作品タイトル不明
第854話 免許更新に行く
私は今、稲荷さんの運転する車で移動している。免許更新のために、最寄りの警察署に行くためだ。
それにしても、稲荷さんの こちら(日本) での家が、キャンプ場ではなく 街中(まちなか) にあるとは思わなかった。
それも稲荷神社の社務所というのだから、ベタだな、と思う(遠い目)。
こちら(日本) への転移用の部屋は、稲荷さん一家のプライベート空間にあるらしく、結局、ひいこらしながら階段を上がった。
そこにあるピンク色のドアを稲荷さんが開けると、社務所の中の一室に繋がっていて、そこで出迎えてくれたのは、やはり稲荷さんの眷属。すぐに家の外へと案内してもらえたのだ。
ちなみに、 あちら(異世界) の家のドアからは、いくつかの場所に繋がっているらしい。青い猫のロボットのドアを真似てみました、と自慢げに言われて唖然としてしまった。
さすが神様である。
ちなみに、このドアを使えるのは稲荷さんと大地くんのみ。大地くんはキャンプ場の管理小屋からしか出入り出来ないらしい。真似てはみたとはいえ、誰でもが簡単に使えるというわけではないようだ。
そこは神様としても力の違いだと、稲荷さんは自慢していた。
「平日なんで、日曜日に比べれば空いていると思うんですけどね」
「そうだといいんですけど」
「車社会の田舎ですからねぇ。まぁ、正月明けもあって少しは混んでるかもしれませんね」
苦笑いをする稲荷さん。
後部座席には大地くんがスマホをいじりながら乗っている。
「大地くんもスマホ使うんだ」
「まぁ、付き合いもあるんで」
やはり休み中に友達からメッセージが来ていたのか、難しい顔をしながら返事を書いているようだ。
私も念のため、スマホを取り出すと、前の会社の同期からメッセージが届いていたので、返事を返しているうちに、警察署についたらしい。
「大地を高校の寮まで送ってきます。またお迎えにきますので、ここで待っててください」
「え、でもすぐに終わるかも」
「一応、ご連絡はしますから」
ニコリと笑って言われれば、こちらはお世話になる側なので、素直に言うことを聞くしかない。
免許の交付を待ちながら、私はスマホをチェックしている。
稲荷さんが言った通り、確かに参加者は多かった。それでも、適性検査や写真撮影はすぐに済んで、今は免許を渡されるのを待っている。
前の免許の写真と、今回撮った写真を比べて、十歳ぐらい若返って見えることに驚いた。当時から仕事は忙しかったから、その疲れもあるのかもしれないけど、それ以上に若く見える。これぞ、異世界クオリティだろうか。
――あ、稲荷さんからだ。
稲荷さんから『用事を済ませたので、これから向かいます』のメッセージに『わかりました』と返事を返す。
「望月さ~ん」
「あ、は~い」
私はスマホをしまうと、免許を受け取りにカウンターへと向かった。