作品タイトル不明
第703話 五月特製お札を作ろう(6)
東屋のテーブルでは、子供たちが真剣な顔で作業をしている。
皆、ノワールとマリンと同じような、プラ板を作ろうとしているのだ。
黒の油性ペン以外にも、クレヨンや色鉛筆、色付きの油性ペンも用意していたので、思い思いのペンを手に、絵を描いている。失敗してもいいように、何枚もプラ板を用意したのは言うまでもない。
「できた!」
最初に声をあげたのはマル。
「みて! みて!」
透明なプラ板に描かれているのは、大きな緑の葉っぱが一枚。思った以上に上手に描けていることに、びっくり。
「これは何の葉っぱ?」
「ユグドラシル!」
「上手ねぇ。じゃあ、トースターに入れてみようか」
「うん!」
私とマルはログハウスの中に入って、トースターにプラ板をいれて、さっそく焼き始める。
「うわー!」
マルの驚く声が響くと、何が起きたのか、とテオとキャサリン、サリーが中に入ってきた。
「すごい、すごい。いきてるみたい」
「うわ、気持ち悪い」
「あ、たいらになった」
「ふぉ~!」
――その気持ち、わかる!
子供たちの感嘆の声に、思わず笑いそうになる。
「はい、そろそろ出すよ」
プラ板が溶ける前に取り出し、素早くクッキングシートに包んで、本に挟む。
「少し待ってね……テオたちは出来たの?」
「あ」
「もうちょっと」
「すぐ描き終わるわ」
そう言って外へと戻っていく。
ちなみに、私の作っていたプラ板は、挑戦3回目にして、透明なプラ板に書いた物が、なんとか満足いく形状になってくれた(文字は裏側。金具との接着面)。しかし透明なので、当然文字が見えるわけで、これをバレッタの金具につけても、可愛くもなんともない。
一応、飾りにと、プラスチックの花や丸や星形などのパーツや、様々なリボンを買ってきてあるので、接着剤で貼り付けようと思っている。
「サツキ様! できましたわ!」
「おれも!」
「わ、わたしもできました!」
キャサリンが玄関のドアから顔を覗かせている。その背後でテオとサリーも声をあげる。
順番にプラ板を焼いて、出来上がった物を渡してあげると、とっても嬉しそう。
キャサリンは、ピンクと黄色の大きな花柄で、サリーは青や水色の水玉、テオは……ノワール同様、黒の不思議模様。強いて言えば、なんかの虫……だろうか。
「これ、エイデンさま!」
自慢げに見せるテオに、虫って言わなくてよかった、と思った。
東屋で出来上がったプラ板を見せ合いっこしている子供たちをよそに、私は家の中でバレッタの金具に合わせて曲げたプラ板に合わせるパーツを選んでいる。
――真ん中に大きめな花のパーツがいいかな。
ピンク色のプラスチック製の花のパーツに、小さな緑の葉っぱの形のパーツを接着剤でつけていく。葉っぱは濃い色のパーツと薄い色のパーツにする。
――これだけだと、まだ空きスペースがあるから……
小さな花のパーツと、せっかくなので小さな魔石も入れていく。
私のセンスで作っているので、キャサリンが気に入ってくれるか心配なので、いくつか違うデザインの物を、キャサリンと相談しながら作るのもいいかもしれない。
* * * * *
キャサリンを守る精霊たちは、興味津々で五月の手元にあるバレッタを見つめている。
『キラキラねぇ』
『ピカピカだろ?』
『いや、ギラギラじゃない?』
精霊たちには、バレッタは光り輝いて見えるらしい。
『これは、そとにでたらどうなるのか、たのしみねぇ』
『わたしたちのしごとがなくなっちゃうわ』
『らくができるならいいじゃーん』
楽しげにキャサリンの周りを飛んでいる精霊たちがいる一方、サリーの周りにいる小さな水の精霊たちは、ログハウスのほうを恐ろし気に見ている。
『オモイガツヨスギ』
『ノロッテイルアイテノホウガ、カワイソウナコトニナリソウダネ』
『ノロウホウガワルイケドナ』
……その場にいる精霊たちが、うんうんと頷いていたのは、言うまでもない。