作品タイトル不明
50.
みさおとの和解を終えた奉太郎は、喫茶あるくまへと帰ってきた。
玄関先には、父・聡太が立っていて、二人の帰りを待っていた。
「親父、なにやってんの?」
みさおが首をかしげると、聡太は微笑む。
「おまえたちのこと待ってたに決まってるだろ?」
「うげえー、過保護~」
「なんとでも言え」
聡太は苦笑すると、みさおをぎゅっと抱きしめる。
「ぎゃー! 止めてよ! 奉太郎が見てるじゃん! きもいから!」
「はははっ、良いじゃあないかっ」
強く抱きしめられていても、しかし、みさおはまったく嫌がってる様子はなかった。
口だけの嫌々だったのだろう。
久しぶりに見る、仲の良い親子のふれあいに、奉太郎はほっこりとする。
……そして、少しばかりの、さみしさを覚える。
その瞬間、聡太はみさおを離し、今度は奉太郎を抱きしめてきた。
「奉太郎も、おれにとっては家族だぞっ」
「聡太さん……」
力強い抱擁だ。
でも、全然痛くはなかった。
大きな樹に寄りかかってるような、そんな安心感を覚える。
「……すみませんでした」
塩尻家を、過去を、遠ざけていたことを、聡太に謝った。
聡太は何が、と聞き返さなかった。
「許す! はいもう終わりだよ」
ぱっ、と聡太が奉太郎を介抱する。
「おっと、お父さんは配信の時間だ」
「配信……まだやってたんですね」
実は、聡太は配信業を、副業としてやっているのだ。
「もー、いい年したオジサンなんだから、配信なんてやめなよー。需要ないっつーの」
聡太は副業のことを家族にまったく隠してない。
(みさおが嫌がったので、家族外には言ってないが)
「悪いなみさお。おれにとっちゃ、リスナーは第二の家族なんだ。捨て置くことはできないんだぜ!」
「ったく……まあ、儲かってるからいいけどさー」
奉太郎は詳しく知らないが、どうやら聡太の副業は、とんでもなく盛況らしい。
聡太の父から、喫茶店を引き継ぎ、メインはそっちをやってるはずなのだが……。
収入的には、配信業のほうが大きいらしい。
「今日は泊ってきな、奉太郎くん」
「とうとつー」
みさおが苦笑する。
奉太郎は、しかし、拒む理由はなかった。
「泊ってきます」
「そーしな。か弱い女を夜道歩かせんなよー?」
「か弱い? 誰が?」
「アタシだっつーのー!」
こうしてまた、奉太郎とみさおは笑い合えている。
結構奇跡的なことが起きてる。
そのきっかけをくれた 人物(ギャル) は、この場に居ない。
でも、奉太郎は聖華に、心から感謝するのだった。