作品タイトル不明
第179話 古龍とノワールがやらかす
獣人の子供たちは、すっかり古龍に餌付けされてしまったようだ。
古龍が結界ギリギリの所までくると、どこからともなく彼の元へと飛んでいく。まさに、飛んでいく、という言葉ピッタリに、猛スピードで彼の元へと行くのだ。
彼の上手なところは、餌が食べ物だけではない、ということだ。
「よし、次」
「うっす!」
気合のはいったテオの声とともに、パシパシパシッと何かがぶつかる音がすると思えば、まるで空手の組手のようなことをしている。
「もっと肩の力を抜け。次っ」
「はいっ」
テオに代わって、ガズゥが古龍の前に出る。
「……ここは空手道場か」
彼らが楽しそうなので、いいけれど。
『古龍様っ! 俺もっ! 俺もっ!』
「ノワールか、お前は少し待て」
『ううう、はいっ』
古龍が来てからは、ノワールも頻繁に立ち枯れの拠点の周辺にやってくるようになった。まだ若干魔力に不安があるのか、ホワイトウルフたちはノワールが来るのを察すると、急に周辺からいなくなる。
今も上空を飛んでやってきて、獣人の子供たちもびびっている。彼らもノワールの魔力を感知できるらしい。
さすがに、ちびっ子ドラゴンは、獣人のような戦い方はしないだろう。となると、ここじゃなく、古龍もドラゴンの姿に戻って、どこかに連れていくのかもしれない。ドラゴンにはドラゴンの戦い方ってのがあるんだろうしね。
一方で女の子組は、さすがに獣人の子供たちと同じようなことはできないので、私のお手伝いをしてくれる。彼女たちの毎日の日課になりつつあるのは、草木への水やりと、洗濯のお手伝いだ。
獣人の子供たちの訓練の様子を見たあと、私は女の子たちがまとめておいてくれた洗濯物を受け取り、ログハウスへと戻る。さすがに、立ち枯れの拠点の水場だけで洗濯するには、子供たちの服の量が多いので、うちの洗濯機はフル稼働状態だ。
洗濯機が動いている間、私と女の子たちは、果樹園でブルーベリーと桑の実を収穫する。毎回のつまみ食いは、ご褒美みたいなものだ。
洗濯が終わった頃にログハウスに戻る。カゴに一山になった洗濯物を、拠点のそばに作った物干しスペースに、3人で干しまくる。晴天のもと、大量の洗濯物がたなびく様子は、なかなか気持ちいいもんだ。思わず、腰に手をあて、満足していると。
ドッカーンッ
「キャーッ!」
「え、何事!?」
何かが爆発するような音が聞こえたかと思ったら、けっこう強い風と埃が飛んできた。ここは結界に守られているので、よほどの事がない限り、強風が入り込むことはない。雨も外は豪雨でも、ポツポツ程度にしかならないのだ。
私は慌てて敷地を飛び出した。
「ガズゥ! テオ! マル! 大丈夫っ!?」
結界のところまでは視界は問題ないのに、その先は土埃が舞っていて何も見えない。
「ガズゥ! テオ! マル!」
「けほけほ、は、はーい」
「だいじょーぶ」
「ゲホゲホ」
埃の中から子供たちの声。
「何があったの!?」
「え、えーと」
「こりゅうさまとノワールが」
土埃が落ち着き、埃塗れになったガズウたちの姿がようやく見えてきた。と同時に、上空へと目を向けると、大きなドラゴンに小さいドラゴンが……じゃれている?
「まさか、ここで?」
「いや、あの」
ガズゥが何か言いたげだったけれど、私はニッコリと笑って、拠点の方を指さす。
「さっさと風呂にはいってらっしゃい」
子供たちはプルプル震えながら、猛ダッシュで戻っていった。
私は腕を組み、上空を睨みつける。
何があったかはわからないけど。こんな埃があがるようなことを、あの2匹がやらかしたっていうのは、私でもわかる。
地上には、獣人の子供たちがいるというのにっ!
私は、ずーっと息をすいこむと、思い切り怒鳴った。
「古龍! ノワール! 下りてこいっ!」