話に聞き入った。