軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第157話「逆袈裟斬りの稽古」

#第157話「逆袈裟斬りの稽古」

俺の仲間がレベル4となり、4階層での討伐が始まった。

基本的には全員での討伐だ。人数が多いこともあって危険は少ない。だから今はまだ様子を見ながらの調整段階という感じだ。新しくレベル4になった4人(1人と3体)はまだ慣れてないだろうからね。

いずれ慣れてきたら2組、もしくは3組に分かれて動こう。そうすれば討伐効率はぐんと上がるはずだ。

3階層での集中レベルアップ期間を終えたことで、ルナの道場にも久し振りに戻ってきた。今後は1週間に2~3日は半日間、道場で稽古をするということで話がまとまった。以前は毎日稽古をしていたがそれがおよそ半分に減る形だ。

やはりおれはまだ基礎が足りない。その基礎をしっかりと習得する必要がある。毎日でも通いたいところだがそれだとダンジョンに入る時間が減りレベルアップが遅くなる。

なので稽古の時間は短くなるがそれだけに集中してやっていきたい。それはひよりも同様らしく「私も地力を付けたい」ということではりきっている。

そんな中、ルナが「今日は逆袈裟斬りを教える」と言ってきた。

次を教えてくれるということで、一応はこれまでに習った袈裟斬りや連続袈裟斬りも合格点らしい。ただし、まだ威力にムラがある点と、連続動作がぎこちない点を指摘された。ルナはやっぱり厳しいな。

でも、確かに言われてみれば威力がのらなかったり動きが滑らかでない時があるのだ。雑魚敵相手ならまだいいが、強敵相手なら反撃を受けかねない。いや雑魚相手でも一撃で仕留めることができないと長期戦になってしまうかもしれない。やはり安定した出力は必要だ。

俺はうまくいっていないと指摘をうけた時や自分でおかしいと感じた時は体をゆっくり動かして、どこが悪いのかを確かめるように繰り返している。

不器用でも正しい形を意識して数で覚えるしかない。これまでそうしてきたし、今後もそうするだけだ。

そして、新たに習う「逆袈裟斬り」。

名前からしてかっこいい。「逆袈裟斬り!」と叫びたくなる。しかしルナにジト目で見られたのでそこは自重した。

ルナによれば、いつもやっている袈裟斬りが右上から左下に斬り下ろす技なのに対し(相手の左肩から斜め下に斬りつける)、逆袈裟斬りはその逆で下から上へと斬り上げる技だという。

なるほど、確かに“逆”だ。

ルナが問いかけてきた。

「レン、ひより、この技のメリットとデメリットは分かるか?」

俺は少し考えて、「上下から攻撃できるのが強み。ただし下からの攻撃は難しいと思う。それがデメリットかな?」と答えた。

ひよりは「上背のある敵に有効そう。でも重力に反する動きなので力を乗せにくそう」と言った。

――やっぱり鋭い。ひよりの観察眼はすごい。

ルナはうなずいて、俺たち二人の答えをまとめた。

「ほぼ正解だ。やっぱりお前たちはいいコンビだな」

ひよりが少し赤くなって、俺も思わず視線をそらした。

ルナによると、逆袈裟斬りは袈裟斬りよりかなり難易度が高い。

下からの斬り上げはどうしても体がついてこず、手打ちになりやすい。だから、腰をしっかり入れ体全体を使う意識が必要だという。

体全体で振る――それは、ルナが以前から言っていたことだ。そして俺はそれをずっと実践している。今思えば、この技に繋げるための基礎でもあったのだろう。いきなり逆袈裟斬りの練習を始めたら絶対にうまくいくとは思えない。

やはりルナの稽古は理に適っていると感じる。習得できていないものがあればとくにかく繰り返して覚える。そしてしっかりと覚えたら次に移る。そのやり方が俺に合っていると感じる。

さらに、逆袈裟斬りの利点は攻撃の多様化とも教えてもらった。これは俺の指摘に近い話だ。斬り方が増えれば相手の予測を崩しやすい。上下どちらからも攻撃が来るとなれば、どちらの攻撃が来るのかと迷うからだ。特に人間相手では有効だという。

ただし、読まれた場合は逆に危険だとも言われた。逆袈裟斬りの始動時、剣を下におろした時は瞬間的にはまさしく無防備だ。そんな状況で振り下ろしの攻撃を受ければ致命傷になりかねない。

他にも応用編を早くも教えてもらった、逆袈裟斬りの途中で横へ剣を流し、足元を狙う派生技もあるそうだ。足元が弱い敵には有効とのこと。

直線的に攻めたら強い敵でも足元を狙うと意外とあっさりと倒せるケースもあるらしい。確かに直線的に攻めても難しい敵は足を斬りつけることで相手の動きを悪くさせるのも1つの方法だろう。そう考えると逆袈裟斬りを覚えることでかなり戦い方に幅ができる。

「ただし今は足元への攻撃は考えるな。まずはしっかりと逆袈裟斬りを覚えてからだ」

ルナの言葉に俺はうなずいた。

逆袈裟斬りの素振りを始めると、これが思った以上に難しい。つい腕に力が入り手打ちになる。力が乗っていないと自分でも分かる。

ルナが「腰を入れろ。腰を支点に全身で振れ」と声をかけてくる。

もう一度見本を見せてもらうと、ルナの逆袈裟斬りは動きが美しい。剣の軌跡に合わせて風が舞っているかのようだ。そこにはいないはずの敵が倒れるイメージが浮かぶ。

――ああ、俺も早くこうなりたい。逆袈裟斬りも早く習得したい!

俺は再び構えた。何度も何度も繰り返す。まだ形にはならないが、少しずつ体が覚えていくはずだ。

新しい技を覚えるのは大変だが、それ以上に楽しい。

そしてそれを早く実戦で試したい。ラムやリン、ロア、ルフ、クーが新しい技に驚く顔を思い浮かべながら、俺は剣を振り続けた。