軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3.大天使ステラちゃん、はじめてのお友達ができる

本屋さんには虎の本の続きは出ていなかった。

ママが夜寝る前に読んでくれる虎の本の虎さんはとても勇ましく、仲間のうさぎさんのために怖いことにも立ち向かう勇気があってカッコいいのだ。

楽譜を見ていたら、それなら楽器を扱っている店のほうが品揃えがいいよと店主のおじさんから教えてもらった。

「ありがとう! またご本探しに来てもいい?」

「もちろんですよ、ジャレット商店さんにはいつもお世話になっていますからね。それに可愛いお嬢様に見てもらえるなんて嬉しいよ」

店主のおじさんはニコニコしてくれる。

ジャレット商店はパパがやっているお店の名前だ。

パパのお店のことで街の人に喜んでもらえると、褒められたみたいで私も嬉しい!

「ありがとう、おじさん! また来るね!」

店主のおじさんにお礼を言って、手を振ってお店を出ると、チャーリーが「楽器屋へ行かれますか?」と聞いてきた。

「うん。楽器屋さんはチャーリーわかる?」

「はい。こちらです」

「チャーリーはすごいねえ! ありがとう!」

チャーリーはとんでもないです、と言って笑い、道を教えてくれる。

チャーリーは道案内する時も、道順を説明しながら一緒に歩いてくれるので、私もそこに向かってるんだって感じがしてとても楽しい。

前にお勉強の先生と教科書を買いに街へ来たときは、案内してくれる先生に付いていくのに一生懸命になってしまって、気付いたら目的地に着いていたので、私はその後からはチャーリーの道案内が私は好きだなあって思うようになったの。

「きゃっ」

その時、路地で女の子の悲鳴が聞こえた気がした。

そちらを振り向いた私に、チャーリーもそちらを向いて立ち止まると、その路地から男の人が出てきて道を早足で歩いていく。

その男の人のすぐ後を私より少しだけお兄さんの男の子が飛び出してきて、「ぶつかったんだから謝れ!」と叫んだ。

「うるせぇ! ガキが邪魔な」

男の人が言い返そうとしたらしい大きな声にびっくりしてそちらを向くと、もう男の人はいなくて、私はそこから声がしたのになと首を傾げてしまう。

チャーリーが「お嬢様の耳汚しを」と奥歯を噛みながら何か小声で言っていたがよく分からなかった。

私は気を取り直して男の子のほうを向くと、男の子は男の人がいたあたりを見ながら呆気にとられたような顔をして、まだそこにいた。

私はその子に興味がわいたから、チャーリーの手を引いて彼のほうへ近づいていった。

+ + +

「誰かケガをしたの?」

突然近づいてきて話しかけた私に男の子はびっくりしたみたいだった。

私の姿を確認すると、隣のチャーリーを見て怯えるようにする。

「いや、別に、妹がぶつかられただけで……」

男の子は路地へ後ずさりながらだけど、答えてくれた。

この子はとてもボロボロで汚れていて、服も薄くなって破れている。

私の見た目はお金持ちなことが分かるだろうから、距離を置かれてしまうかもしれない。

でも、私はこの子と仲良くなりたかった。

だって、今、妹がって言っていたし、悲鳴も女の子の悲鳴だった。

私と背も変わらないこの男の子が、大きな男の人に、妹のためにあんなに怒ったんだって思ったら、私はどうしても彼と友達になりたかった。

だってまるで虎の本に出てくる虎さんみたいなんだもん!

うさぎさんのために怖いものにも立ち向かう、そんな私の大好きな虎さんと彼が似ているように思えたんだもん!

私は勇気を出して男の子へ手を出した。

「私とお友達になろうよ!」

「な!?」

男の子もチャーリーもびっくりしていたけど、男の子が妹がいるから遊びにはいけないと言ったのを聞いて、妹さんとも友達になりたいと言った。

「ポーギー、俺の妹は、病気だから……」

男の子が眉を寄せて俯き、唇を噛むのを見て、私もたまらなくつらくなってしまって、「おうちにお医者の先生がいるよ! 大丈夫! きっと治るよ!」と泣きそうになりながら言った。

「チャーリー、だめかな?」

「お嬢様のお友達のためです、だめなことなんてありませんよ」

チャーリーは握っている私の手をぎゅっと強く握ると、大丈夫と笑顔を向けてくれたの。

そうしていると、親切なおじさんが声をかけてくれて、男の子、ダニーというらしい、が案内しておじさんが路地から妹さんを連れてきてくれた。

そうしたら、丁度いいタイミングでおうちの若い執事さんが馬車でお迎えに来てくれて、私は親切なおじさんにたくさんお礼を言って、チャーリーとダニーとポーギーと一緒に執事さんの運転でおうちに帰ったの。

+ + +

「風邪がひどくなっていたようですね、数日、薬を飲んでここで安静にしていれば良くなりますよ」

お医者の先生にそう言ってもらえて、私はすごくほっとして笑顔になった。

大喜びしたいけど、すぐそばでポーギーが寝ているから、大きな声は出しちゃだめなのだ。

お医者の先生は我が家の専属のお医者さんで、一度私に薬や体調管理の勉強を教えに来てくれた先生だったんだけど、この家で働きたいと言ってくれて我が家の使用人さんの一員になってくれた人だ。

初めて会ったときにパパが、勉強のためにとても腕の立つお医者さんを呼び寄せたんだって言っていたので、すごいお医者の先生なのだ。

彼が言うのなら数日で良くなるんだって安心できる。

本当に良かったなあ。

安心したら涙が出てきた。

「なんで泣くんだよ」

ダニーがオロオロとして泣いてしまった私をどうしたらいいのかと手を彷徨わせてくれているようだ。

どんどん涙が出てきて、目の前のダニーもにじんで見えなくなっちゃう。

「だって、ポーギーしんどそうだったからぁ、良かったなあって」

「そんな、そんなこと言ったら、言ったらなぁ、俺だってポーギーが死んじゃ、死んじゃう゛んじゃないがど……おお、うおおおんあああ」

ダニーまで泣いてしまった。

「あーん。ダニー、泣いちゃやだあ」

「あああ、おおーん、ああありがとう、スデラあ゛りがとう゛うう」

「あーん。あーん。あーん」

私はダニーを慰めようとダニーの頭をパパがしてくれるみたいに撫でようとして失敗して、ダニーは椅子に座ったまま俯いて泣きながらお礼を言って、私達はしばらくそうして泣いてから、「寝ているポーギーさんが起きますからね」とチャーリーに促されて、私はお部屋へ戻ると、お風呂に入った。

部屋着に着替えた私は、少し休んで落ち着いたあと、客間へ向かった。

ダニーはお風呂へ入って客間で待ってくれているらしい。

チャーリーが呼んできてくれたママも一緒だ。

「ステラ、お友達ができたんですって?」

「そうなのママ! 虎さんに似ているのよ! ダニーはポーギーのために大人の男の人へ立ち向かったのよ!」

「あら、それは素敵ね。私にも紹介してくれるかしら」

「ママも会ってほしい!」

ママにダニーのことを教えてあげながら、私達は客間へ着いた。

中には着替えてすっきりとしたダニーがソワソワ、キョロキョロ、としながらソファーに座っていた。

すぐ横にはヘイデンもいる。

「ステラ! ……っ様!」

「ダニーったら、ステラでいいよぅ」

先ほどあんなに泣いてしまったので少し恥ずかしかったが、ダニーが“様”なんて言うからおかしくて、クスクス笑ってしまう。

「お、おお。ステラ」

「あなたがダニーさん? ステラとお友達になってくれたと聞きました。私はこの子の母です。よろしくお願いします」

「ダ、ダニーです。すみません、お邪魔して。ポーギーのことや、風呂もこんな服まで……。あの、ジャレット家の人だなんて知らなくて俺、こんなにしていただいて申し訳なくて……」

「いいのよ、ダニーさんもポーギーさんもこの子のお友達ですもの。ポーギーさんが良くなるまで、ステラと一緒にいてやってくださいな」

「そんなにお世話になるわけには……」

「かまいませんよ、主人からも許可が出ていることです」

緊張している様子のダニーに、ママはとっても優しく答えている。

「ダニー、大丈夫だよ、ママもパパもとっても優しいの! ポーギーが良くなるまで私がおうちを案内してあげる!」

「ステラ、まだ数日はあるのだから、それは明日からにしてはどう? 今日はもうご飯を食べる時間になるわよ」

「え! もうそんな時間なの! ママありがとう、そうするねぇ」

早速とダニーの手を引いておうちの案内をしようと思った私だったけど、色々している間にもうおひさまも暮れてお空が赤くなってきていた。

明日にしよう、と思い直して、私はダニーに声をかける。

「ご飯一緒に食べようね。そのあとはこの部屋で寝る? お医者の先生のところで寝る?」

「……っ! もしできるなら、ポーギーのそばがいい!」

「わかったぁ、私もママやパパが体調が悪いときはお医者の先生にお願いして一緒に寝るのよぅ。同じお布団はだめって言われるけど、仕切りの向こうならきっと許してくれるよぅ」

じゃあご飯の前にお医者の先生にお願いに行こうねぇ、とママにお礼を言ってから私はダニーとチャーリーと一緒にお医者の先生のところへ戻った。

お医者の先生はさすがだ。

ちゃんとポーギーのベッドの横に、仕切りとお布団、さらにその横に仕切りと私の専用のベッドとお布団を用意してくれていたの。

「ベッドの数は足りませんでしたが」

そう言うお医者の先生に「ありがとう! さすがお医者の先生だねぇ。お願いする前に分かっちゃうんだねぇ」とお礼を言った。

もちろん私もポーギーが心配なので、一緒に寝るのだ。

ダニーがびっくりしてベッドと私を何度も交互に見ていた。

ご飯は、料理人さん達がダニー用にお粥を作ってくれていた。

海鮮のダシを使った、美味しそうな匂いのするお粥だったので、私も主食はお粥にしてもらった。

ダニーは私と同じご飯をいきなり食べたらお腹が痛くなっちゃうけど、ここにいる間には同じおかずも食べられるようになるかもって教えてもらった。

「うまい……。うまい……」

ダニーは海鮮のお粥がとっても気に入ってくれたみたいで、なんだか鼻をすすりながら、じっとお粥を見るようにしながら大事そうにゆっくり食べて、ちゃんと完食してくれた。

食べている途中で自慢したくなって、私はダニーに言った。

「ダニーとっても美味しいでしょう? 我が家の料理人さんのご飯は世界一美味しいのよぅ」

私は大いばりだ。

本当に我が家の料理人さんの作るご飯は世界で一番美味しいので、いつも家の人と、たまに来るパパのお客様しか食べないのがとってももったいないと思っていたんだ。

「うん……うまい……生きてきて一番……絶対世界一だ……ありがとうステラ……」

やはり食べるのに夢中なようで、ダニーは鼻をすすりながら、ゆっくりゆっくり食べ進めてくれたの。

そばで給仕をしてくれていたメイドさんと、控えてくれていた料理人さん達に「ほら、ダニーも世界一だって」と笑いかけると、みんなすごく笑顔で「ありがたいお言葉です。ありがとうございますお嬢様」と言ってくれた。

その夜、私は仕切りの向こうからすぅすぅと聞こえるポーギーの寝息を聞きながら、コソコソ声でダニーに話しかけてみたりして、ダニーも「何だよ」と少し楽しそうに返事をしてくれていたが、気付いたら私達はすっかり寝てしまっていた。