作品タイトル不明
第945話 サクランボの収穫と、魔道具の馬車
朝の一仕事を終えて、ログハウスの前の桜の木を見上げると、大ぶりなサクランボが生っている。
うちの山の桜並木や村のドワーフの家の前の桜並木でも、サクランボが生り始めていて、皆がそれぞれ収穫している。
さすがに全部、私が貰っても消化しきれないから、村の皆で食べてもらうほうが助かる。
「今年も、たくさん生ってるねぇ」
「ねぇねぇ、食べてもいい?」
「はいはい」
ちびっ子姿のノワールとマリンが、するすると桜の木にのぼり、好き放題に食べまくっている。
「メェェェ!」
「はいはい、セバスもね」
種ごと食べそうだったので一応種を出したのを口に入れてやる。
「メェェェ! メェェェ!」
「え、何?」
「種ごとくれってさ」
「え、ノワール、ほんとにそんなこと言ってるの?」
「言ってる、言ってる」
「だ、大丈夫なの?」
心配して聞いてるのに、セバスはフンスフンスと鼻息荒く、早くくれと催促してくる。
――もう、知らないぞ。
とりあえず、枝? 軸? の部分だけは取って、まとめて口にいれてやると、サクランボらしからぬ、ボォリボォリという音をたてて食べるセバス。
――こ、こえぇぇぇ。
サクランボを食べているセバスから離れて、他のサクランボを収穫していると。
『さつき~』
『さつき~、もどってきた~』
風の精霊たちがサントスさんたちがケイドンの街の手前の村を出たという知らせを持ってきた。どうも、エルフのセッティさんについて行ってた子が一人、先に戻ってきたらしい。
ケイドンから村までは、うちからの出迎えがないと、歩くしかない。さすがに、それは普通の人族には厳しい(前に、ガズゥたちがキャサリンを見送りに行ったけど、それは獣人だからだし、それだって往復でほぼ一日がかりだったのだ)。
一応、事前に迎えの相談はドゴールさんからされていたので、連絡が来たら魔道具の馬車を貸すことになっていたのだ。
ゴーレムの馬と馬車をタブレットの『収納』にしまい、スーパーカブでいざ村へ。
「ああ、よかった。これから知らせに行かないと、と思ってたところでした」
ドゴールさんたちのところにもギャジー翁経由でセッティさんから連絡が来ていたらしく、私が村に来たら、ホッとした顔をした。
「すみません。お待たせしました」
「いえ、全然。俺たちも先程、聞いたくらいなので、早いくらいです……って、ええぇぇ」
そう言いながら、私が取り出した馬車を見たら顔を引きつらせる。
「これ、ゴーレムなんで、休憩無しで走れますんで」
「い、いや、しかし」
「あ、ギャジー翁、ドゴールさんに使い方、教えてもらってもいいですか?」
「ええ、お任せを」
ニコニコしながら、ドゴールさんに簡単な説明をしてくれている。
不安そうな顔のドゴールさんだけれど、ザックスくんも一緒に行くようだし、たぶん大丈夫だろう。
『まかせて。わたしたちもいっしょにいくから』
『おう、さっさとむかえにいってくるぜ』
『びゅーんてな』
『びゅーんてな!』
精霊たちの言葉に、少しだけ不安になった私である。